第72話 体育祭 26
たった二人だけが戦ったとは思えないほどに荒れた地を均しながら思う。
オレ、働き過ぎじゃないか…と。
今日これまでで玉入れでは小動物達に代わり戦い(?)。借り物競争ではあまり走ってないのでいいとして、障害物競争で何故か無駄に重量のある枷を着け、親衛隊達の要望に応えモデルの真似事をしたり…果ては事前に無かった二人の決闘の結界を作り頭を怪我するという集中力も体力も妖力も減った1日だ。
因みに個人的に一番辛かったのは足つぼマットの上でジャンプしたことだ。二度としない。
今夜は熟睡出来そうだ…。(気絶同然の睡眠)
さて体育祭最後の種目(?)も終わり、今は荒れた地を整えている所である。このままでは夜のキャンプファイヤーをすることが難しいので皆して片していた。
片付けが終われば結果発表だ。
当然緊張するが。もう疲れてどうでもよくなってきているところもある。
無理もない。今日のオレは働き過ぎた。
林道と委員長の二人は、仮にも怪我をしているのが全校生徒の目で確認されているので、念のため保健室へと行っている。
林道について行こうとしたらしい転校生一行は保険医の手によって追い払われていたのをオレは見た。
転校生一行はサボろうとしたのだろうか。
あの保険医は患者を心配する生徒はそう簡単に追い払うといった行動はしなかったと思うのだが。
まぁ煩すぎるのが原因かもしれないな。
前もそんな事があったようだし。
声が大きすぎるのも難儀なものだな。
そうしてテントやベンチが片付けられ校庭が元通りになった頃、司会でおなじみの生徒の声が聞こえた。
『皆様片付けお疲れ様です。遂に集計結果が出ました。クラスごとに整列して下さい』
体育祭中の熱はどこかへ行ったのか司会の生徒はやけにキリッとした顔で進行を進めた。
あれが俗に言う賢者タイム…?
『んん…? 何か誤解されたような…いえ何でもないです。では結果発表ー!』
ゴクリ…生徒達が息をのむ。
司会は手に持った結果が書かれていると思わしき紙を開いた。
『今回の勝者は――紅組。親衛隊チームです!!』
そういえば親衛隊チームとか嵐の目チームとか序盤に言ってたな…あんま出番無かったけど。
ワァッと沸き立つ紅組の生徒達は喜びのあまりハイタッチをしたりハグをして相手の顔を見るなり頬を染めたり…となにやらラブコメが始まりそうな予感を感知した。
おかしい。オレにこんな感知能力は無かったはず…恐らく赤史の能力が移ったのだろう。
そんな事を思いながらもオレは葬と片手でハイタッチをする。
…この際シャッター音は聞かなかったことにしよう。まったく親衛隊と腐男子達は油断の隙もないな。
にしてもこの服(障害物競争の)はいつまで着ていればいいのだろう。勝てたのは嬉しさよりもホッと一安心という気持ちなのだが。今気になるのは服装である。
あの着ぐるみの彼は敵側だったのかしょぼん‥としているが、着ぐるみなのでただ可愛いだけである。
微笑ましい。疲れた心が潤う。
もうこの服のままでもいいかもしれない。
着ぐるみは知らないところで結の好感度を上げていた。
『これにて体育祭は終了…そして夕方5時頃から
ぷんすこと怒る司会に彼の友達なのだろう生徒達が笑った。
にしても浴衣か…妖怪の姿になればオレは自動的に浴衣になるのでそれでもいいかもしれない。
まぁその前にこの枷は外したいが。
オレはキャンプファイヤー終了時に火消し係という役割があるので自然と夏祭りに参加する方針だ。特に誰と回るという約束は無いので一人でのんびり回ろうかな。
オレとしては親衛隊達にも慣れたので、一緒に回る事も出来るのだが本人たちに辞退されている。
なんか彼氏やら友人やらが居るんだと。
…まぁオレも友達居るし? なんなら家族みたいな奴(葬)も居るし? いや、彼氏は流石に居ないけども。
何売ってるかな…?
この祭りで変わっているところはアレだな。物々交換で金銭の代わりになるところだ。
もちろん金銭で支払ってもいいのだが。
この祭りの醍醐味としては物々交換をするところが大きい。
それにオレたちは学生だからね。大金なんて持っていない。
まぁ何故だか姉さんは大金を持っているのだが。
オレはよく知らない。綺麗な笑顔でかわされたのだ。
それ以降、何も訊ねることはなかった。
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