第16話 全力投球

※キャラ崩壊注意

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 そして騒ぎの中心を置いてけぼりにして風紀は騒ぎを収めた。本当にありがとう。雪だるまあげる。


 そして空気を読んでいないとしか言いようの無い所行を行う者が居た。転校生である。


 あろうことか転校生は生徒会の面々(オレは担架を作って免除)が委員長に説教されているところに入り込み委員長に名前を聞いた。あいつの視界と精神はどうなっているんだろう?


 あまりの唐突さと意味の分からなさにお怒りだった委員長もポカンと見ている。周りの風紀委員達は何故か体を震わせている。寒いのかな?

 

 ・・・いや嘘です。心当たりあります。風紀委員長怒るとヤバいんだよな・・・主に物理的に。


 風紀委員長は鬼の妖怪の末裔だ。鬼にも色々種類があるがあまりその手の知識は詳しくない。ただ力が強いというのは分かっているが。


 昨日の今朝も会った委員長の名前は咲江木さえきふじ。オレや会長、副会長と同じ2年生だ。コイツは多分三年生になってもなんだかんだ風紀委員長をやっているとオレは睨んでいる。


 でももしかしたら委員長といい線いくかもしれないな、転校生。さっき会長吹き飛ばしてたし。テーブルが犠牲になったけど。


 委員長は律儀に転校生の質問に答えた。・・・それに付け足して注意も忘れずに。・・・お母さんかな?


 そしてオレは離れたところで雪玉を片手間で作る。何のためにって?後々分かる。


 委員長に怒られまいといそいそとオレも担架に倒れた生徒を乗せる。変な声が聞こえた気がするが気のせいだ。きっと。


 風紀委員に混じって動いているうちに食堂の人口密度も少なくなってきた。そろそろ昼が終わるのもあると思う。


 そして見ないようにしていた委員長達の方を向く。


 そこには怒鳴っているんじゃないかと思う程の大きい声を出しながらも生徒会面々同様に正座している転校生布陣の3人が居た。


 いや、何があった?


 怖くて聞けない。恐らく何らかの問題を起こしたのだろう事は委員長の顔を見れば分かる。正に鬼の形相。


 ズゴゴゴゴゴゴゴ‥‥と背景に見える。半分妖怪の姿になってる気がしてならない。本当に転校生達は何をやらかしたんだ。


 風紀委員達は一般生徒を誘導し教室に戻らせた。働き者だなぁ。


 しかし仕事を終わらせた風紀委員達は自分達の長の姿を見て、よく見なければわからないがガタガタと震えている。


 数分後。

 先程から変わらない景色が続いている。本当に早送りしたのか疑いたくなるような状況だ。委員達は震え過ぎて最早笑い顔が浮かんでいるものも居るが。大分参ってるな。


 ここはオレが状況を打開するしかないか・・・と深呼吸を一つ。ごそごそと懐に仕舞ってあった雪玉を取り出した。


 コレは転校生に殴られた会長の頬が(意外と)痛そうな色合いをしていたんで冷やすものをと思って作っておいたものだ。


 しかし気付いた時には声を掛けられるような雰囲気では無かった。


 だからそう。オレがこれからする行動は仕方のないこと・・・。


 オレは止まっていた時を動かすようにカツリ‥と一歩踏み出した。

 すると正座していた面々と風紀委員会の面々が此方に気付く。これは委員長も同様だ。


 カツリ‥また一歩踏み出した。

 彼らとの距離は未だ数十メートルもある。正座していた彼らが此方を振り向く。後ろには鬼の形相の委員長。普通に怖い。


 カツリ‥三歩目を踏みしめた。

 何を思ったのか分かりそうで分からないが転校生並びに生徒会に期待するような、喜んだような顔をされた。何故だ。


 そして次の一歩を踏み出すことなくオレは片足をゆっくりと振り上げる。周りの視線がオレに集中するのが分かる。目立つのは好きではない。


 ・・・しかし、面白ければ話は別だ。


 何をしているんだと周りが思う暇も無く、背後に隠し持っていた雪玉を胸の前に持ってくる。長い前髪の下からキリッと獲物を見定める。


 そして流れるような動作で蛇のようなしなやかさを意識しながら的へ向かって全力投球。


 決まった!


「ぐふぉっ」


 オレの後ろからウオオオオ!と歓声が聞こえた。


 ベシャッと投げつけられた雪玉の勢いに流され倒れ込んだ会長。ピクリとも動かない会長。


 周りに座っている面々はというと会長の姿を見て(゚Д゚)ポカーンとしていた。


 フッ安心しろ。峰打ちだ。と、頭の中で笑った。別にあの場で背中を押されたのを根に持っていたワケジャナイ・・・。


 そして投げ終わったオレはスンッと感情の波が収まり、先程と打って変わってスタスタと会長の下へと近づいた。

 

 オレが近づくなりビクリ‥と反応するものが数名。というか転校生以外全員?顔見えにくいから分からないが。


 ごそごそと会長のポケットを漁る。目当てのモノを見つけるなり赤くなった頬に掛けた。そこに再び作り出した雪玉・・・ではなく氷を置く。


 意識が朦朧としているようだが会長の目は薄らと開いていた。


 そこでオレはしゃがんだまま両手をソッと合わせた。


 南無。チーン‥。


 ちょっとやりすぎたわ。ごめんね会長。

 ソッと心の中で呟くのだった。


 


□□□□□


主人公が雪玉を全力で投げて会長にヒットさせるのを見たかっただけなのに・・・大惨事ですわ


ごめんね会長by作者

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