第14話 後悔先に立たず

 ふぅ、と副会長が一息ついた所で。


「とまぁそういう訳です。大羅たいら(転校生)には手出ししないで下さいね?」

「え~そんなに伊兎いとセンパイが言うなら逆に気になっちゃうなー?」

「ふーん?副会長がそんなに言うなら尚更知りたくなっちゃうね!ね!左騎子さきね

「そうだね右騎子うきね!昨日はあんまり話す時間無かったし今日は話掛けようよ!」

「ちょっとあなた達先程私の言ったことは忘れたのですか?」


 何がという訳なのか副会長は生徒会の面々に牽制するように言ったが、それは寧ろ逆効果で一年組の3人の興味は既に転校生に向いていた。思いやりも何もない。


 先程誰かが転校生と同じクラスというようなことを言っていたから1-Sクラスなのだろう。昨日何があったのかは知らないが、余り話した訳では無さそうだ。


 すると突然副会長が何かを感じ取ったかのようにガタリと席を立った。そのことに生徒会の面々、俺含め一斉に副会長の方に視線を向けて何事かと見やる。


 どこを向いているのかと副会長の視線の先を追えば副会長は一階席へと視線を落としている。


 少し気になったオレは二階席の手すりに近づき近くに居た会長と共に下を見やった。


 一階席には一部分に一般生徒達がひしめきあい、広々とした筈の一階はギュッと人が固まったように見える。何時もは点々としているはずの生徒たちの距離は妙に近かった。まるで何かを避けているかのような動きだ。


 なんだ?あの人間がよく嫌う黒光りする虫でも出たのか?


 そう半ば冗談で考えると見覚えのない、というか一度見たら流石に忘れないであろう髪型をした生徒が固まった生徒たちの近くの席に座っているのが見えた。


 あんな奇抜な髪型この学園で見たら流石のオレでも忘れないと思うんだが・・・。見覚えの無い生徒であった。


「会長、あの髪型凄い、生徒が、転校生?」

「ああ・・・」


 マジかよという顔(無表情)で会長に聞けば会長は頭を押さえた状態で唸るように肯定した。まだ痛むのかなあの頭。いい音鳴ってたしね。


 固まった生徒達はその転校生を見ているように見えるが思い切り避けているようにも見える。唯一転校生の近くに座っている生徒と言ったら二人ぐらいで同じテーブルについている。恐らくクラスメイトか何かだろう。


 副会長はそれを見るなり二階席から一階に続く階段を早足で下り始める。あまりの素早い行動にオレたちはポカンとしたが慌てて副会長についていった。


 ――この時頭の片隅でやめた方がいいという警報を無視した事をオレは後に悔やんでも悔やみきれない事になる。


 二階席から下りてきたオレたち生徒会に気づいた生徒たちにざわめきが広がる。


 恐らく何故今全員が下りてきたのかだとかそのあたりだろう。いや王道という言葉も聞こえたのでそればかりでは無さそうだ。


 そう言えば赤史が楽しみにしていたな・・・。どうしよう。


 追いかける面々の後ろをついて行く。一番後ろは会長だった。


 副会長はどこかと見渡すと副会長が転校生に抱きついている瞬間が目に入った。辺りに居る生徒たちから悲鳴が上がる。


 副会長・・・人前であんなにも熱烈なハグをするなんて神経どうなっているのだろう。初対面、会ったばかりじゃないのかな?昨日会ったばかりだとしたら二日目にしてハグとか海外の方かと思う。


 若干近づく気が失せ始めていると後ろから背中を押され、進まざるを得なくなった。くっ。力強っ! これが天狗の力か?

 オレの背をぐいぐい押したのは会長だった。


 視線の多くなった事に辟易しながら進むと先に来ていた3人がわちゃわちゃしていた。


 会計は笑い、双子庶務はぐるぐる周り、副会長は少し睨みを効かせている。どういう状況?


 いやなんとなく分かるよ?あれだろ?食堂イベントだろう?


 オレ予習したし。・・・朧気な部分もあるけども。


 会計が珍しく子供っぽく笑っているのが少し意外だと思った。何時も笑顔ではあるが色気のある笑顔だから。


 双子?あいつ等はいつものことだ。ぐるぐる回るのは大体悪戯する準備運動みたいなものだし。


 副会長は転校生が来ただけで新しい一面が見え始めた。さっきいきなり立ち上がったのは転校生の気配でも感じ取ったのだろうか?いやまさかな。

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