第60話 体育祭 16 借り物競争

 赤史と司会がこそこそしているのを横目にオレはこれまでの激しい戦いで疲労したせいか眠くなっていた。


「ふぁ…」


 欠伸をこっそりすると突然赤史が此方をグリンッ!‥と首を回して振り返ってきたので思わず肩が跳ねた。

 不意打ちはずるいと思う。ビックリして眠気も何処かへ行ってしまった。


 というかよくその動きを見るが、首は大丈夫なのか…?

 その内捻りそうだな…。


 その後コソコソと司会と赤史が話したのち、司会から合格を貰い白組に点が入った。


 結局何だったんだ?

 そんな事を思いながら赤史に礼を言われて席に戻った。


 次は何の種目だったか…そう考えているとちょうど借り物競争の制限時間がきた。コレ最後の方に走ったヤツが不利にならないか?とは思ったものの口には出さず、大人しく水分補給を取っていた。


『しゅーりょー!! 未だにお題を探している方は戻ってきて下さい! 戻らなかったら風紀委員が探しに行きますので』


 時間切れだ。


 会長と風紀委員長は既にどこかへ行ったのか姿が見えず、ゴールもしていないようであったが、何が出たのだろう。見物客側としては何が出たのか気になるところだ。

 そして副会長はというと、既にゴールしている。赤史の次にゴールしていた。時間ギリギリだったが。

 

 お題は何だったか聞いていなかったが、チラッと見た限り副会長の隣に生徒が居たので、人物に関するものかもしれない。

 気にはなるがわざわざ聞くほど気になることでは無かったので、この先運が巡ってこない限り知ることは無いだろう。


 ざわざわと生徒たちが雑談して待つ中。約15分程が経過して全員居ることが確認された。


 こんな広い学園の隅にまで行くのにも数十分は必要とするが今回そこまで行っていた生徒は居ないようだ。(或いは最初の方にスタートした組が既に諦めて戻ってきていたか、ゴールしていたか)


 こうして午前の部は終わり昼休憩となった。



~別side~少し時間を巻き戻す~


 三人のおさ達は三者三様に紙のお題を見て動きを止めた。


 それぞれこんなものを引いていた。


生徒会長【男の

風紀委員長【好きぴ♡】

副会長【わんこ系の人(わんこっぽい人)】


 全て人間。


 運営は何を思って書いたのか…謎である。



 生徒会長こと林道は、お題を見て暫く固まっていたが。とにかく心当たりはあったので、仲間の白組へと向かった。


 だがそこからが問題であった。


 【男の】は、まぁ…複数居るにはいた。だが志願する者が揉めてそれどころではなくなったのだ。仮にも生徒会長で、とあるランキング一位でもあるので…。


 修羅場だと白組のモブ腐男子は囁いた。



 風紀委員長の咲江木はというと【好きぴ♡】という言葉の意味が解らず固まっていた。


 ”好き”はまぁ…わかる。

 だが”ぴ”は何だ?? 何を示唆しさしている?


 誰かに聞けばいいものを咲江木は聞けずにいた。

 何故なら文の最後にハートが付いているから、ただ何となく聞けずにいるのだ。後はこんな事も知らないという少しの羞恥心からである。



 副会長こと天辺あまべはというと、【わんこ系の人(わんこっぽい人)】を引いて真っ先に思い浮かんだのが結であった。


 だが、葬に背負われている結を見て…止めた。


  生徒会の仕事を任せきりでいるというのに、今更此方が頼るなどおこがましいと、天辺は思った。


 そんな罪悪感を持っているならば仕事に完全復帰すればいい…ということは天辺自身が一番解っている。だがしようにも大羅たいら(転校生)の側から離れるという考えが浮かばなかったのだ。


 結局天辺は結に頼ることを選ばず自分の足で探し回り、なんとか時間ギリギリでゴールする事ができた。



 そうして長達の戦いは残念な感じで幕を閉じたのだった。

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