第11話 催眠と決戦前夜
今日、いやもう昨日か。ぐるぐると渦巻くやり場のない気持ちに折り合いがつかず、今日は大事な新歓だというのに、僕は一向に寝付けずベットの上に寝っ転がって呆けていた。そもそも僕は明日佐奈に合う資格があるのか、そんなことばかり考えてしまう。
プルルルル。
静まり返った暗闇にスマホの光がともる。こんな夜遅くに誰だろうか?
「……佐奈」
画面上方に写された名前は今一番会いたくて、会いたくない人。
着信は鳴りやまない。僕は意を決して電話に出た。
「もしもし、御堂です」
「……え?」
佐奈から電話をかけてきたはずなのに、僕が名乗ると佐奈は予想外といった感じで戸惑いの声を上げた。なぜ彼女が困惑している?
「佐奈、だよね?」
答えは返ってこない。それもそうか。今日僕が彼女にしてしまったことを省みれば。
「しゅう、えt「昨日はごめん!!」」
奇しくも声がかぶってしまった。
「しゅう?」
佐奈が不安そうな声で僕の名前を呼ぶ。弱弱しい彼女の声は僕に
僕はもっと彼女の声が聞きたくなり、通話の音量を上げた。
「約束守れなくて。ほんとにごめん。佐奈、楽しみにしてたのに。水を刺すようなことをしてしまって」
「……明日、11時に新宿駅前だって」
帰ってきた答えは淡白なもの。別に許してほしくて謝ったわけではないが、こうもスルーされるとさすがに心に来るものがある。
「……そう。ありがとう佐奈」
でもそれ以上に、もう僕とは会いたくないって言われてもおかしくないのに今日の予定を伝えてくれた佐奈を想うと胸が張り裂けそうになった。
「明日に響いちゃいけないから、もう切るね。僕のこと許さなくてもいいから、また明日会ってくれたら嬉しいな。ごめんね厚かましかったかな」
もっと佐奈と話したいことはある。でも、無理だ。頭が真っ白になって何も言えない。
だから僕は逃げた。一方的に電話を切ろうとしてしまった。
どこまでも自分勝手な自分に反吐が出る。
「そんなことない!!」
佐奈の芯のある声が部屋中に響き、僕は電話を切る手が止まった。
コンコン。
不意に扉をたたく音がした。
「こんな夜遅くに誰と電話しているのかしら?」
どうやら声が外まで漏れていたらしく、姉さんが部屋に入ってきてしまった。
「姉さん今取り込み中だから」
僕はスマホを話して小声でそういった。
でも、姉さんがそれで引くとは当然思わない。次の一手を考えていると、姉さんが目にもとまらぬ速さで僕のベットに潜り込んできた。
「私が聞いているのは誰と電話しているかよしゅーくん」
僕に抵抗する暇はなく、姉さんはあっという間に僕のスマホを奪ってしまう。
「佐奈……桜井さんね」
ぶつっ。
「な、なにしてるの姉さん!?」
なんと姉さんは僕の許可なく電話は切ってしまった。
「うるさいわね」
姉さんはポケットでも忍ばせていたのはスマホを僕の目の前にかざしてきた。
まただ。なんで姉さんのスマホを見ると眠くなってしまうんだ。
__________________
今日は幸せなことがいっぱいあった。しゅーくんが生徒会室に来てくれて、しゅーくんが私のことを助けてくれて、しゅーくんが私のことだけを見てくれた一日だった。
それはまさに私の理想だった。ただ一つを除いて。
桜井佐奈さん。中学生の時に同じ生徒会の一員だった彼女は私の最大の障害だ。気が付くといつもしゅーくんの隣にいる子。うっとうしくてしょうがない。今日だってそうよ。部活に行かないでってお願いした時に見せたためらい。彼が言う「約束」はきっと桜井さんが絡んでいる。
でも、私は彼女に接触する気はない。今の均衡を崩すにはまだ時期が早い。
「そんなことない!!」
「今の声、だれかしら?」
しゅーくんの部屋から女の大声が聞こえていた。
頭に血が上る。せっかくしゅーくんとの思い出に浸っていたのに、水を差された気分だ。
私は声の正体を確かめるため、しゅーくんの部屋に飛び込んだ。
なんで焦るのかしら、しゅーくん。何かやましいことでもあるのかしら。
しゅーくんがスマホを隠す前にそれを奪い通話相手を確かめた。
佐奈。
みしっ。その二文字を見た途端目の前が真っ白になった。
また私のしゅーくんをたぶらそうというのね。
私はすぐに通話を切ってしゅーくんに催眠をかけた。
しゅーくんも私に隠れたほかの女と通話だなんて、それも夜に。
お仕置きが必要みたいね。
しかし、追撃は思わぬ方からやってきてしまう。
ピロン。
しゅーくんのスマホが鳴った。
『おやすみしゅう、明日11時に新宿駅ね』
は?
デート?
私を差し置いてしゅーくん、桜井さんとデートに行くっていうのね。
前言撤回。桜井さんとはかかわらないって言ったけれど、しゅーくんを守るためだもんね。
いざとなったら私が助けるからしゅーくん。
そう決意した私は、すーすーと気持ちよさそうに寝息を立てているしゅーくんの頭を私の胸元に抱きよせ足を絡めた。
胸の谷間に暖かな吐息がかかってむず痒い。しゅーくんの体温を感じて、昨日私を庇ってくれたかっこいいしゅーくんを思い出す。
抱き枕しゅーくん、最高だわ。
誰にも渡さないからね。私だけを見てしゅーくん♡
____________________
ここまでお読みいただきありがとうございます!
少しでも面白いと思った人は♡、⭐︎、作品のフォローよろしくお願いします。
あっという間に【3000pv】です!みなさんありがとうございます。
次回、龍虎相見えん。お楽しみあれ〜
いつの間にか姉ができていた!? まるメガネ @mArumegAne1001
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。いつの間にか姉ができていた!?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます