英雄に憧れた僕は英雄を目指す!

お花のおっさん

序章 

第1話 プロローグ

 

 それは、優れた智力や才能を持ち、非凡なことを成し遂げた者。または、成し遂げる者。

 何人、何十人と英雄は誕生したが、その誰しもが、一般人には真似出来ない実績を残してきた。

 ある者は、誰も勝てなかった化け物を討ち取り、また、ある者はその知力を持って戦に勝ってきた。


 そのような話を聞いた子供たちは憧れないわけが無い。憧れた子供たちは剣を持ち化け物に挑む。

 だが、上手くいくはずもなく化け物に殺される。当たり前だ。英雄とは、非凡なことを成し遂げたものだけが名乗れる称号みたいなもの。そこいらの、一般人が英雄の真似事などできるはずもなく・・・・・・。


 ここにも1人の英雄がいた。とある神様の家臣団の団長として、数々の功績を上げた。その団長は、自分の主神を都市の神様ランキングで1番にした。神様ランキングで1番になった神は大神と呼ばれるようになり、その神の力が増大する。

 大神と呼ばれた神は自分が司るものを、理解できるようになり、その司るものの力を家臣団に与えることが出来る。


 その英雄は、旅をしていた。今は、森の中を歩いている途中だ。野生の動物を狩り今日の晩飯にでもしようかとその英雄が考えていたところ───



『グバァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』



「うわぁああああああああぁぁぁ!?」



 遠くから野生の動物らしき声と、年端もいかない少女の叫び声が聞こえてきた。

 その両者の声を聞いた英雄は、体をそちらの方向へと動かしていた。その英雄は、考える前に行動する。奇しくも、戦い尽くしの日々で身につけた癖が今も彼の中で生き続けている証拠だった。




 ○




「やっと着いた」



 僕は、神様の家臣団に入れてもらうためにこの都市まで来た。

 幼い頃に野生の熊から助けてもらったことがある。その人は、僕と熊の間にいきなり現れ、剣の一振で熊を倒した。一振だと思っているが、正直僕には剣を振る速度が速すぎて何回剣を振ったか、分からなかった。

 だけど、そんなことは気にならなかった。ただただカッコよかったのだ、その背中は。

 そのときから僕は、に憧れた。



「誰かを助ける英雄に・・・」



「プフッ」



 僕が小さく独り言をつぶやくと、何処からともなく僕のことを、小馬鹿にした笑い声が聞こえてきた。

 僕は、そんな状況に戸惑ってしまう。そんな僕を見てか、都市にはいる通行所で待っていた人たちが言ってくる。



「お前には、英雄は無理だ。さっさと家に帰りな」



「そうだそうだ。お前みたいなガキが英雄になれたら、ここにいるみんな英雄だ」



「ギャハハハ! テメェみたいなガキは、とっとと家に帰りママのおっぱいでも吸ってろ!」



「「「ギャハハハハハハハ!」」」



「僕は、僕は、英雄に・・・」



「何でちゅかー。声が小さくて聞こえませーん」



「「「ギャハハハハハハハ!!」」」



「僕は、僕は英雄になりたい!!」



「だから無理だっていって「うるさいのじゃ!!」ッッッ」



「寄って集って1人の子供をバカにするとは何事じゃ! お主らは、不愉快じゃ! 早くここから失せるのじゃ!!」



「「「・・・・・・・・・」」」



 僕が、3人の男の人にバカにされていると、横から幼女? が割り込んできた。幼い見た目は、男たちに有無を言わせない様子を見て、吹き飛んでしまった。


 改めてみると、黒髪黒目で背は高くなく、むしろ一般的には低いとも言えるその背中。僕のために言ってくれた言葉が心に響く。

 そんな言葉が、から言われた言葉と重なったような気がした。


 魔物を倒し終え血を流しながらも、夕日に背を向けて、怯えて何もできなかった僕を見ながら言ってくれた言葉。



『誰かのために剣を持ったその時から、ソラ、お前はもう英雄だ』



 自然と僕の頬を涙が零れる。何も、何もできなかった僕なんかのために、命を懸けて守ってくれたその背中を思い出して。


 歩いて都市に入っていった3人の男の人たちが見えなくなると、その子は、止めどなく泣いていた僕のことを見ると―――



「お主はどんな英雄になりたいんじゃ?」



「ぼ、ぼくは・・・」



 涙が止まらない僕のことを静かに待ってくれる。

 再びお父さんの背中を思い出し、僕の背中にあるお父さんからもらった剣を鞘ごと引き抜いた。



「ふぅー」



 一息吐く。覚悟はあの村から出るときにしてきた。

 あとは、言うだけだ。目の前の僕のことを今も待ってくれているこの人に。



「誰かのために剣を持てる、そんな英雄になります! この剣に誓って!!」



 鞘に収まっている剣を少し抜き、また鞘に収める。


 チン!


 と綺麗な剣が鞘に収まった音があたりに響く。

 そんな少年の宣言と剣をしまう音を聞いて、思わずといった様子で目の前の人が笑いだす。



「くっくっくっ。かかかかか! そんな女子のような姿でよく言ったのじゃ。ならばなって見せよ英雄に! 儂はお主を気に入ったのじゃ。なれば! 儂がお主の助けになってやるのじゃ。存分にお主がやりたいことをするよい、儂の初めての家臣団てして!!」



 夕日を背に向け僕に話しかけてくる姿は、あの日のお父さんとそっくりだった。ただ、お父さんと違って、その首から下げている太陽の形をしたネックレスがキラリと光ったように感じた。

 まるで、僕のことを応援しているかのように・・・。


 そして、今日から始まったのだ、僕の英雄譚の1ページ目は。

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