第70話 体育祭 24 決闘
今回去年の時のように瓦礫などは辺りに置かれていない。
なので比較的マシな状態だ。
薄く張った透明のガラスのような氷の向こう側。そこでは妖怪の姿へと変化した二人が殴り合いをしていた。
意外と砂が舞うことも無く二人はひたすらに殴り合いをしているので、結界いらなくね?とは思うが万が一に備えることが大事なので、異議はない。
うーん。二人とも凄い形相。
まさに鬼。
観客の生徒たちは案外怖がることもなく。完全にエンターテイメントとして楽しんでいる様子だった。
というか二人とも妖怪の血が濃いから傷が治るのも早い。これだと何時終わるのかも分からないな…。
流石に夕方の祭りまでには終わるよな…?
そんな一抹の不安を抱えながら突風に乗っかってきた砂利が氷の壁にぶつかるのを見守る。
妖力をだいぶ込めて作ったのでそう易々と割れることはない。まぁ流石に会長と委員長がぶつかったり殴ってきたりしたら壊れるだろうけど。
向こう側が見えるように薄く作ってあるし。
白組の方は副会長が頑張っているようだ。
転校生君が近くに居るようなので良いところを見せようとがんばっているのかもしれない。
ファイトー。
そういえば、紅組が負けた場合親衛隊達が文句を言えなくなる…というような内容だと葬が言っていたが。その場合オレも何も言えなくなるのだろうか。
話の内容的には「もう転校生達には手出ししません」というようなもので、揚げ足を取るなら親衛隊ではないオレや風紀委員達は好きに言えるままということになる。
その場合。オレにこれ以上損も得も何も無い。
だってすでに損をしているから。
はぁ…早いとこ会長たちが戻ってきたら早そうなんだけど…。いやでもそれはそれでその後も揉めそうなんだよなぁ。
いや…勝てば幾らかマシになるのだろうと信じてオレは戦ってきたんだ。ここで正気に戻ってどうする。
というか世代交代?すれば万事解決じゃないか。
今生徒たちの不満を溜めてしまっているのはオレたちの代なんだから代替わりしてしまえば新しい学園の王が纏めればいい。
妙案か…?
しかし何故か『とあるランキング』上位人は転校生を気に入っているようだし…ダメだ。二の舞にしかならなそう。むしろ悪化しそう。
もう誰か何とかしてくれ…。
そんな悩みに苛まれていると元凶の一つの会長…いやもう会長って呼ぶの止めようかな。仕事してないし。副会長は書類だけだけどしてはいるからギリギリ呼べるとして。
ということで会長改め林道は、風紀委員長と拳で殴り合いをしている。
林道は手にうちわぐらいに大きい葉を持ち、些か殴りずらそうで、時にその葉を仰ぎ突風を起こしている。手に持っている葉は天狗が持つイメージのある
子供の頃に山にあった植物から採ったものらしい。というのを林道から聞いたことがある。
一方風紀委員長は何も持っていない。
拳一つだ。
鬼の血が濃い風紀委員長に拮抗している林道も凄いなと見直した。しかしそれを見ているオレは微塵も楽しくなかった。
二人の血が飛び散る。
しかし傷は瞬く間に塞がった。
グロいのはあまり好きではないのだ。そう思うのは当然である。
黒い翼を持つ林道は飛び回り風紀委員長である咲江木を錯乱する。しかしそのタイミングを見計らっていたのか風紀委員長が林道の翼をガシリと掴み、もげそうな勢いで放り投げた。
オレの眉間に自然としわが寄る。
痛そうというのもあったが、
風紀委員長が投げた。
即ちこの氷の結界は容易く壊れるということだ。
オレは直ぐに雪を
もう回避する気力すらなかったので林道と仲良く地面に派手な音を立てて倒れ込んだ。
”ガシャンッ!バキィィッ”
…はぁ…空が青いな…。
あ、鳥が飛んでる。何故だか目があった気がした。
お分かりの通り、現実逃避である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます