第12話 二階席=聖域
午前の授業が終わり、生徒たちの気が抜ける頃。携帯にメッセージが届いた音が聞こえた。
オレのカバンからだ。
ガサゴソとカバンを見ないで漁り、携帯を取り出す。携帯を取り出しながらふと、赤史は昼食どうするのか疑問に思った。ついでに聞けばいいか。
メッセージの主を見ると会長からであった。曰わく、食堂集合だと。
簡潔だなー。まあ分かり易くていいか。
了解。と一応返事は返した。
生徒会メンバーにも恐らく連絡は行っているだろう。何故集まるのかは聞かされていない事が唯一の不満だろうか。
次に赤史にメッセージを送る。ついでに生徒会が食堂に集まる旨を伝えた。守秘義務?知らない名前ですね。そもそも食堂行ったらざわつくのは目に見えている。隠したところで、という話だ。
食堂へ行く準備を整えて席を立つ。
再三言うようだが私物を置いていけば物が無くなる。分かりきった事だ。恐ろしいことに。
教室を出て廊下を歩く。腹が空いた男子高校生は周りに居る生徒まで目が向かないのかオレに気づく者は親衛隊を除いていない。
何故背後に居たオレに気づいたのかは怖くて聞くことは出来ないが。
恐らく会長や副会長が此処に居たら、生徒たちの視線を集める事だろう。それだけ存在感があるのだ。オレの場合は意図して息を殺しているからさして気づかれなくても問題は無い。むしろ好都合だ。どうかこのまま気づかないでくれ。
食堂のある階に着くと人が多くなってきた。すると鞄から振動が伝わってくる。ちょうどメッセージが返ってきたのかもしれない。
壁際に寄り携帯を見ると赤史から、、、ではなく副会長からだった。
先に上で待っているそうだ。
上とは食堂の二階席の事で、ただでさえ広い食堂に二階席を作ったのはそうする必要があったから。親衛隊持ちや役職に就いている者達が利用する場所だ。
仮に親衛隊と役職に就いていたとして、二階席を使うことは可能だ。まぁ周りの生徒がどう思うか、というのは問題かもしれないが。
携帯を再び鞄へしまいこみ人混みに紛れる。食堂に近づくにつれて生徒が多くなりオレの存在に気づくものが増えてきた。
「え?うそ、書記様じゃない?」
「え!ホントだ。珍しいな~、普段食堂じゃ見かけないのに」
ザワザワ
「そういえばいつも一緒に居る唐戸居なくね?」
「本当だ。浮気か?」
付き合ってねぇよ。
思わず心の中でツッコミを入れてしまう。
前者の言葉は納得するけど。
普段購買より人の多い食堂に来ることはほとんどない。
来るとしたら赤史や鈴、瓜に誘われて来たりだとか生徒会で話す時だ。今回のように。未だに集まる理由、要件が分からないが。
歩く先の道を長い白い前髪の下からギッと睨む。
やはり噂されるのは何時まで経っても好きになれない。思わずその感情が表にでてしまい近くに居た生徒がブルリと肩を震わせたのが視界の端に映る。
そこではっとして深呼吸で心を落ち着かせる。辺りに冷たい風が一瞬だけ駆け抜けた。
気を落ち着かせながら歩くと何十人もの生徒が横に並んでも入れそうな扉をくぐりぬける。
昼間や夕方、朝方の食事時は生徒がよく来るのでその時間はずっと扉はオープンになっている。一般生徒なら扉が閉まっているところをみる機会も少ないと思う。
食堂へつき階段へと向かう。
オレが居ることに気がつく生徒たちは自然と道を空けぽっかりと穴が空くようにオレの周りに人は近づかない。
目立ってる・・・。
思わず舌打ちしたい心境に陥る。流石にしないけど。
オレにも面子があるからね。生徒たちの書記様像を崩すのも忍びないしそんな事はしないよ。
そんな事したら誰だお前と言われかねない。恐らく解釈違いという奴だ。
二階席に続く階段へ通りがかると階段の周辺には見えない壁が存在するかのように生徒たちはこの場所を避けている。一周回って嫌われているんじゃないかと疑ってしまいそうだ。
まるでサンクチュアリの様だ。
・・・いや、あながち間違いでもないか。
聖域。保護区、禁猟区。どれも護られた場所だ。
でもやっぱり嫌われているんじゃないかと思うぐらい避けられている。そう他人ごとの様に思った。
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