第11話 猫と瓜
保健室から退出し、教室へと着く。
「あ!
「おはよう」
「はよー結くーん」
「おはよぅ」
教室へ入ると元気よく声を掛けてくるクラスメイトが居た。去年とほとんど変わらない面子のため、話したことがほとんど無い相手の名前も大体覚えている。
最初に挨拶をしてくれたのがオレの親衛隊の一人である
普段は温厚で真面目で素直にいい奴なんだけど、鈴はオレが妖怪の力を使うととんでもなくテンションが上がり変態と化す。
初めてその姿を見たとき、オレは無表情だったが何故かむなしいような悲しいような感情にみまわれた。普通の奴(普通にいい奴)だと思っていたのに・・・。
そして鈴の次にのんびりした話し方で声を掛けてきたのは
去年ほぼ毎日続いていた朝の鳴き声(嬉しい悲鳴)を今日も元気だな~と軽く流していた猛者である。その時オレは確信した。コイツは天然記念物だと。
瓜はクラスメイト全員と軽いノリで話せるような人柄で、現在クラス委員長だ。
このクラスには生徒会長や副会長、書記のオレが居るけど生徒会という役職に就いているのでいくら優秀な会長や副会長でもなることはできない。
だから残った生徒の中から選んだ、という訳ではない。瓜には何かがあるのかクラスを纏めるのがとてもうまかったのだ。だからこそ選ばれたと言える。
これは余談だが、鈴が変態と知ってからオレはどういうわけか普通に鈴に対して話せるようになった。他のオレの親衛隊隊員もそうだ。過半数は変態でその他は良心的な真面目や何かしら理由があって入った者達だが、オレが普通に話せるようになったのは変態に対してだけだった。
あまり嬉しくは無い設定のようにも思える。
恐らくオレの中で気を使うのは無駄だと思っているのかもしれない。少し扱いが雑になった気がするが、変態達は喜んで居るので平気だろう。何故喜ぶのかは未だに分からないが。
席へ着きカバンを机の横に掛ける。
「そういえば赤史くんがまだ来てないんだよね、寝坊かなー?」
「確かに朝は早くに居るよね」
世間話のように二人は会話を続ける。赤史とよくいるオレが居るから遠まわしに聞いているのかもしれない。
「赤史は怪我、して今は、保健室に、居るよ」
「え!大丈夫なのかい?」
「意外と平気そう、だった」
「意外と、、、?」
「元気ならいい、、、のか?」
二人して首を傾げる様子に周りのクラスメイトや教室の前を通りがかった生徒が数人倒れた。
偶に見る光景だ。
そのため正常な生徒はテキパキと倒れた生徒を教室や廊下の隅に寄せて邪魔にならないようにする。
二人は親衛隊こそ無いが、モテる。事実としては男にモテている。
この学園には抱きたい抱かれたいランキングというものがある。王道学園モノを読んでいる者なら分かるのではないだろうか?オレはその存在を知ったとき、なんてもん作ってんだと己の目を疑った。オレ視力良いからそんな筈無かったのにね。
二人はそのランキングにランクインしている、と言えば事態を理解できるだろうか?
Sクラスにはそのランキングにランクインしている生徒が多い。勿論他のクラスにも居るが、数としては少ないと言える。
鈴はオレの親衛隊に入っているから親衛隊は居ない。・・・ちょっとしたファンクラブ?推し活?してる生徒なら見たことがあるが。
瓜は親衛隊の打診があったそうだが断ったらしい。何故かは知らない。まぁ本人らが納得しているようだったので部活だとか委員長だとかを理由に断ったのかもしれない。
因みにオレが何位だとかは知らない。知る気もない。
「あ、そういえば一年の方に転校生来たらしいんだよね」
「あー僕も聞いたな。親衛隊会議で話題に上がったよ」
情報回るの早くない?というか自分の知らぬ間に会議があったらしい。
この学園の情報網は途轍もないな。
「結様は何か転校生について知っていますか?」
「妖怪の末裔で昨日副会長が出迎えした、ということしか知らないかな」
「そうですか、、、」
しゅんと残念というような雰囲気を漂わせる鈴。
「まぁ転校生なんてどうでもいいですよね!結様が居れば僕は幸せなので!」
「相変わらずだねー鈴くんは」
「うん」
一瞬にして明るくなった鈴。本人目の前に居るのに直球だよこの子。本人気にしてない様だからオレも余り気にはしていないからいいけど。
そうして何時もと少し違う会話を終えて、授業が始まるのだった。
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