第64話 体育祭 19 綱引き
午後の部が始まった。
あの後駆け足で紅組テントに向かいなんとか間に合った。
紅組テントは下駄箱から遠いから危なかったな…。
『さぁさぁ始まりますよ午後の部第一種目! ”綱引き”です! 選手の人は配置について下さい! 役員のタスキを身に着けている生徒に従って行動して下さいね~』
司会の言葉にぞろぞろと生徒たちが紅白それぞれのテントから出てくる。
どうやらこの競技では”能力あり”らしい。
縄が千切れるんじゃないか? とは思ったがそうなったらなったでオレのせいじゃないので完全に他人事である。
能力ありということは、すなわち妨害行動をするのがありということ。オレの場合、相手方の方に吹雪でも氷柱でも雪玉でもなんでも降らせる事が出来るので向いているかもしれないが、力は特別強い訳でも無いので立候補も推薦もなかった。
悲しいことに。←全く悲しいと思っていない。むしろよかったとすら思っている。
オレは午前に大国先輩から拝借したサングラスを掛けて観戦することにした。
サングラスはいつの間にか親衛隊員が持っており、うやうやしく渡され付けた。ずっとジッと見詰められて気が散ったのはしょうがないと思う。
それにやけにオレの回り人口密度高いな…。
え。オレの側が涼しい?
オレの冷房機能は服内だけのはずなんだが…。
そう思いながら校庭を眺めるうちに準備は整い綱引きは始まった。
――さてここからはモブ達がお送りする。
「引けえええええぇぇぇ!!!!」
「クッ!? あの転校生、なかなかやるな!?」
「ダリィ…」
「急所だ、急所を狙えー!!」
「「「イエッサー!!」
”ドガガガアアアッッン!!”
「何で腐男子の俺まで…いや障害物競争という大目玉が残っているではないか!うおぉぉぉぉぉ!!はよ終われえぇぇ!?」
「いや何の音ーー!?」
「もう止めたい…切実に…」
「みんなみんなゆるさない…絶対に負けない…勝って転校生ぶちのめす…ブツブツ」
「ヒィッ!?」
「ヤベーの居るよ…止めたい」
「お前はやる気無さすぎぃ!」
「ファイオー!」
「ファイヤーーー!」
「俺特製砂爆弾を食らえーー!!」
”ヒュッ…ドーーンッ!!”
「絶対砂の落ちた音じゃ無いってーー!!」
「ざまぁみやがれ転校生ー!!ふははは!!」
「馬鹿取り巻きに目ぇ付けられてもしらねぇぞ!?」
「…ねぇ一向に縄動いてないってどういう事…?」
「うわマジじゃん」
――と此方が紅組で。
もう一方が――。
「この縄どうなってんの…?」
「知らねー!てか引っ張れー!」
「最悪だ! 負けたら絞められる!! 絶対に嫌だーー!!!」
「ぐああああああ!?」
「田中ああぁぁぁぁっっ!!」
「田中が倒れたぞー!!砂爆弾がモロに当たったぞーー!!」
「南無」
「馬鹿野郎手を離すんじゃねぇ!」
「こっちに遠距離攻撃できる奴居ねぇのか!?」
「すまん俺傘しか出せんわ」
「じゃーそれ投げればいいんじゃねーの!」
「何言っとるんや!? 我が子を投げるなんてそんな殺生なことっ…できんわ!」
「妖力あれば生み出せるだろがー?!」
「そうやったわ。食らえ! えーっと…”傘ドリル砲”ーー!!」
「ダサッ!?」
「うわーん(棒)」
「笑わせるんじゃねぇ!! 手に力が入らねーだろうが!」
「イタッ。味方に攻撃された!?」
「草」
「草」
「砂の攻撃砲が来たぞー!!」
――と此方が白組。
何だかよく知る声が聞こえてきた気がする。
変わりに転校生が静かで返って不気味だった。
互いに仲間内で息が合っているとは到底言えないが、どちらも倒れることなく拮抗した戦いであった。
仲間内で足を引っ張りあっているのではと疑うが、勝負は勝負、勝敗がつけばそれも関係ない。勝てばそれでいいのだ。
あぁでも負けたらオレ生徒会の皆に文句言えなくなるのか。
それはそれで動きにくいな…と思う。
せっかく風紀と共同で作ったあのノート(達筆に書かれた文句や恨み言)も無駄になってしまうではないか。
だがオレが後出場するのは障害物競争だけ。
どうやら…勝たねばならないようだ。
点数高いようだし。
体力は無いが瞬発力やらなにやらはあると思うので、あまり心配はしていない。
”障害物競争”は”綱引き”の次の種目となる。
さて綱引きの決着は――?
『勝者――白組ぃぃーー!!』
司会が大きな白い旗を白組に建てて宣言する。
あれ…? こんな事やってたっけ。
と思うが、気まぐれか分かりやすいように作ったのかと考える。
負けたのは残念だが、白組には会長を一殴りで吹き飛ばした転校生がいる。…あれ、そういえばオレさっき押さえられてたけどかなり危なかった?
下手したらあの威力の拳を殴られていたのだと思うと冷や汗が背筋を通る。
…今度大国先輩には何かお土産渡そう。
それがいいな。じゃないとバチが当たりそうだ。
”綱引き”が終わり、生徒達が撤収して行く。
”綱引き”の開始の際に誘導していた生徒達が爆弾やら傘やらで荒れた地をならしてゆく。
そしたらあっという間に綺麗な校庭に元通り。
続いて次の種目、障害物競争の準備を慌ただしく進めていく。
どこからかガコンッ‥と何かが開くような音が聞こえ、自然とそちらを見ると体育館からドデカい跳び箱が一つ二つと出てくるのが見えた。
それに思わず口の端をひきつらせる。
え、あれ飛ぶの?
辺りの生徒達もそれを見てざわざわとし始めた。
その跳び箱の高さはオレの背の高さの3,4倍はある。
校舎の2,3階は届いているほどだ。
簡単に言えばとても高い。
オレも流石にあの高さの跳び箱は飛んだことがないので不安が胸を占める。
次回! ”障害物競争”始まる――!!
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