第14話 スローダイヤ②

ミオ「ケイ、一体第1ターンで何が起こっていたの?」


事の経緯はこうだ。


まずミツルは箱にアクセサリーを7個程入れリカがダイヤを15個以上入れる様に仕向け、自分はダイヤを0個にする。と言うのが戦術だがミツルはリカがそこまで気付く事は予想できた。あえて指にはめているアクセサリーを何個か残さないで全部外した事、わざとらしく音を出してダイヤを小箱に入れた事、そして今日までゲームを勝ち抜いて来た相手なら99%このトリックには気づいてくれるとミツルは考えた。


リカは実際にミツルは0個と予想しダイヤを9個入れようとした。しかし気づいた、その違和感に。


リカ(あからさますぎる、これは罠ね。私が9個入れるとミツルはきっと読んでいる、でもどうやって勝つつもりかしら? ダイヤを9個以上入れるなんて...そうだ、ルール説明の時ミツルは小箱にダイヤを15個入れていた、その時のダイヤをあえて取り除かないで入れて置いたんだ。つまりミツルの小箱にはダイヤが元々15個入っていた、私は24個入れれば勝てる)


リカの読み通りミツルはルール説明の時のダイヤ15個を入れっぱなしにしていた。だがミツルはまだ第1ターンでリカの実力を把握していない、このダイヤ15個のトリックまでも気づく相手なのかを分かっていないので、万が一気付かれた時の為に1つだけダイヤを抜いて置いたのだ。



ミツル「俺は3秒で小箱を閉じディーラーに提出したが、3秒あれば音を立てずにダイヤを1個くらい小箱から取り出す事は可能だ」


リカ「ミツル...そこまで頭が回る奴だったとは」


ミツル「相手の実力が分からない第1ターンこそが勝負の分かれ目。それを分かってリカもダイヤ24と攻めたんだろうが俺が一枚上手だったな、キキッ」


こうしてお互いの思惑が交錯した第1ターンは仕切り直しとなりミツルの残りダイヤは36、リカは26となった。


ディーラーが再び進行を始めようとした時、場内に支配人からのアナウンスが流れる


支配人「只今ダイヤを割り1つのダイヤを2つにするという行為が行われました。発想としては面白いですがそう言った方法で数を増やす行為は禁止です、高級なダイヤなので破損しないよう気を付けて下さい」


ミツル「そりゃダメに決まってるが発想力は素晴らしいな」


リカ「随分余裕ね」


ミツル「そりゃそうだろ、なんせお前は26個で残り5回を戦わなければいけない。対して俺はダイヤが36個あるから、各ターンダイヤを7個出せば確実に勝てるんだ」


仮にミツルが計5ターン全てダイヤ7個だとして、リカは第1ターンでダイヤを16使い9点加点。第2ターンで10個使い3点加点。その時点でリカのダイヤは全て無くなり残り3ターンでミツルは21点を手に入れる、よってこの勝負第1ターンが終わる前に勝敗が決してしまったのだ


ミツル「ま、ここからは消化試合だ。次の俺の相手はD席のどっちかだな?」


D席を見ていると第2ターンにしてもう決着が決まろうとしている


アカバ「ぐっ...なんで分かるんだ!」


ケント「...」


アカバ0点VSケント18点。ケントは2ターン連続で最高点の9点を手にしていた。


ミツル「次の敵は間違いなくケントって奴だな」


ディーラー「そろそろ初めてよろしいでしょうか」


ミツル「すまねぇすまねぇ、始めよう。リカもいいよな?」


リカは言葉が出ず涙目になりながら頷く


ディーラーは先程のダイヤを回収し小箱を2人に戻す


ディーラー「それでは第1ターンスタートです」


ケイ達はミツルの手元にモニターの映像を合わせた。あれだけ天才だと崇めていたリカを一瞬で倒した相手だ、もはやケイ達の目にリカは映っていなかった。


ミツルは嫌らしく音を立てながら小箱にダイヤを7個入れディーラーに提出する。リカは下を向いて中々手を動かさない


ミツル「おい早くしろや! てめぇはもう負けたんだよ!」


リカは肩を震わせながら涙を流す、それから1分くらいかけて震えた手でダイヤを1つ1つ小箱に入れディーラーに提出した



ディーラー「それではまずミツルさんの小箱からオープンします」


ミツルのダイヤは7個、それに対してリカのダイヤは5個でミツルに2点が入る


リカ「助けて..殺される!!」


ミツル「おい、何言ってるんだ?」


リカ「お願い! 負けたら..殺されるの!」


リカはそう言い泣き叫んだ...勿論ブラフだ


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