第49話 体育祭 5
わざわざ2-Sクラスまでオレを送ってくれた葬は、教室に着くなり自分のクラスへと戻って行った。
葬とは同学年ではあるが、クラスは違うのだ。
アイツが不良の範囲に居るので…。
オレより傷が治るスピードが遅いとはいえ、一日で打撲傷などは完治するぐらいなので心配する間もない。
何故そんな喧嘩をしている不良がなんで親衛隊長なれたかだって?
そりゃあ揉めなかった訳ではないが、何故かオレに保護欲を感じた人間(?)の集まりのため…誰が一番強く、オレ――氷鎧結――を護ることができるか戦ったそうだ。いつの間に…。
(オレは弱く見えているのか…?)
そして最後に勝ち残ったのが葬だったらしい。
親衛隊って、親衛対象になるよりもぶっちゃけ難しそうだなと正直思った。
めっちゃ殺伐としてるね…。
まぁ葬が勝ったのも納得というか当然というか…身内目というのもあるのかもしれないが、アイツは武道面に強く、実戦経験が豊富なので、強いのも当然と言える。
本人はそれで喧嘩の楽しさに目覚めたらしいのが少し複雑だったが…まぁ楽しそうなので良しとしよう。
流石に姉さんが喧嘩始めるとか言ったら反対するけど、姉さんはオレより強いので一人で止めることは出来ないだろう。
あの人”武”もいけるんだよ。オレと違って……。
別に悔しくなんてないから。
そもそも
……なんだこの胸騒ぎは? 姉さんが不良……もし万が一、億が一にもあったら、オレが全力で止めよう。
結は心に決めた。
妙な胸騒ぎに心を揺らしながら教室に入る。
中には半数以上の人が席に座り雑談に興じているようだった。
どうやら雪女の末裔のオレだけが暑かった訳では無いらしい。
そして自分の席に着こうとしたそのとき、ジジッ‥と放送が入った。
『えー、皆々様お待たせいたしました。新・体育祭の大まかな説明を致しますので校庭にお集まり下さい。
え?クソ暑いのになんで外出て説明聞かなきゃいけないのかって? ………。閣下に言って下さい! でわ』
ブツッ‥と切れた放送に学校はシン‥となる。
大国先輩に何か言われたんだな…と、閣下を知る生徒達は思ったのだった。
そしてその放送が入ってからというもの、生徒達は続々と校庭に集まった。
皆気になっているのだろう。
転校生達に親衛隊。
今や学園の噂の中心に居ると言っても過言ではない。
そんな二大勢力の戦いに参加できる機会など早々ないのだから。
『えー今からチーム分けを行います。無論チームは親衛隊チームと台風の目チーム…言い辛いな…です!』
ボソッと呟く声が思い切りマイクに乗っていた。
『しかしどちらかに人数が偏る場合もあると思います。ですのでどちらでもいい、もしくはさぼる気満々だった生徒たちの皆さんは、その人数合わせで使わせて頂きます』
あらかじめチーム分けをされていたのだが、さぼる&見学組というのもあり、まんまと引っかかった生徒達は”騙された!””道理で条件良すぎだろうと思ったよ!”などなど罠に掛かった生徒たちは不平不満を上げた。
『ふっ俺を差し置いてサボろうとするからですよ!アハハハ!』
壊れたように笑う司会にドン引きする生徒たち。一部演出かと思った者も居たが、司会の目がガチだったためにその考えは消え失せた。
『ふぅー…。えーでは。チーム分けします』
平静に戻った司会は自分の勤めを思い出し、仕事を再開した。
因みにオレはというと、葬に連れられて強制的に親衛隊チームとなった。オレも少しサボリたかったが、あの
一方、赤史はというと…まんまと罠にかかり、悲鳴をあげていたチームだったようだ。
笑う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます