第56話 体育祭 12
玉入れが終わり、皆元の席に戻るために歩き出す。
オレはというと上着を探しに白組の陣地だった方へと向かっていた。自分で言うのもあれだが、物は大切にする方なので、基本自身の持ち物の存在を忘れることはない。
「あ、氷鎧君!」
その声と共に駆けてきたオレと同じ位の背丈の生徒。ジャージの
「はい、コレ」
そう言って彼が差し出したのはオレが先ほど脱ぎ去った上着のジャージ。
「あり、が、とう…ござぃ、ます」
彼からジャージを受け取り頭を軽く下げる。恐らく先ほど骸骨姿だった
「いいよいいよ。それより怪我してない? 落としちゃってごめんね」
申し訳なさそうに言う彼にオレは首を横に振る。
「オレ…自分、で…落ちた。から…気にしない、で…下さ、い…」
聞きづらいだろうに最後まで耳を傾けていた先輩は怪我していないなら良かったと白組の方に戻っていった。
何故か去り際頭を撫でられたがオレに弟味でも感じたのだろうか?
葬にもたまに頭を撫でられるが同い年でも弟に見える事があるらしい。オレも葬に兄のような感情を抱いているからお互い様なのだが。
少し首を傾げながらもオレも自分の組へと戻った。
そして今オレが居るのは2-Sではなく、親衛隊達の多いクラスのテントだった。何故かこちらに引きずられてきて此処に居るのだ。
紅組は仲間意識が強いのかもしれないな。ほとんどが親衛隊達だし。団結力が違う。
少し顔色が悪い気がしたが、あんな元気に叫んでいるなら気のせいなのだろう。やはり大国先輩の手腕には恐れ入る。
さて玉入れが終わり少しの休憩時間。
10分程の休息が与えられた。
オレは再びベンチに横たわり上着を着て服の中の温度を真冬にする。はぁ…生き返る…。ついでにかき氷も食べよう。シロップも何もないけど。
氷で出来た皿に雪を降らすように氷を降り積もらせ、スプーンも氷で生成する。
そしていざ実食。
……。
氷…だな。当然だけど。
まぁ冷たくてちょうどいいから味が無くても一向に構わないけどね。オレじゃ無かったら直ぐに飽きてしまうかもしれないが。
でもやっぱり自分の妖力で作ると可もなく不可もなくな味になる。
姉が作るととてもこの世のものとは思えないぐらい美味しく感じるのに、この差は一体…。姉は姉でオレの作ったかき氷の方が美味しく感じたと言っていたが…。
人の作ったものの方が味を感じ取りやすいのかな…とオレは思っている。自分の匂いが分からないように、自分で作ったものは味がしないのかもしれない。
まだまだ妖力には謎が多いな。
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