第18話 キャラ被り問題
視線が一つに集まった食堂で、オレはその中心で身動きを取れずにいた。
何故かって?
強い力で転校生に握られていた手とは逆の右腕を再び強い力で引かれて何か暖かいモノに全身包まれた。
その暖かさはまるで冬場の早朝に温まった布団の様――という冗談はさておき。
「もごご・・・」
声を出そうとしても言葉にならず、何かの果物の名前のような字になった。
多分恐らく誰かの腕の中だろうと当たりをつける。
可笑しいな・・・オレも結構身長はある方なんだが。これでも180センチ弱はある。何故か何時まで経ってもギリギリ180センチにならないのが最近のちょっとした悩み事・・・。
引っ張られた手も、元々掴まれていた手もどちらも強い力で握られたせいで時間差で痛みが主張してきた。
どっちも怪力かよ。
オレはそれ程握力が特別あるわけでもないので脆い雪のように丁寧に扱いたまえ。(握力関係無い)
「おい、大丈夫か?」
この学園で割と聞き慣れた声が耳を通る。
目線を無理やり上げると至近距離に大変整ったお顔が・・・。
ぐぁっ・・・。目が、潰れる。
途轍もない破壊力をオレは目にしたかもしれない。
そこには先程までどこのオカン(オトン)だと言いたくなるような叱り方をしていた風紀委員長が居た。そういえばどうやってあの面子を地べたに正座させたのだろう。今更な考えが浮かんだ。
オレが顔を上げると同時に周りの者達から息を飲むような気配がした。
ちょっとそこ。本人がいる前でかけ算しないで。風紀委員の何人かが呟いていたのが聞こえ、軽く睨みつけた。
本格的に腐っている一般生徒含めて一般生徒は早々に食堂から追い出されたのでこれでもマシな状態である。悲しいことに。
というか一般生徒が居たらオレもあんな奇行しない。恐らくだが一般生徒が居たらその場では耐えて後ほど副会長からハリセンをお借りして隙を見て生徒会室で叩いていただろう。
オレはこれでも根に持つ方だ。仕返しは必ずする。
まぁそのされた行いによってはオレも気にとめない事もあるかもしれないから必ずしもやり返す訳ではないのかもしれないが。
至近距離にある委員長の顔にゆっくり瞬きをして平静を保つ。ふん、これでも雪女の末裔。美形の耐性は高い。(特に美人系)
まぁ風紀委員長はクールなイケメンなんだが。
というかオレと若干キャラ被ってないか?
という疑問は置き去りにしてオレは取りあえず手を放すように委員長に訴えた。特に渋る様子も見せずに委員長は結を囲っていた腕を放し一歩距離を取る。
転校生握られていた手を放してくれた事に小さな声で礼を言いつつ。
目の前に立つ風紀委員長を見て、オレはどれだけ反省文を書かなければいけないのだろうと昨日の件含めてやらかしたなと少し後悔した。いや昨日の件はしょうがないと思っている。あれは抑えようと思って抑えられる感情では無かったのだ。
生徒会の仕事も勉強もあるのに・・・今週の自由時間は全て無くなりそうだと遠くをひたと見つめた。
転校生が何かやらかすような予感がするが現在一番やらかしているのは自分な為何も言えないな・・・。
あれ? そういえば反省文って何を書けばいいんだ?
書いている人物はよく見かけるが実際に自分が書いたことは無かったな・・・と思い出す。
「
目尻を下げて心配したような目で
「・・・大丈夫」
取りあえず空気を読んで断った。(あからさまに沈んだ空気を出す風紀委員たちは見ない振りをした)
別に委員長には生徒会面々と転校生を今後ともよろしくお願いしたいため断った訳ではない。ないったらない。
「そうか・・・」
「うん」
なんだその目は。そんな残念そうな顔をするな。
転校生一行(転校生と一緒に居た二人+生徒会面々+転校生)を正座させることができる奴なんてお前ぐらいしか居ないだろう?先ほどオレは確信したんだ。あいつ等の手綱を握れるのは
まぁ心配してくれたことには礼を言う。
「ありがとう」
言われた委員長は何のことか分からなかったのか首を傾げながらもどういたしまして、と返した。
分かっていなさそうであるが、余は言えて満足じゃ。うん。
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