第16話 スローダイヤ④

スローダイヤもいよいよ最終ターンとなる。

現在ミツルが3点リード、ミツルは勝ちを確信しながらもあらゆる可能性を模索していた


ミツル(俺の残りダイヤは6個でリカは0、もしリカが勝つには4点を取らないといけないからダイヤが10個必要になる。なら念の為ダイヤ0個で勝負しても良いんじゃないか?)


リカはアカバが退出するのに合わせて会場を出ていった。つまりアカバしか敗退者の居場所を把握できず他の退場したプレイヤーからダイヤを受け取れるとは思えない。


ミツル(やはりダイヤを10個持っている可能性は無い、でも1%の可能性を考えてダイヤ0個で提出しとこうか。結局0対0で勝つ事に変わりは無い)


ミツルは念の為ケントから貰った小箱にダイヤを6個音を出して入れて、自分の空の小箱をディーラーに提出しようとした...その時


ミツル「危ねぇ!」


ミツルは忘れていた、引き分け狙いの可能性に。


ミツル「ディーラーさんよ、もしこのターンでリカが3点手にして引き分けになったらどうなるんだ?」


ディーラー「その場合は全5ターンで勝利した回数の多い方が勝ちです。現在ミツルさんが第1、第2、第4ターンの3回勝利しているので最終ターンで点差が同数になってもミツルさんの勝利です」


ミツル「なら良かった」


引き分けで延長戦がある様なルールなら、リカはダイヤを9個出しておけばミツル6個VSリカ9個で点差は無くなり延長戦、もしミツルが0個で勝負に行っていたらリカに9点が入り負けていた。だが実際は延長戦は無く引き分け(ミツル6個VSリカ9個で全5回戦の点差が0)になったらミツルが勝つと言うミツルにとって有利なルールだった。


リカ「フフッ...私はもうダイヤを持っていないのに何を焦ってるんですか? 勝手に疑ってくれてるなら脅しちゃおうかな」


そう言いリカは音を立てない様に大袈裟に腕を10回動かし小箱を閉じディーラーに提出する


ミツル「そうだよな、そもそもリカはダイヤを持っていない可能性が99%、何も焦る事はない。俺はダイヤを0個提出で勝たせて貰うぜ!リカも俺も0個なら引き分けで俺の勝ち。もしお前が10個入れてても無効試合で改めて俺はダイヤ6個を出せば良い」


ミツルはリカの不気味な笑いに嫌な予感を感じながらも0個の小箱を提出した。


ディーラー「それでは最終ターンの結果を発表します。まずはミツルさんの小箱を開けます」


ミツルの小箱にダイヤは1つも入っていない


ディーラー「続いてリカさんの小箱です」


リカの小箱が開かれ中を見てミツルは驚愕する


ミツル「何故入っているんだ!?」



小箱にはダイヤが入っていた



ミツル「そうか、アカバを追いかけて会場から出る時、もう1人同時に退場する奴を見つけて偶然声をかけれたのか。だからリカは会場に戻ってきた時凄く息切れしてたんだ...キキッ」


驚いたのも最初だけ、ミツルは安堵していた


ディーラー「ミツルさんのダイヤ0個、対してリカさんは10個で無効試合としもう1度最終ターンを行います」


ミツル「偶然アカバ以外にも退場者を見つけれて良かったな! でもその退場者の持ってたダイヤもせいぜい10〜14個程、今お前は10個使ってしまったから出せるダイヤは最高でも4個程! 現在ダイヤを6個持っている俺には勝てない!」


リカ「フフッ...だと良いですね」


何でこいつは余裕なんだ! とミツルは内心キレる


ミツル(リカが勝つにはダイヤ10個必要、でもそんな数集められない...クソ! 何で俺の方が有利なのに追い詰められてんだ! 俺は勝たなきゃいけないんだ、マナミと...そして何よりもタケルの為に!)


マナミとタケルはミツルのペアで小学校からの友人だ。マナミは1日目のゲーム命綱観覧車ですぐに降り脱落、タケルは極寒迷路でゴールと書いてある壁を上に上げた所で死亡。


ミツル(マナミはモニターから見てくれてるかな、それとも会場の外で待っててくれてるだろうか...マナミ...俺はどうしたら良いんだ)


そんな考えをしている時に気づいた


ミツル(仲間...リカにもペアがいるはずだ。もしリカのペアが会場の外にいたなら、会場から出てきた敗退者全員に声をかけられる)



ミツル「リカよ、お前のペアは何て名前なんだ?」


リカ「ミネと、もう1人は知らない人で観覧車のゲームで死んじゃいました」


ミツル「そのミネって奴は優秀か?」


リカ「ええ、とても」


ミツル「ならそのミネは敗退者のダイヤをゲームに使用して良い事に気づいて会場の外に敗退者が出てくるのを見張り全員に声をかけダイヤを買収した。そしてお前がトイレと言って会場の外に出た時ミネから集めたダイヤを受け取る、違うか?」


リカ「さぁ」


ミツル「仲間が協力したとなればお前はまだダイヤを10個以上持っている、だから俺はまた0個ダイヤを入れれば良いんだ...キキッ」



モニター越しに見ていたケイ達は途中テキトーに見ていたが最終戦はテレビにかじりついていた


ケイ「俺達のモニターではリカの手元しか見えないがリカはダイヤを10個確かに入れていた、そして巾着袋の中身が空になったと言う事は今の10個が最後のダイヤ、もしミツルがまたダイヤ0個で様子見してきたらリカの負けだ」


ミオ「まさかこんな展開になるとは...いったいどっちが勝つの?」


アユ「ミツルが小箱をディーラーに渡したわ」



〜最終戦結果発表〜



ディーラーがリカの小箱を開くとダイヤ10個入っていた。そして次にミツルの小箱を開く


ディーラー「ミツルさんのダイヤは...6個です」


ミツル「くっ......」


ディーラー「よってこのターン10対6でリカさんに4点が入り、3点リードしていたミツルさんは敗北です」


リカ「なかなか手強かったですね」


ミツル「様子見でダイヤ0個にしていれば勝ってたのに...」


リカ「あなたにそれはできませんよ」


ミツル「何故そう言い切れる?」


リカ「"1"だから」


ミツル「1?」


リカ「第1ターンのダイヤ24個対14個の試合で、あなたは本当は15個ダイヤが入っていたのに保険で"1"抜いた。そして第4ターンでも私がアカバから貰ったダイヤ14個を小箱に入れる事に気づいていたのにあなたはダイヤを9点差の付く23個ではなく22個しか入れなかった。あなたは"1"だけ保険を張る癖がある。この最終戦あなたは"1度"ダイヤを0個で勝負する保険を張った、仕切り直しの2回目もダイヤ0個で保険を張るなんてあなたはできない」


ミツル「迷いに迷ってダイヤを6個入れたつもりが、その実俺が出す手は既に決まっていたと言うのか...キキッ、完敗だ」


こうしてリカはトーナメント1回戦を勝ち抜き2回戦へと駒を進めた...しかし次の相手は3ターン目でコールド勝ちをした強敵"ケント"だ


リカ「フフッ...ケントのトリックにはもう気付いてる」




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