第31話 審判ポーカー③

~第8試合~ 先行アカリ


ケイ ×.×.3.×.×.6.×.8.×.× 現在38点

アカリ×.×.3.×.5.×.7.×.×.× 現在34点


アカリは7を出し、その後ケイはカードを裏向きで置く。


アカリは次の最終試合(第1~8試合までとはルールが違い、お互いが同時にカードを出し数字が高い方が勝ち)には100%勝ち目がない。何故ならアカリの一番高い数字が"5"に対し、ケイは"6"と"8"を残しているからだ。つまりここで選択をミスるとアカリは負ける


アカリ「私がここで宣言を外した場合負けが確定する。私がリードしてたつもりがいつの間にかケイの方が有利になってるわね」


ケイ「理解が早いな、ほんの数秒で全パターンをシミュレーションしたか」


アカリ「でも何故私が前の試合で安全な9を選んだか覚えてる? それはここで当てる自信があるからよ」


そういいアカリはケイの出したカードに手を掛け「3!!!」と叫ぶ、結局アカリはそのカードを表にしなかったが、ケイはほんの少し顔を歪めてしまった


アカリ「私はただケイのカードに手を掛け "3" と叫んだだけ、宣言とは言っていない。なのに焦ったわね...という事は3なのかしら」


ケイ「ぐっ...」


ケイは内心喜んでいた、アカリがケイのカードを予想するには不意打ちでケイのリアクションを引き出すしかないと予想していたからだ。ケイはその不意打ちに対応する事だけを考えて第8試合に挑んでいた、そして案の定アカリは不意打ちをしケイは予め決めていたリアクションをした。ケイの作戦は成功したに思えたが...


アカリ「3を宣言...したい所だけど、こんな不意打ちは読まれてるか。宣言を当てられる確率は1/3、これを当てるには不意打ちでケイの表情を見るしかない。この方法がもしケイにバレているなら、本来出す表情とは逆の表情を出す、なら今顔を歪めたという事は本当は内心嬉しかったという事、3は無いわね」


アカリはそこまでも読みきっていた。


アカリ「ケイ、貴方は6か8を出している」


ケイ「...やれやれ、本当に読み合いでアカリに勝つ事はできないな、その最後の2択を当ててみろ、俺はもう一切リアクションをしない」


ケイは2択まで絞られ焦る...事は無かった。


ケイはこの第8試合、最初から読み合いを一切捨ててアカリが宣言を外す純粋な確率"2/3"で勝とうとしていたのだ。つまりアカリが3と叫びケイのリアクションを引き出した時、ケイは本来と逆のリアクションをしたわけでは無く、例え6と言われようと8と言われようと、全部顔を歪めたリアクションをすると決めていた...単純な2/3にする為に。


現にケイが選んだカードは"3"だ、ケイの読み合いを捨てた戦略が結果的にアカリの判断を鈍らせた。


アカリ「6か8...1/2を当てれば私は決勝に行ける。ただ単純な1/2じゃない、ケイがカードを裏向きにしてシャッフルして1枚選んだならまだしも、しっかり数字を見てカードを提出したんだ、何か意図が働いてる、それを当てられるかどうかの勝負」


ケイ「どうかな...」


その1/2に正解は無い。アカリの的外れな推理にケイは笑みがこぼれそうになるも無表情を貫く。


アカリ「いやまて、ケイは最初このゲームのセオリーのみで勝とうとしていた、ケイの思考パターンでは基本セオリーを貫き不利になったら型を崩す戦術だ...だが今はどうだ? この第8試合、元々1/3でケイに有利な状態だった、ならケイの思考はセオリー通りとなる」


アカリはじわりじわり正解に滲み寄る


アカリ「ケイにとって2/3で勝てるこの勝負のセオリーは思考や戦略など持ち込まず単純な確率ゲーにする事だ。変に戦略を建てて私に読まれる可能性も含め、ケイの取った作戦は恐らくカードをランダムで提出する事」


ケイは無表情を貫きながらも怯えていた...アカリが徐々に首を絞めてくるような感覚だ


アカリ「なら私が3と叫んでカードに手を掛けた時ケイは顔を歪めたがあれは何の意味も無い、恐らく私が6や8と言っても同じリアクションを取っただろう」


ケイ「......はぁー、本当に全部バレちまった、しかしどうかな? 結局1/3に戻っただけ、この運ゲーに勝てるかな?」


アカリ「言ったでしょ、貴方はカードを裏向きでシャッフルして提出した訳じゃない、数字を見て出した以上何かしらの意図が働くと」


ケイ「バカじゃないのか? 数字を見て提出したのはアカリに単純な運ゲーにしたとバレない為で、実際はただテキトーに選んだんだぞ?」


アカリ「そうね、ケイは絶対にランダムに選びたかったはず、そのランダムにこだわったのが仇ね」


ケイ「俺の数字が"理"で分かると言うのか?」


アカリ「えぇ、ケイが恐れた事は1つ、テキトーに選ぶはずが勝手に自分の"理"が入ってしまう事、潜在意識レベルでも選ぶべき数字を考えて提出してしまうと私にバレてしまうかもと思ってしまった。そこでケイが取った自分の考えなど一切及ばない日本一有名なランダムに数字を選ぶ方法。それは...」







"3" "6" "8" "3" "6" "8" "3" "6" "8"

"ど" "ち" "ら" "に" "し" "よ" "う" "か" "な"


"3" "6" "8" "3" "6" "8" "3" "6" "8" "3"

"か" "み" "さ" "ま" "の" "い" "う" "と" "お" "り"




アカリ「宣言、ケイの数字は"3"よ!」


アカリはカードに手を掛け表向きにする...そこに書かれていた数字は、3だった。


ケイ「なんで...なんでランダムに選んだはずがそれさえも全て読まれるんだ」


アカリ「惜しかったわね。でも任せて、ケイ達の分も賞金を取ってくるわ」


こうしてケイの敗北が決まった



~最終試合~ 


ケイ ×.×.×.×.×.6.×.8.×.× 現在38点

アカリ×.×.3.×.5.×.×.×.×.× 現在54点


最後にケイが"8"、アカリが"3"を出しケイが11点を獲得、ケイ49点対アカリ54点で審判ポーカーは幕を閉じた。


ケイ「点差こそ少ないものの完敗だ。安心して任せられるよ、アカリ...頼んだぞ!!」


アカリ「えぇ!」


こうしてアカリ達は自室に戻り20分後に迫る敗者復活最終戦に備えていた。

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