1話完結「理想の君は・・」 美希編
僕はクラスでも三軍の中学生、だがそんな僕にも彼女がいる、幼なじみの美希だ。美希は美人で、将来アイドルになるのが夢だと言っていた。僕はそれをずっと隣で応援したかった...
ある日、友達と冗談半分で行った心霊スポットで足を滑らせ崖から転落、僕は死んでしまった。それでも僕は美希の事が心配で幽霊としてこの世に残っている。あれから一体何年たっただろうか...美希はもう成人を迎えたのだろうか...
『やれやれ、今日も冷やかしか』
深夜になるとこの場所にはカップルや大学生が怖いもの見たさにやってくる。
「おい! 今なんか動いたぞ」
「キャーーー!!!!」
『ただ風で草が揺れただけだろ、バカか』
僕は実際こうして幽霊としているのに、他の事で驚くバカップルに腹が立っていた。
今日もまた車が来た。少し大きなハイエースから降りてきたのはカメラを持った大人や霊媒師っぽい人達だ。
『テレビの収録か...』
そう思って車を見ていると、中からアイドルっぽい服装をした可愛い女の子が出てきた
『美希...美希だ!!』
美希は人気アイドルグループに4期生として入り、テレビに引っ張りだこのトップアイドルになっていた。
『美希...夢が叶ったんだな...』
僕はただ、ひたすらに泣いた。
「それではカメラ回しまーす。3、2、1!」
「美希の、心霊スポット巡り~!」
僕は美希の仕事を近くで見守る、そして少ししたら成仏されよう...そう思っていた。
「今回は、霊媒師のカムイ先生に来ていただきました、カムイ先生、ここはどうですか?」
「う~ん...何か邪悪な霊を感じますね」
『邪悪な霊...? ここには俺以外の霊はいないぞ?』
「大量の霊気を感じます」
『いや俺だけだって! こいつめちゃくちゃインチキ霊媒師じゃねぇか!』
僕の声は人間には届かない、それが分かっていても叫ばずにはいられなかった。
「怖いですね~、カムイ先生、ここでは昔何があったんですか?」
「この場所で5年前くらいに中学生が死んでしまったのです」
僕の事だ...あの日僕はこの崖で足を滑らせて死んだ...
「この場所で中学生は地面に魔方陣を書き幽霊を召還しようとし、召還された幽霊に襟を掴まれ崖から落とされた様です」
『めっちゃ誇張してんじゃねぇか!! ただの事故なんだよあれ! おいインチキ霊媒師!』
いくら叫んでも何も反応しない、やっぱりこいつは霊感など全く無い。
「怖い~! ではその崖を近くで見てみましょう!」
もう霊媒師などどうでも良い、美希の事を見よう。そう思った時、またインチキ霊媒師が訳の分からない事を言い出した
「止まって!!」
「え!? カムイ先生、どうかしましたか?」
「美希さん、貴方の前に小さい女の子を連れた母親の霊がある」
『ねぇよ!! それっぽい事言ってるだけじゃねぇか! こいつこんな適当な事言って金貰ってんのか! くそが!』
僕の怒りは頂点に達し霊媒師を思いっきり叩いた。いくら霊感の無い人間でも多少は悪寒を感じるはずだ。
「え?! 待って! ちょっと今霊感感じたかも!」
『自分でも始めて霊感感じて驚いてんじゃねぇか!』
「カムイ先生、大丈夫ですか?」
「はい。こんな時はこれを使います」
そう言い霊媒師は塩を取り出し僕に向かって振りかけて来た...が......
『塩かけたからって何なんだよ! 何で調味料かけて幽霊が苦しむと思ってんだよ! バカか! その嘘が広まりすぎて最近塩持ってくるバカップルとかめっちゃいるんだよ!』
霊媒師は持ってる塩を全て投げてしまい、新しい容器からまた塩を取り出す
『この容器、アジシオじゃねぇか! 普段家で使ってるやつ持ってきてるだろ!』
「今の幽霊は除霊しましたが、新しい幽霊が出てきました」
「本当ですか? カムイ先生、早く除霊してあげて下さい!」
「きぇぇ~~~い!!!」
そう言い霊媒師は十字架を僕に向けて来た。
『だから何なんだよ! 十字架を見せて何で幽霊が苦しむと思ってんだよ! だったらまだ先端尖ってるやつとか見せられた方が驚くよ!』
「この霊しぶといな...ならこれを使うか」
そう言い霊媒師は銀の筒に角が2つ生えた道具を取り出しこっちに向けてきた
『こ...これは、なんだ? 見た事無い道具だ』
「カムイ先生、これはどんな道具ですか?」
「これは、幽霊の頭を混乱させる道具です」
『混乱してるよ! 訳わからない道具すぎて! なんで皆霊媒師が持ってくる謎の道具を簡単に信じちゃうんだよ!』
「悪しき魂よ成仏したまえ! これで大丈夫です」
「良かった~! 怖かったけど、これで安心しました。それでは視聴者の皆さん、またお会いしましょう~!」
こうしてテレビ収録は終わった。
『はぁ...イラっとしたけど美希に最後に会えて幸せだった。もう未練は無い』
僕は魂を成仏させようとした...その時
「圭君!!!」
ロケ班は既に車に戻っていて、美希だけがこの崖に戻って来ていた。そして圭とは僕の名前だ
「私の事覚えてるかな? 圭君がここで死んじゃって、もう5年が経つね。私、圭君が死んじゃったの受け入れられなくて、お葬式にも行かないで、ずっと後悔してたの」
美希は崖に向かって1人で喋っている。僕はその美希の横に立ち話を聞いていた
「私は夢だったアイドルになりました。本当は心霊とかNGなんだけど、圭君が死んじゃった場所にロケに行くって聞いて、絶対に行かないと後悔すると思って、今日来ました」
僕はただ涙が溢れて止まらなかった...5年越しに美希が僕に話しかけてくれている...
「霊媒師の人についてきて貰ったのも、圭君が私の事心配して成仏されて無いんじゃないかと思って...私......私.....」
美希も涙がこらえられなくなりその場にしゃがみこんでしまった。
「圭君、私の事は心配しないで成仏されてね」
『うん、分かったよ』
「約束だよ?」
『分かってるって、全く、心配性だな美希は』
美希には僕が見えていない、それでも会話をしてるように見えるのはお互いが愛し合っているからだろう
「圭君、私そろそろ行くね」
『分かった...美希、元気でね』
「またね......あ、最後に一言言わせて!」
『何?』
「こんな所で魔方陣書くって、圭君って本当に子供だよね!」
そう笑って美希は帰っていった
『あいつの言葉信じてるのかよ...』
こうして僕はインチキ霊媒師にほんの少し未練を残しながらも成仏した。
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