第85話 閑話 メリーさん・結
(あれ…メリーさんって自分のことメリー《さん》って呼んでたっけ…まぁ書いちまったもんは仕方がないか)
後、第84話で3-Sと書いた部分を2-Sに書きかえました。普通に間違ってました。すいません。結は2-Sクラスです。by作者
□ □ □ □ □
~氷鎧結side~
ある日の放課後のこと。
「結~待って」
赤史に呼び止められた。
ここ座って、と人の少なくなった教室で誘導されて席へと着く。
時間は正直言ってあまり無いのだが、最近はそんな空気を感じ取ってかクラスメイトや親衛隊の皆は声を掛けないでくれていた。赤史もしかりだ。そんな中で声を掛けるということは、何かしら用がある場合ぐらいだろう。
まぁ、最近ちゃんと話せていなかったのでそれでかもしれないが。
「じゃーじゃん!」
「…『結メリー計画』…?」
「そやで!」
ノリノリに声を弾ませて楽しそうに赤史は語った。
どうやら最近満足に話せない事が不満らしく、軽い嫌がらせというか悪戯…? を仕掛けようということらしい。そしてあわよくばこれで生徒会に戻ってくれたらいいね!…と。
赤史はまだ続けるように紙をぺらりと捲った。
まずノイズを混じらせながら唐突にホラー演出を出す。
次にどんどん近づいていくように数十秒ごとに電話をして現在位置を知らせる。
そして最後にドアバンしてビビらせるらしい。
なんか物足りないな…と話を聞いて思った。
そう、ホラーが足りない。
「…会長は、林道はたしかいつも窓際に座ってた。たぶん今日も一緒だよ。びっくりさせるなら、窓の外からは?」
流石に家の中にいつの間にか入り込むなんて芸当は出来ないので、外からできる最大限をやるのである。
不法侵入?許可を取れば問題ない。寮長には既に許可取り済みだ。(取ったの赤史だけど)
それを提案すると、赤史にビビられた。
何故か納得いかない。
「…まぁ不満が無いならええんやけど…じゃ、早速行こうやないか!!」
「突然大きい声出さないで」
「すまん…」
しょぼんとした赤史の背を押して屋上へと向かう…否。向かおうとしたがこの場からでも良いのでは?となり2-Sクラスからスタートする事になった。今回は実際にその場から連絡する方向で決まったのだ。
しかし流石に数十秒で教室から下駄箱に降りるような足は持っていないので今回要となる「足」を用意した。
オレの付き人兼親衛隊隊長でお馴染みの葬である。
低い対価で協力してくれる存在と言ったら彼しか思いつかなかった。大国先輩を呼び出せばロクな要求をしてこないだろうし、かといって一般の生徒に協力して貰うのも悪い気がする。
赤史が同士達の力を借りるかと提案してきたが、大国先輩同様ロクな要求をしてこなさそうなので却下した。
我ながら妥当だと思う。
だとすると、オレの優しい親衛隊達かクラスメイトの誰かとなる。この中で一番足が早いのはダントツで葬だと思い呼んだ次第だ。
「ぐえっ」「うぇ…」
早速一回目の連絡を終えるなり赤史と揃って俵持ちのように肩で担がれ下駄箱まで運ばれた。
オレが電話する度に赤史がカンペを出しオレはそれを読むのだが、言い慣れない自分を指す「私」という一人称のところで突っかかったりしながらも最後の関門。
あなたの後ろに居る、を実行するときがきた。
正直少し胸がドキドキしている。
因みにメールを送ったのは、単に聞く気がないなら読ませるまでという考えからである。
決して電話を掛け続けるのが面倒だった訳ではない。
そしてベランダから入るのだが、そこは彼らが居るのが2階で助かった。ギリギリ落ちても最悪生きてるだろ、ということで寮長からも許可を貰った。結構大雑把な人だよな…。
体力が無いことで定評のあるオレだが、運動神経は良いので猿のように自力で壁をよじ登ることが出来る。
ということで行ってきます。と、二人に手を振り壁を登った。
夕陽が落ちてきて逆光でバレかねないのでそこだけ気をつけて登る。
下では葬がもしもオレが落ちた場合に受け止めて貰う役割である。赤史? アイツは応援係…かな? いつの間に用意したのか黄色いポンポン持って振ってるし。周りの視線は気にならないようである。まぁ気になってたら腐男子公言して暴れて無いか…。
無事忍びのような足捌きで登りきり、影が映らない位置に隠れる。配置に着いたことを二人に手の合図で伝え、電話を掛けた。
プルルルル‥プルルルル‥
林道が出たのを見計らって渡されたメモを復唱した。
『わたし、メリーさん』
窓に近づき逆光を利用して人影を映し出しださせ、自身の手のひらを窓につけた。
鍵は掛かって…無いな。よし。
脇に挟んでおいた生徒会のもろもろの書類の束を片手で胸に抱えた。
『今、あなたの後ろに居るの』
シン‥
……。
あれ。悲鳴が聞こえてこないな。
居ないのか…?
あそこまでしておいて??
とりあえず数秒待ってみると、ドタバタと中から物音がした。
どうやら居ないわけでは無いらしい。良かった。
腕に抱えた書類の束を見て覚悟を決めた。
ガラガラと決して窓が壊れないように開く。
今更だが不用心だな…今回は助かったけど。
そしてカーテンを捲った。
その先には――
一塊になってこちらを伺う彼らが居た。
なんだか顔色が悪い気がする。
ついでにガタガタ震えているようにも見えた。
これは…成功、したのか…?
若干やりすぎた気がしないでもないないが、まぁ…大丈夫だろう。多分。そんなことを思いながら靴を脱ぎ室内へと入る。
そして人生ゲームと思わしきゲームボードが広がっているテーブルを見てオレは書類片手に彼らへズンズンと近づいた。
「これ…やって。いいな?」
葬の口調を意識して喋ってみたがどうだろう。会長たち5人は首がもげそうなほどに縦に頷き了解を示した。素直に痛そう。先ほどのテーブルの状態を見て少しばかりカチンと来て強く言ってしまったので言ってから少し後悔する。
多分下に居る二人に言ったら「よく言った!」とでも言いそうだと簡単に想像がつくが。
しかしそんな5人の様子を見て今回はここまでにしておいてやろう…という気持ちになった。何様なんだと我ながら思う。
オレはそんな5人に取りあえず頷き窓に戻って靴を履いた。最後に窓を閉めようとしたとき、これまで一回も向けていなかった国真の方へと向けた。
「戸締まり…には、気を、つけて、ね…?」
ここで人見知りを発動するとは思わなかった。
そういえばあまり接したことのない生徒が左に居たな…と思う。
既に最後の言葉を残し、窓を閉めて二階から飛び降りたので思い出す形となった。
そして次いで思い出す。
そういえば赤史に渡された『ドッキリ大成功』と書かれたプラカードを出すことを忘れていたな。
まぁ今更出て行った手前戻るのも格好悪いので戻る気はさらさらない。
――そしてその選択が部屋に残された彼らの恐怖を煽ることになるとは思ってもみなかった結であった。
その後二人の前に降り立った結は3人でハイタッチをして解散した。
書類を彼らに渡したことで肩の荷が下りた心地のオレは提案してくれた赤史と担いで手伝ってくれた葬に礼を言って寮部屋へと帰った。そして直ぐに寝た。
おやすみ…。
□ □ □
~登場人物~
慣れない仕事を一ヶ月ほどほぼ一人で頑張ってた人。普通に疲れと苛々が溜まっていた。恐怖を煽るようなことをしているのも苛々が溜まっていたせい。倍返しだ!…を実行。たまにぶっ飛んだことをする。この後不定期に【結メリー】をして無事彼らにトラウマを植え付けることになる。
結に提案した第一人者。最近かまってもらえなかったので不満に思っていた。結がほぼ一人で生徒会の仕事をしていた情報はどこからか仕入れていた無駄に情報収集能力の高い人。疲れを微塵も顔に出さない結を心配していた。やったれ!…と提案したが、普通に怖そうな提案を返され衝撃だった。
今回の力担当の協力者。なんか変なことしてんなと思いながら協力していた。報酬は結の作ったかき氷。←ザクザクよりふわふわ派。ちょうどいつも
今回の標的or被害者1。電話を取った一人目であり大トリも取った。普通に後ろを振り向いたら人影が見えてビビっていた。悲鳴を出さなかったのはあまりに怖かったからか、それともプライド故か、本人のみぞ知る。
今回の標的or被害者2。電話を取った二人目。普段から書類だけは書いていた。その他に関してはやっていない。人影に気づいたときにビックリしてうっかり携帯を落とす。画面にひびが入った。
今回の標的or被害者3。電話を取ろうとしたらメールだった後輩。意外とホラーは平気だった。弟の発言に思わずツッコミを入れる。窓から入ってきた結が珍しく怒っているようだったのでしゅんとする。
今回の標的or被害者4。電話がかかってきて怖がりすぎた後輩。ホラー耐性が無かったのか電話に出る勇気が湧かなかった。無事やり過ごせてホッと一息…からのホラー過剰摂取で気絶寸前に陥った。窓から入ってきた姿を確認して知ってる人だったのでシレッとした顔に戻る。
今回の標的or被害者5。電話に出る度胸はあった。自分の番になっていきなり通信状態がよくなったのでビックリ。心の中ではガクブルしていた。しかし左騎子の怯え具合に一周回って平静の状態に戻った。
今回の標的?。被害者ではない。普通に怯えたフリをして普通に面白がっていた(心の中で)。不意に結が言葉を投げかけてきてドキリとした。人生ゲームでは一人圧勝していた。
今回の標的外or被害者6。いきなり始まったメリーさんに困惑した。兎に角怯える(フリをしていた)国真を守ろうとした。
今回の標的外or被害者7。完全に蚊帳の外状態の一年後輩。展開についていけずに怖がることも反応することも無く終わった。結の去り際視線を受けたように感じてドキリとした。
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