第36話 羽休め

 会話って難しい(´・ω・`)

 くっ…教科書から語彙力吸収出来たら…


 分かりにくかったらスミマセン by作者


□ □ □ □ □


 自分でもよくわからない言い訳を考えていると、二人は先ほどオレの言ったことは本当なのかと聞いてきた。


「うん。その方が、守りやすいって」

「大穴ぁ」

「苗字に同じ字があるのもそのためか…」


 赤史の言っていることはよくわからなかったのでスルーするが、二人が何故そんなにも不思議そうにしているのかを考えてみる。


 葬は…グレた。その一言だ。オレからすると。

 学園に入ってからというもの、葬は少し変わった。


 姉に恋して

 なんか複雑そうな気持ちになって

 里が襲われ

 逃げて逃げて逃げて…

 

 そして行き着いたここは妖怪の末裔が沢山居て。

 オレ達はやっと休むことが出来た。


 束の間の休息かもしれない…それでも休めることに変わりはなく、やっと一息つくことができたのだ。それだけでもオレはこの学園に感謝している。だから仕事の多い生徒会も頑張れた。


 葬がグレたのは多分、安心したというか、そういう信頼の現れであるのかもしれない。これまでずっと守りに徹してきて心の成長を無理に押さえていたのかもしれない。…そんな全て憶測だ。


 本人に聞かなければ結局のところ分からないが、なんとなく葬の全体像を知った上での憶測。別に幼なじみだからと言って分かるわけでないのだ。絶対ではない。


 結局のところ葬はガラが悪くなった。オレのことを守る姿勢は身に染み着いたものなのか変わることはなかったが、喧嘩っぱやくなっていた。


 だがこれはこれまでに碌に敵に攻撃できなかったからというのもあるのだろう。これはオレも同じ気持ちだ。


 オレ達はこれまで逃げ最優先で生きてきたので恨み辛みが募っているのである。要するに不満が貯まっている。

 それを喧嘩で発散しているのだ。


 たぶんそんなオレのことを到底好かなそうな奴がオレの親衛隊をやっていることだけでも衝撃なのに加えて付き人だからこんな反応なのだろう。


 逆に考えて付き人だから親衛隊をやっていると考えれば何故親衛隊をやっているのかに繋がるわけだ。というか始めからそう説明すればよかったか。


「確か…氷野ひょうのも雪女の末裔だったか…?」

「うん。後は姉さんと…その、付き人二人があっちに居る、よ」

「ということは、5人とも狙われているのか?」

「…うん」


 その証拠にオレたち以外全員捕まったのだから。父さんや母さんたちが今生きているかも定かじゃないし、どんな扱いを受けているのかも分からない。


「特に姉さんが狙われてる」

「理由は?」

「時期長で、能力が一番高いから…だと思う」


 将棋で王を狙うように、一つの集団を攻めるなら真っ先に狙うのは長だ。まぁ見目麗しいのもあるのだろう。オレと違って姉さんは、妖怪の姿の時の髪色が銀髪になるのだ。オレは黒髪になるのだが…。


「それにしても…」


 と、委員長が顎に手を添えて考えるポーズを取った。一々動きが様になっている。一方その頃赤史は静かに目元を冷やしており、もはや空気となっている。


「何故、氷鎧がこの学園に居るとわかったんだ…?」

彼奴アイツは…オレたちがどこに居るか、知らなかったみたいだけど…」


 オレが反応を示してしまったがためにあんなお粗末な演技を披露することになったのだ。しかし此処に下っ端かも分からないが刺客を送ってきたということは、なにかしらの跡を見つけたのだと思う。


「ソイツは探し人の顔も知らずに調べていたのか…?」

「たぶん…」


 じゃなきゃとっくの昔にオレの嘘はバレている筈だ。


「でもさー。この学園って仮にも妖怪学校やろ? 仮に相手が妖怪の末裔だったりしてもそんな簡単に見つけられるもんなんか?」


 赤史のふとした発言に、はっとする。


 そういえばそうであった。


 この学園には、普通の人間には見つけられないよう、結界のようなものが学園の周りに広がる森全体にまで広がっている。


 なので、まず普通の人間は入ることが、ましてや見ることも出来ない。入れる人間が居るとすれば、もともと妖怪と深く関わっている者か、取り憑かれていたりする者、末裔の人間と関わりがあったりする者だけだ。だがそのいずれも何らかの才能を必要とする様だが。


 そして人間だけでなく妖怪の末裔も簡単にこの場所を知ることは出来ない。唯一の例外として結界を素通り出来るのは生粋の妖怪で、人間の血を一ミリも引いていない者だけである。


 つまりは人間と妖怪の末裔は簡単に知ることも見ることも出来ないが、生粋の妖怪は結界を素通りして入ることが出来る…ということ。


 この学園を知った切っ掛けである張本人。姉の付き人のまいは、その辺で配られていたチラシを偶然拾ったからこの学園を知ったらしい。多分妖怪の血を引いていたり、何らかの才能が無ければ見ることも出来ない紙だったのではないだろうか。


 ということは…


「この学園の誰かが…情報を流した…?」

「マジか…」


 この学園は閉鎖された空間だ。外から情報を仕入れることは出来るが、此方から渡すのは難しい。


 外の連絡はほとんどとることが出来ず、唯一利用出来る連絡先といえば親族との連絡だけだ。外に居る友人だったりとは話すことが出来ない。


 どういう原理なのか、友人の連絡先にかけた者も居るようだが、全く繋がらなかったという。(血族に比べて繋がりが薄いから)


 まぁ此処に居るほとんどが外の世界が嫌になって此処へやってくる者だったり、初めから親に此処に行くように言われて来るような者である。そのためあまり不都合は無く、そこら辺の不満はほとんど無かった。


 だからこそこの特殊なルールや空間が極まってしまった訳だが。まぁそれについては此処に来てからのことなので重々承知していることだ。

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