第58話 体育祭 14 借り物競争
パァンッ!と再び鳴った空砲を合図に駆け出す6人。
よくよく考えたら全員知り合いだな。まぁ偶然だろうけど。
お題箱まで駆ける6人。
今の所大国先輩が一位を取っている。会長と風紀委員長が次。葬がその次。後の二人は同じぐらいの速さ。
葬は本気を出してはいなさそうだ。
多分何があってもいいように体力温存しているのだろう。前の新入生歓迎会でのことで少し負い目を感じた様だし。
気にしなくてもいいのにね。皆と違ってオレは直ぐに傷は治るのに。
まぁ流石に首切れたから肝は冷えたけども。
オレもそう簡単にやられるワケが無い。
強くなるに越したことはないから何も言わないが、無理をし過ぎない範囲でやってほしいものだ。仮にもアイツを好いている者(舎弟)も居るのだし、心配掛けさせないで欲しいものだ。
この前ケンカのし過ぎで怪我が悪化していたのだ。
取り敢えず姉たち3人に知らせておいた。姉の付き人の二人は葬の姉と妹なので何か言われたのだと思うが聞いてはいない。
そうして大国先輩が一番最初にお題箱に到着し、穴に手を突っ込み紙を一枚取り出す。そしてそれを見るなり大国先輩は白組の方へと駆けていった。
目的のモノは直ぐに見つかりそうである。
次に同着ぐらいの長二人はというと互いに横目で睨み合いながらもお題箱に手を突っ込み紙を取り出す。ほぼ同時に取り出し、読んだ二人は同じように固まった。
どんだけシンクロするんだろう。正直見ていて面白い。
そして二人が同時に読んだ頃に着いていた葬はお題を読み暫く固まったが、直ぐに動き出した。
次に最後の二人。赤史と副会長。
めったに無い組み合わせだ。
二人は恐る恐るお題に手を突っ込み紙を取り出す。
そしてまたもや固まる。
既に動き出しているのは大国先輩に葬。
大きなリードだった。
そんな知り合い達に心の中で緩くがんばれ~と応援してのんびりしていた。
「結!」
先ほど走り出していた葬が此方に駆け寄ってきた。
どうやらオレがお題に当てはまるらしい。
「横抱きか背負うか」
「背負うで」
短い言葉で選択肢を選ぶ。
こんな公衆の面前で姫抱きとか無理である。オレの羞恥心が耐えられ…ないこともないが、ダメージはある。
安全第一である。
ひょいっと同じぐらいの身長であるにも関わらず、軽い動作で持ち上げる葬。やっぱり普段から鍛えていると簡単に持ち上げられるのだろうか? 筋肉があるのはやはり男として憧れる。まぁそれに至るまでのトレーニングで音を上げるのでハナから無理も同然なのだが。
「しゅっぱーつ」
「よしきた」
オレが片手を上げゴーサインを出すと駆け出す葬。
オレが走るよりも確実に早い。
まだ里があった日々の頃。葬はこうして誰かしら背負い自分を鍛えていた。なかなかのストイックさだった。自分を追い込むような性格で、オレとは真逆。オレは自分を甘やかしてしまう方だから顔だちは似ていても全く違う。
まぁ親自体違うのだから当然かもしれないが。
どうやら里の外の人間から見ると、大体似通った顔立ちに見えるらしい。
オレ達里の方からすれば全く違う顔に見えているのだが。
葬の首下ぐらいの部分で手を組み、バランスを崩さないようにしがみつく。
なんだか白組の方がうるさいが無視。
オレは振り落とされないように必死。
やっぱ足早すぎだろ葬…まぁ頼もしいけども。
そうして(葬が)走っていると、走って後から走ってきた大国先輩が横に並んだ。
仲良く並んでゴールしそう…。
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