元地縛霊の備忘録
ふみんふきゅー
第1夜
病院には、暗いウワサが付き物である。
それはこの病院も例外ではなく__。
はぁ、とため息をつきながら病室にある丸椅子に腰を掛ける。
時刻は深夜2時を過ぎたところ、もう1か月床に臥せた彼を見つめながら記録する。
名前、年齢、性別、その他家族構成や趣味...それから、まだ意識があったころ窓の外を見つめながら孫に楽しそうに話していたことなど、覚えている限りを記す。
「よぉ、何か変わったことは?」
「今日も特に変わりはないよ。」
いつの間に姿を現したのだろう、黒いローブを纏った男が話しかけてくる。
俗にいう'死神'というやつだ。
長い白髪を雑に纏めて中は普通の白いシャツ、そして黒いズボンを履いている。
まぁ、死神の普通なんかよくわかんないけど。
書き纏めた手記を死神へ手渡す。
表情も変えずに内容を読み最期のページを熟読する。
そんなに大したこと書いてないのにな...。
なんだか変に申し訳なくなり目の前にいる患者へ視線を移した。
何もしゃべらず表情も動かない。
毎日のお見舞いもいつしか頻度が減っていって、毎日この病室に訪れるのはボクと看護師さんくらい。
なんとなく思い更けていると、死神がようやく動く出した。
手記を鞄にしまい込み、何処からか取り出した大きな鎌を構える。
チリン__。と何処かから音がした。
そして、死神は彼を刈り取る。
一瞬の出来事、窓が空いていないカーテンが揺れて、死神は刈り取った魂を籠へ納める。
透き通るような青い魂、生前はきっと見てきた通り優しい人だったのだろう。
少し遅れてけたたましいコール音が鳴り、看護師が駆けつける。
慌てた様子の看護師たちを横目に病室を去る。
「うむ、実に質のいい魂だ。」
「質とか、失礼な...。」
隣の死神は満足そうにしては、次の病室に向かう。
いつの間にか鎌と籠は仕舞われていた。
これがボクの日常である。
次、その次と病室をみて回り、患者を診て回る。
状態、症状、逐一記録して報告している身にもなってほしい、これでも結構大変なんだ。
そんなことつゆ知らずと言わんばかりにご機嫌な死神にため息をつきながら後をついていった。
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