第27話 わらしべ長者②

ケイとアカリは無償で "布" まで交換する事ができ現在トップを走っている。ただしここからが難しいのだ。


ケイ「馬を持ってる奴! 出てこい!」


ミオ「お願い! 馬の人出てきて!」


ケイ達は馬のカードを持っている人を探す。しかし中々見当たらず一度人混みの無い所で作戦をたてる


ケイ「恐らく馬のカードを持っている奴は制限時間が残り少なくなるまで自室で待つつもりだ」


ミオ「なんでそんな事するの?」


ケイ「今の時間はプレイヤーが藁を布まで交換する時間。俺とアカリだけイレギュラーに早く布まで交換できたけど、馬の人は今来た所で交換する相手がいないと思っているんだ」


ミオ「なるほど、布を持つプレイヤーが一定数出てきたであろう時にロビーに出てくるのね」


ケイ「あぁ、そして制限時間ギリギリの方がプレイヤーも焦って高い金を払おうとするしな」


アユ「とりあえず今は待機しか無いか」


ケイ「いいや、今交換すれば馬は無料で手に入るんだ、だから俺達3人で手分けして全員の部屋をノックしていくぞ」


ミオ「何故馬のカードが無料で手に入るの? でもケイが言うのだからそうなんだろうね...ならやるしか無い!」


こうして手分けして各部屋をノックしていき人がいた場合持っているカードを確認していく。それを続ける事3分、ケイがノックした部屋から出てきたのは馬のカードを持ったダテと言う男だ。


ダテ「もう布まで交換したのか」


ケイ「あぁ、だから馬と交換してくれ」


ダテ「分かってると思うが現在ミカンの相場が2万円、布が3万円、そう考えるとこの馬のカードは4万円で譲ってやろう」


ケイ「いいや、俺は1円たりとも払わない」


ダテ「フンッ、笑わせるな、なんで無償で譲らなきゃならない」


ケイ「簡単だよ。今プレイヤー達が直面してる問題、それはカードの高騰だ。10万しかない手持ちでミカンに2万、布に3万払ったら手元には5万しか残らない、そしてその手元の5万の内せいぜい1万円くらいしか馬カードには使われない、何故ならその後の家・車・スマホカードの方が圧倒的に大切だからだ。この3つは明らかにカード数が少ないから高額になるに決まってる、馬カードなんかに割いてる金は無いんだよ」


ダテ「なるほど、俺の馬カードは1万円程度にしかならないのか...だからって1万の価値はある。お前に無償で譲る必要は無い」


ケイ「フフッ...必要は大有りなんだな。いいか? 今現在もプレイヤーは藁をミカンに、ミカンを布に交換して行ってる、早くしないと布を必要とするプレイヤーがいなくなっちゃうぜ?」


ダテ「グッ...そう言う事か! お前と交換する事で俺は布カードを手に入れ、他プレイヤーと交換すれば3万円手に入る」


ケイ「良く気がついたな、俺はお前に馬よりも価値のある布カードを渡してやる、プレイヤー全員が布カードを手に入れる前に早くロビーへ行ってこい!」


ダテ「しょうがねぇ、交換だ!」


ケイ"布"カード ⇄ ダテ"馬"カード


こうしてケイは10万円を残したまま馬カードを手にし、ダテは布カードをロビーで別のプレイヤーに譲渡、3万円を手にした。



ゲーム残り時間〜1時間20分〜



プレイヤーのほとんどが所持金5万円の状態で布を手にしている。しかし馬カードを無償か1万円で手に入れたい人が多く、物々交換は停滞している。


敗退者「しゃあねぇな! もう馬のカードは1万で売ってやるよ!」


ヒカリに渡された10万円しかゲーム内で使う事ができないので、大抵のプレイヤーが所持金4万円で家・車・スマホの売買に移る事だろう。唯一10万を残したまま馬を手にしているケイは心の余裕もありロビーで様子見をしていた。



ゲーム残り時間〜40分〜


2人を除くプレイヤー全員が馬を手に入れいよいよロビーに家・車・スマホカードを持ったプレイヤーが現れる


ゴミタロウ「ヒャッハー! 家のカード欲しい奴、8万で売ってやる! 4万しか持ってない奴同士でジャンケンでもして8万を作りな!」


ケイはゴミタロウとのカード交換をスルー、ミオはケイの考えが読めず質問をする


ミオ「家のカード持ってる人はゴミタロウしかいないのに、交換しなくていいの?」


ケイ「あぁ、確かに家のカードは場に1つしか無いかも知れない、でもこのゲームの "1番価値のあるもの" は車だ」


ミオ「なんで!?」


ケイが車である説明を始めようとすると、ロビーに車カードを持っている人物が現れ、「一旦説明は後で」とミオに言い残しケイは急いで交換に向かった


ゴミスケ「おらよ! 車が8万円だ〜!」


ケイはゴミスケに8万円を払い車をゲットした、そしてミオの所に戻り人のいない所で車が正解である理由を答える


ケイ「ヒカリはルール説明の時、俺達は100年前にタイムスリップしたと言った、その設定を守って考えると、100年前の人達にスマホの価値など分からない、だからスマホは無い。そして家も無い、何故ならヒカリの大根芝居の時に、"家でも家事に追われる日々"と言っていた。つまり既に家は持っているんだ、だから100年前の貧乏人である俺が1番欲しいのは車だ」


ミオ「モニターでヒカリの説明聞いてたけど、あの演技はふざけてただけで意味があるとは思ってなかったわ...」


ケイ「恐らく車カードは1枚しか無い、これで俺の勝利だ」



ゲーム残り時間〜20分〜


ケイは一応ロビーに残り、場の動向を見ていたがやはり車カードは1枚しか無く、余裕をぶっこいていた。


ケイ「危ない! バカ! いつも余裕ぶっこいて危険な目に遭ってきたじゃねぇか! 一応最後まで考えろ」


ケイが僅かに感じた違和感、それはアカリが声をかけてこない事だ。アカリなら車が正解だと100%気付くし、ケイがお金を余らせて簡単に車カードを買える事を知っている、それなのにケイに声をかけて来ないと言う事は車カード以外で勝てる自信があるという事だ。


ケイ「複数枚車カードがあるとは考えられない、アカリは何のカードを持っているんだ」


現にアカリは車カードなんて眼中に無かった、自室に戻り余裕をぶっこいている。



ケイ「ミオ、アユ、一緒に考えてくれ。最初のヒカリの説明に変な所無かったか?」


ミオ「うーん...藁と間違えて稲書いちゃった所とか」


アユ「そうだな、別に100年前にタイムスリップする必要無いよな、とは思った」



ケイ「確かに100年前という設定じゃ無くてもゲームは普通にできる...」


ゲーム残り時間〜10分〜


ケイは車カードを持ち、ほぼ勝ちが確定しつつも万が一に備えて頭をフル回転させる。


ケイ「100年前と言ったら大正初期...あ、もしかしたら、今年ってピッタリその日なのか」


ケイは何かを閃くと急いでヒカリがルール説明していた"資料館"に向かう。そして資料館の中を少し歩きあるものを見つける


ケイ「これが正解か!!」


車では無い、本当に1番価値のある物とは...


ケイ「俺は今から"藁"カードを手に入れる!」

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