第45話 体育祭 2

 因みに出場種目は既に決まっている。


 オレは借り物競争以外であれば基本何でもいいという考えだった。


 去年痛い目を見たという訳では無いが、酷いものであったことに代わりはないので、全力で拒否した。ヘドバン並みに首を横に振って”嫌”を主張し無事逃れることが出来た。正直首取れるかと思った。


 結果。短距離走と、障害物競争、玉入れに出場する事となった。


 玉入れは小学校以来である。どうやら食堂で会長に雪玉をクリーンヒットさせた事件(?)を知っている者が推薦したようだ。


 短距離走はというと、クラス全員が走る競技…短距離走か中距離走か長距離走かで全員選ぶのだ。上に誰か走るの大好きな人物でも居るのだろうか? と思うぐらい走りの競技が多い。


 オレが短距離走を走るというのはクラス全員満場一致で割り振られた結果である。オレが自ら言う前に言われたのでどこか釈然としない気持ちが生まれた。


 知ってるよ…オレに体力が無いことぐらい…。

 運動神経はいいが、体力がとことん無い結である。周囲の判断も無理も無かった。


 障害物競争…? 

 オレも詳しくは知らない。

 気づいたら黒板に名前が書かれていたのだ。


 借り物競争に名前が書かれていればソッと消していただろうが、書かれていなかったので”何故だ”と思いつつも特に何かを言うことは無かった。


 そして約1ヶ月程体育の授業で体育祭練習を行い今に至る。


 部活動リレーなどはあるようだが、委員会リレーなどというものは無い。そんなことをすれば生徒会と風紀に注目が集まりすぎてしまう。これは決して自惚れなんかでは無いだろう。


 なので司会席には前回の新入生歓迎会の閉会のときに司会をしていたという生徒が座っている。隣には閣下…?と書かれた札が机に置いてあり、サングラスを付けた生徒…?が腕を組み膝を組み、とても偉そうに座っている。


 なにか見覚えがあるような…? 気のせいか…?


「ねぇ…赤史」

「なんや?」

「あの司会席に居る二人って…」

「ん? ああ、片方の元気な方はオレの親衛隊員や。つまりはフレンドやな~」

「もう一人の方は…?」

「うーん。見覚えある気がするんやけどなぁ~。うーん…思い出せへん!」

「そっか…ありがとう」

「どういたしまして!」


 ニカッと笑い、赤史はペットボトルの蓋を空けてガブガブと飲む。いつか咽せそうな飲み方である。


「ブフッ!?ゴホッッゴホッ…げほ…」

「大丈夫?」

「あ”~平気平気…」


 思ったそばから噎せている。にしても何かを見てしまったかのような顔をしている。カップルのイチャつきでも見たのだろうか? いやそれなら喜ぶか、コイツなら。


 タオルを赤史に差し出しながら司会席を見る。

 なんだか後ろが騒がしいが無視する。赤史の類友多いなぁ…。


 ジーっと司会席を見ているとサングラスを付けた人物が此方に気づいたのか手をこっちに向かって振った。


 そこで”あ”と気づく。大国先輩か。なんだ先輩か。

 頭を使って損した気分だ(失礼)。


 軽く此方からも手を振り、司会席に座る人物が大国先輩ということを赤史に伝えると。


「あーなるほど。だから閣下とか言ってた訳ね…様になっとんな~」

「それは…うん」


 サングラス姿の大国おおくに。遠目に彼の親衛隊がきゃっきゃしているのが見える。女々しいな。男子校の筈なのだが勘違いで此処は実は共学だったのだろうか。


 彼を見て何か思い出しそうな気がしたが、気がしただけであった。もやもやする…。


 早朝にも関わらず、日の光が眩しい。オレもサングラス持ってくればよかったな…。大きい空き時間が出来たら取ってくるか…。


 にしても後ろからも横からもパシャパシャと無断で撮ってくる輩が居るのが気になって仕方がない。それもクラスメイトと親衛隊という組み合わせなせいで余計に言いづらい。


 他人なら容赦なくカメラを凍らせるのにな…。


 それはそれで問題になるだろうことに気づかない結であった。

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