第46話 体育祭 3 宣戦布告

 開会式については省略する事にした。


 何故かって…? 

 阿鼻叫喚だったからだ。あくまでも一部がだが。


 オレ含めて生徒会の面々が開会式をしたと言えば分かるだろうか?

 まぁこれまでの行いが行い…といってもそれについて言及したことはあまり無かったか? これまでの…細かくいえば転校生が来てからの生徒会(オレ除く)の行いは周囲から見て目に余るものであった。


 始まりは食堂。テーブルが粉々になった事件だ。

 あれ以降粉々になったテーブルがどうなったのか少し気になって風紀に訊ねると、食堂の竈で薪として片づけられたらしく、無駄にされなくて良かったと貧乏性な部分のオレはホッとした。


――この事件で周囲にとって一番強烈だったのは結の雪玉豪速球か、転校生の会長ぶん殴りだったのかは彼らのみぞ知ること。


 そんな食堂での出来事から生徒会の面々は徐々にだが生徒会室に顔を見せることは減っていき、今ではもう生徒会室で見ることは無くなった。(実際は一週間で顔を見せなくなった)


 見かけるのは教室か食堂。後は知らない。オレの行動範囲が狭いのもある。


 そして時々出くわす転校生一行にオレは親衛隊達をフルに使ってできるだけ会わないルートをつくってもらったりするなどして起きる問題をハナから起きないように行動する事にした。


 結果。

 出くわす回数は各段に減った。…が、あちら(転校生)に見つかると、新入生歓迎会の時のように追いかけてくるようになった。


 オレは彼に何かしてしまったのだろうか。

 校内鬼ごっこなどしたことなかったので最初の内は少しワクワクしたが、それも回数を重ねるごとに直ぐに飽きた。…決してオレの体力が枯渇して苦しかったからではない。


 まぁ親衛隊がその事に気づいてからは、人の波という人海戦術(?)を使ってその場をしのいでくれているので今のところ余り支障は無い…事はないか。生徒会の仕事増えてたわ。

 ついでに風紀の仕事が膨れ上がっているようだし。


 生徒会は生徒達の意見をまとめたり、学園の催し事をまとめたりとだが、風紀は普段から実働隊のように見回りをして風紀を守っている。


 仕事量的には普通なら風紀の方が多い。この学園の風紀がだからこそというか、ここの生徒が問題起こし過ぎなのだ。

 休みをあげてあげて。


 オレの場合は生徒達の意見が多くなったことに加えて他の役員の書類に勝手に手を着けているだけなので、ある意味自分の意志である。本当に無理だと思えばオレも仕事を投げ出すかもしれないが…。


 風紀もまさか一人の生徒が増えただけでこんなにも仕事が膨れ上がるとは思ってなかっただろうな…。

 別段転校生は会長をぶん殴ったこと以外は大きな問題は起こしていないはずだ。それに関して言えば、会長が口付け? したのが悪いのだと思うし。

 (それにしては様子はおかしかったような気もするが。)


 もしかしたら副会長に叩かれたことによって血迷ったとか…? もう、数ヶ月も前の事とは思えないぐらい鮮烈な記憶が残っている。


 まぁそんな昔に思いを馳せていても意味は無い。考えるならば騒動をどう鎮めるか。…沈めたい気持ちもある(どこにとは言わない)が、彼らは結構いい家の出で、そんなことをすればオレだけでなく姉さん達にまで被害が行きかねない。それは嫌だった。


 お前も会長に豪速球ぶつけただろって?

 あいつはなんだかんだ言って仲間内には甘いからね、だからこそ副会長のハリセンだとかを甘んじて受けているのだ。

 せいぜい風紀に反省文書かされたり尋も…話し合いをするぐらいだ。念のため言っておくがオレが反省文を書いたのはあれが初めてで、別にいつもあんな風に暴力的な訳ではない。

 

 妖怪の末裔で見下されていても、妖怪の末裔の中で地位が高いという者もいれば、人間界の中で妖怪の末裔ということを隠して人間界に馴染み上に登りつめた者も居る。


 ここにはそんな人物らの子息が通っていて、会長や風紀委員長なんかがいい例だ。


 人間の血が混じっていない妖怪からしたら、自分の子でもない限り、妖怪の末裔を妖怪とは認めないだろう。

 妖怪と人間の間のため、誰かがその種族の名前を決めなければ色々揉め事は起こってしまう。たったそれだけのことで多くの血が流れたのだという。


 オレからしたらどうでもいい話だが、自分の血に誇りを持っているものたちからすれば目障りなのかもしれない。


 そのところ、雪女の末裔達は変わっているのだと思う。妖怪雪女に会ったことは無いが、里では雪女を神聖視している風潮があった。人間の話は全く挙がらないのにのかかわらず。


 いや会ったことが無いからこその神聖視か…。

 まあ今は関係無い話か。


”バチーーーンッッ!!!!”


 そう、今は開会式が終わり会長の有り難い(?)御言葉の終わりが見えた頃。 

 乾いた音が校庭に響き渡り会長の姿が残像を残しながら消えた。…と思ったら下に倒れてた。


「…もう、耐えられません。僕達親衛隊あなた達転校生一行で決着をつけましょう! 宣戦布告です!!」


 彼は…よく見かける生徒だった。この前までは。

 確か会長の親衛隊隊長だった筈。

 記憶力が心許なくてすまないが、この情報は確かなはず。


 彼の名は林子りんねきょう。会長と同じく黒羽色の髪の美少年。多分会長の親戚筋だったと記憶している。そのため天狗の末裔だ。


 会長と違って体格は小柄だが力はかなりあったようで、会長は一回でも不意打ちだとしても地に伏した。あれが火事場の馬鹿力か。


 オレもはっきりくっきり見たわけでは無いが、憶測も交えて説明すると、会長が生徒たちに体育祭頑張ろうみたいな言葉を全校生徒にかけ終わるなり朝礼台に選手宣誓として朝礼台に上がった林子りんねが会長に平手打ちをしたのだと思う。


 気づいたら会長はああして残像を残して倒れていた。

 音的にビンタかなとあたりをつける。


 それにしても。

 今も昔(数ヶ月前)も会長は打撃を受ける宿命なのかな…と思った。


 なおその事に結自身は含まれていないようである。

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