中1前編 姉VS誘惑 ※簡単に人につられてはいけません。

 今年の誕生日は何を渡すか、もう決めていた。

 それは、本と、絵である。


 本?


 お金もかかる。

 それに、この前「買うなら妹と行って、買いたい」そう言ってなかったっけ?


 そういう皆さんの気持ちもわかります。

 だって、それは本当のことなのですから。


 でも、今回だけは、この2つでいきたいんです。


 だって、さすがにばれていると思うんですよ。

 警戒もされていると思うので、裏をかきます。


『絶対に本は買わないだろう』という裏を。


 どうして本を買うことになったのか、お金もかかりますが、それには理由がありました。

 それは、2週間ほど前にさかのぼる――。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「今から買い物行かない?」


 リビングで優雅な読書の時間を過ごしていた私に、そんな声が届きました。

 親です。


 ——やだ。


 本当ならソッコーで断りたかった。

 なぜか。


 今はすっごくいい場面なんだ!今、読まないと気が済まない!


 私の中では、めっちゃいい場面=邪魔されたくない。早く読みたい。という方式が成り立っているのですから、とても買い物に行く気にはなれませんでした。


 ですが、はっきりと断ることができなかった当時の私は、黙っていました。

 すると、それを見た親が、「お願い!」と言って、私の顔を覗き込む。


 ――いつもなら、ここで折れるけど……。


 むうっとしながら、それでも黙っていた時でした。




「じゃあさ、なんか本1冊買ってあげるよ?」


「……行く」

「じゃあ早く車のってー」


 そう言っている声に笑いがこもっているように感じるのは、私だけですかね。


 ……ですが、その一言で、私はすぐに荷物を用意し、車に乗ったのです。

 きっと、つられた、と言うやつでしょう。


 ―—でも、本1冊買ってもらえるなんて、サイコーじゃない?


 心の中で、よっし!とガッツポーズをした、私でした。


 ◇◆◇


 そして、夜、寝る前の出来事です。



□□わたし!ちょっと来て」


 □□とは私のことです。


 親に呼ばれ、私だけ?と思いながらも呼び出された洗面所に向かいました。


 ――ん、何も心当たりがない。


 何かやらかしたのだろうか。

 いや、やっていないはずだ。


 頭に⁇を浮かべながら、話しだすのを待つ。


「本、何にするの?」

「あ、ああ!えっとね、□□□□の、最新巻!」

「□□□□?えーちょっと待って」


 親が、スマホ片手にその本を検索する。

 そしてちょっとして画面を私に見せてくれた。


「これ?」

「そうそう!!うわあああっ……!表紙神……!!」

「これ買えばいいんだね?」

「うん!マジでヤバすぎ……!あ、これさ、妹には内緒でね……??絶対だよ……っ」


 私が、そう念を押すと、わかったよと言ってくれたので、安心して私は妹のところへ戻った。



このときは知らなかった。






――まさか、親からばらされるとも、知らずに。





前半、終了!

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