第10話 痴情のもつれ(冗談)
少し眠っていたようで瞼が少し重かったが、賑やかな声が聞こえたために目が覚めた。
しかし言っていることが余り理解出来ず、黙ってなり行きを見守っていたら、突然赤史が保険医を叩いた。余り痛そうでは無かったがいい音が鳴っていたのは確かだ。
普通に混乱した。
なに?痴情のもつれ?(盛大なる誤解)
ホントにどうした?
聞くと二人は何でも無いと答えた。うーん。無いって言うなら無いか。仮に痴情のもつれだったら知ってもろくなことになりはしないだろうし。(誤解です)
そういえば生徒会の仕事やってたんだった、と膝に置いていたパソコンをたたみカバンに仕舞った。
顔を上げれば二人は此方を見ていた事に気づく。
「、、、なに?」
「いや何でもあらへん」
「なんでもない」
妙に早口だったような、、、?まあいい。
「歩けそう?」
「んー頑張ればイケる!」
「じゃあ暫く、安静ね」
「ひん、俺の王道ウォッチングが~」
嘆く赤史をスルーし、赤史の鞄を持ち上げる。
「これ、赤史の」
「おーあんがとさん」
「うん。今日は授業の、ノート、オレがやるから。心配しなくてもいい」
「そこまでしてくれるんか?大丈夫か?生徒会の仕事もあんのやろ?」
「問題ない、数日なら」
本当に、、、?という目でまだ見てくるので頷いた。
「じゃ、唐斗も歩けると思ったら好きに出てっていいから、傷薬は忘れんなよ~」
保険医の和主はそう言ってカーテンをくぐってデスクに着いた。
「ねぇ、赤史」
「なんや?」
「、、、いや、、、お前に危害加えた、奴ら、一瞬だけど、凍らせた、、、」
「凍らせた!?」
「うん、、、」
「てことは、、、俺の事見つけたのって、結ってこと、、、?」
「うん」
聞きたかった事をすんでの所で言葉を換えて事実を言った。赤史は何かを心配するような目で結を見た。しかしオレはそれを見なかったフリをした。
「カバン置いて、行ったでしょ?」
「そう言えばそうやな」
「赤史に渡そうと思っ、て探してた、ら。見つけて。ボロボロになった赤史が、居た。それで気づいたら、カッとなって、、、」
「がはっ」
「!?」
自分が話終えると共に何かを吐くような声が聞こえてバッと其方を向く。そこには鼻と口下を片手で抑え震えている赤史。
「だ、大丈夫?」
「へ、平気や。これはただ単純に結が心配してくれたから嬉しくてな、、、」
「そ、そっか、、、」
嬉しいならまあいっかと思った。何かを吐いたように思ったが何も吐いていなかったようだし。いや鼻血が出てた。お前殴られまくってたのに顔だけは全くと言っていいほど傷無かったのに。今になって血が出て来たのか?
その後。結局一番気になった所は聞けぬまま会話は続き、そろそろ登校時間が迫っているので席を立った。主に昨日の後始末について話した。
「もう行くね」
「おう!来てくれてあんがとさん」
「じゃ」
「じゃあな~」
「失礼しました」
オレがぺこりと頭を下げて扉を開けると和主保険医が「また来いよ~」とのんびり声を掛けた。
それを聞き届けると同時にガラリと戸を閉めオレは保健室から退出したのだった。
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