第2夜
それじゃあ、またよろしく頼むと一言告げて去っていった死神ことカロンを睨み付ける。
彼はああやっていつも涼しい顔をして淡々と業務をこなす。
まぁこの後も何処かの魂を刈りにいくのだろう。
死神というのは、割と概念的なもので1人ではなく何人か居るらしい。
詳しくはないが最初の方に聞いた覚えがある。
大体の区間があり、その範囲内にこの病院があっただけ、と。
まぁ、ボクにはあまり関係ないけど。
邪魔が入ったけど、ボクは夜のうちしか大きく動くことができない。
さっさと他の病棟も見回ってしまおう。
先ほどの病室が6階、そこはカロンと回ったからあとはその上
天井をすり抜けてナースステーションの前へ
丁度深夜の見回りの時間らしい、軽い物品を持って出ていく看護師についていきながらカロンより受け取った新品のノートとペンを準備して、どんどんと記載を増やす。
アイツ、情報が足りないとか毎度うるさいんだから。
日中は動けないこともないが、いつもより気を付けないといけない。
基本は幽霊なので気にすることもないんだけど偶に"見える"人がいるから。
結構怖がられるんだよなあ、そんなにひどい外見なんだろうか。
生憎自分ではわからないし、誰かさんがすぐ連れて行ってしまうので他の幽霊にはあまり関りがないのだ。
そんなことを考えていたら、ふと目を覚ましたのか重たい瞼を上げる患者と目が合う。
え、目が合う__?
「「うわぁぁぁ!?」」
思わず声を上げてしまったが、すぐにカーテンの裏に隠れる。
看護師さんは患者の声にびっくりした様子だったけど、すぐにやさしく声をかけ宥めている。
流石プロ、しかし申し訳ないことをしたと反省。
探されないうちに次のフロアへ移動する。
離れた病室からはカーテンの裏に…!と震えた様子で訴える声が聞こえる。
まずいまずい、あの患者は見えるのか、今度からは注意していかないと。
時々”みえる”患者がいるのだ、別に脅かそうとか思ってるわけではないけどああいう反応されるとちょっと傷つく。
ボク、そんなに酷い姿して無いと思うけどなぁ。
気持ちを切り替えて他の病室にも偵察に行く。
この死神から預かった”カルテ”を埋めるために。
ボクの姿は基本的には人間にはみえない。
仮にも死者であり、幽霊だからだ。
けれど稀にああいう風にみえる人間は一定数いる。
霊感が強かったり、こっちに近くなっていたり、家系とかいろいろ。
詳しいことはわからないけど、大抵はみんなボクのことを怖がる。
きっとそういうものなんだろうな。
「特に異常なし...っと、この辺は静かだなぁ」
適当に病室の前を通りながらメモを増やす。
カルテと言ってはいるが、基本は簡単なメモだけ、その他異常がありそうな患者や死期が近そうな人がいればその都度詳しく記載するくらい。
もちろん何かあればボクより先に看護師さんたちが気付くし、そのあとを追えばいいだけ。
今日はなんだか疲れた気がする、カルテを閉じてその辺のソファーに横になる。
そのまま目を瞑って眠ることにした。
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