第17話 友達の定義とは
手を合わせた状態を解き立ち上がるとズザザ‥!と器用に正座したまま離れていく影が視界の端に写り込む。そんなに怖がること無いのに、ねぇ?
委員長や風紀委員達はきらきらとした目で結を見ていた。
報復(過剰)が済んだ事でハイになっていた思考も大人しくなり、結の雰囲気はいつも通りに戻っていた事に気付いた生徒会面々はホッと息を吐く。
普段大人しい人物を怒らせるのはヤバいという事実がその場に居たものたちの脳裏に焼き付いた。
実際副会長に頭を叩かれても、転校生に思い切り頬をグーパンで殴られても、会長は意識を持ってピンピンしていた。しかし雪玉が頬に当たるなり意識が朦朧としていた。
つまり雪玉の威力が高かったということ。
まぁオレが投げる前に2回も高威力の攻撃を食らっていたのもあると思うし。殴られた頬を狙って当てたからかなり痛かったのかもしれない。ごめんね会長。
1日に3回も打撃を受けた会長は瀕死であった。
すると近くからバッと立ち上がる影が見えた。立ち上がったのは転校生だったようだ。
「っ結!お前強かったんだな!!!」
とガシリと転校生に近かった左手を取られ強く握られる。
まずこれだけは言わせて欲しい。オレ先輩ぞ?こんなにフレンドリー?に話かけられる謂われは無い。少なくともオレの中では知り合い未満だ。
勢いが早すぎて一拍遅れて右足を後ろにジリ‥と摺り足で下がった。しかしその距離を縮めるようにずいっと近寄ってきた転校生に思わず口の端が引きつった気がする。
助けて赤史ー!いやアイツはアイツで大怪我してたからダメだった。コイツと相手させたら今の会長よりも悲惨な状況になりそうだ。ダメだボツ。
せっかく鬱憤を晴らせたのに再び降り積もっていくような感覚がする。オレこの状況変えられる気がしないんだが・・・。(先程自分の上司に向かって雪玉を投げたとは思えない発言)
オレ暑苦しい奴と相性悪いんだよ。雪女の末裔だから。会長・・・は無理か。副会長どうにかしてくれ!
と、期待の視線を向けるが転校生に手を握られているオレを見て羨ましそうに、そして嫉妬のような恨みの籠もった目で見られていた。理不尽。
言い訳として手を握ってきたのは転校生からだったと供述します。
ん?かえってそれが駄目なのか・・・。最早何も言えぬ。
全力で転校生と視線が合わないように長い前髪同士で視線の(オレの一方的な)攻防を交わす。
ヘルプミー!
もう一方的に掴まれている手を振り払って逃亡しようかと思う。少し罪悪感は残るだろうが一度手を放すように訪ねても放さなければ無理やり振り払おう。
誰かを頼ることは早々に諦めた。
そう思って口を開くと
「何でそんな事言うんだよ!友達だろオレ達!!」
「・・・」
普通に反応に窮する返答が返ってきた。
友達じゃないと言うのも申し訳ないしオレを友達と言うのも意味が分からない。思わず無言で答えてしまった。
キョロキョロと落ち着かず視線を彷徨わせふと気まぐれに転校生の方を見た。分厚い眼鏡の奥の瞳と目が合った気がした。
見えないのに目が合った。そう思った瞬間よろり‥体が一瞬自由がきかなくなった。たたらを踏んでぎゅっと眉間に皺を寄せて倒れないように耐える。
貧血だろうか?
保健室行くついでに看て貰うか・・・。
保健室に行く算段をつけていると転校生に握られていた手を自分が緩くだが握り返していた事に気づく。ぱっと手を開き放す。まぁ転校生が握っているので手の温もりはそのままだったが。
いくら友達と言っても放してと言ったら放してくれそうなもんだろうとオレは思っていたのだが違うのだろうか。オレは
そもそも一族、雪女の末裔の者達で大家族のようなものだから友達と呼べるのかと疑問を持つ。
しかし友達の定義は人それぞれかとも思っているのでそれ以上考えるのは止めた。思考放棄とも言う。
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