第2話 命綱観覧車①

高さ70mのゴンドラから落ちた。地面で血だらけになったヨワシの姿がある


「人が死んでるぞ! 聞いてた話と違う!」


騒いでるのはたったの数人。他の全員は理解していた、このゲームは支配人の説明の通り、無理をしなければケガ1つしない。


支配人「それでは2組目の方お願いします」


2人が乗り込んでスタートと同時に1人が降りた、その後残った1人は命綱を外し無事クリアだ


ケイ「アユ、俺はミオを守らなきゃいけない。観覧車に乗ると同時に降りてくれないか、必ず最終日まで生き残って見せるから」


アユ「そんなに自信があるならいいわよ」


ケイ「ありがとう」


この後もペアのどちらかがスタートと同時に降りて終わるのだろう、と圭はそう思っていた。しかし結果は違った。


3組目・・50メートルで1人落下


4組目・・100メートルで1人落下


5組目・・スタート直後1人落下


6組目・・80メートルで1人落下




アユ「皆欲張りね、確かに今日始めてあった人に4億もの賞金がかかったゲームを任せるのは怖い。だから自分が、いや自分がってケンカになり気づいたら取り返しのつかない高さに行ってしまってる」


ケイ「それだけじゃない、人が高い所からジャンプしようとする時、最高でも5mの高さがあったらもう恐怖心からジャンプなんてできない、なのにこの観覧車、さっきから見てると20m地点までの回転の速さが異常だ。だから皆飛び降りようとした頃には手遅れなんだ」


15組目、ついに恐れていた事態が起こる


ケイ「もう100mなのにどっちも落ちてこない」


アユ「よくみるとゴンドラの中につり革が2つついてるわ、だから落とし合いをしてもなかなかすぐ決着が着かず落ちずらくしてるのね」


ケイ「なるほど、ケンカして早い段階で落ちても金持ちからしたら面白くない、ギリギリまで高い所に行ってほしいのか」



その時、2人同時に観覧車から落ちてきた。ケンカの決着が遅すぎてゴンドラが112mの高さに行ってしまったのだ



ケイ「なんて胸糞悪いゲームなんだ」



これを機に16~49組までほとんどの組がスタートと同時に1人が降りた。中にはビビって2人ともスタートと同時に降りた組もいた。恐怖心ゆえこの先のゲームに参加せず他人に任せたくなったのだ。



アユ「ねぇ、80組目までまだ時間あるしずっと見てる必要無くない? やる事は決まってるんだし」


ケイ「あぁ、やる事は分かっていても震えるんだ...念の為見ておきたい」




ケイはその場にとどまり次の赤髪と青髪の女の挑戦を見届ける。


アカリ「はぁ、なるほどね」


アオイ「さっさとクリアしましょ」




余裕な様子でゴンドラに乗り込む、もう降りる方を決めているのだろう。そう思っていたが30m近くになっても2人とも降りてこない




アユ「もうあんな高いのに2人とも叫んでない」


ケイ「あぁ、もしかして自殺するつもりなのか?」




すると、信じられない光景が目に入る




ケイ「あ、あぁ!! なんで!?」




命綱が2つ外れて落ちてきたのだ。そして何事も無かったかのように2人が最後まで乗り込みゴンドラから降りてくる




アユ「どういうこと!?」



ケイ「このゲームはただ片方が落ちて終わりのゲームじゃ無かったんだ! 何か2人とも命綱を外せる方法がある!」


アユ「なるほど...さっきの2人、乗り込んだ時何かに気づいた様子だった。なら今の内に考えれば何か閃けるんじゃない?」


ケイ「いや、今の内に考えても分かる事は100%無い。何故なら挑戦前に答えが分かったらこの後挑戦するプレイヤー達に布教されてしまう可能性がある。それは金持ち達にとってつまらなすぎる展開なんだ」


アユ「確かにあと150組もいて全員に攻略方法が伝わっちゃったらつまらないものね。じゃあ例えばゴンドラ内に紙が貼ってあるとか乗り込んだ後からしか分からない仕組みなのね」




全員に希望の光が灯った...しかしその小さな光はより絶望の海へと導く事となる




51~55組まで、全チームが頂上付近から2人同時に落ちた。ギリギリまで攻略方法を探そうとした為に取り返しがつかなくなっていたのだ。




ケイ「アユ、やっぱり俺達は確実にクリアしよう」


アユ「ええ、私はすぐ降りるわ」




それから70組目までは1人がすぐ降りるか2人が頂上付近で同時落ちするかの2パターンになっていた。アカリとアオイ以降二人同時クリアした者はいない、71組目からは1人がすぐ降りるパターンが主流になった。




78組目。乗り込んですぐゴンドラ内を探索する、2人クリアを目指しているようだ。


イチロウ「何もないぞ!」


サンロウ「何がどうなってるんだ!」




ガシャ~ンガシャ~ン!!!



2人はゴンドラ内で暴れまくり、揺れているのが遠目からでも凄く分かる




イチロウ「まて!! まさかっ!!」



頂上付近に近づくが2人とも落ちてこない。そして頂上を通過する、落ちてきたのは...命綱だけだ



ケイ「最初あんなにテンパってたのに...」


アユ「一瞬で閃ける何かなのね」



そして79組目


マイク「乗り込む前から答えは分かってイル」



ケイ「なに!? 答えが分かっているのか! 教えてくれ!」


マイク「何故教えなければならない? 教えてしまっては最後の賞金が減るではなイカ」


ポール「その通りだ! さっさと消エナ!」


ケイ(くっ...乗り込む前から答えが分かっているだと!? そんなはずは無い! もしマイクに少しでも人の心があって全員に伝えていたら支配人はどうするつもりだったんだ!)




予告どおりマイク達は2人同時にクリアした。




2組連続クリア。そして次に挑戦するのが...


アユ「いよいよ私達ね」


ケイ「あぁ、決めていた事をやるだけだ」




ゴンドラが目の前に来た



ガシャ~ン...



2人が乗り込むと約2倍の速さでゴンドラが上がっていく。約束通りアユが降りればケイがゲームクリアだ。




ケイ「アユ、後は俺に任せろ」 


アユ「......」


ケイ「おいどうした! 早く降りないとケガするぞ!」


アユ「私は...降りない」

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