私は「とまと」 Ⅳ
私「とまと」、故郷に舞い戻ってまいりました。
生まれてこの方、地元から離れることができなかった「とまと」ですが、大学卒業とともに県外に一人放り出され、やっぱり帰りたいと願い、リターンしてまいりました。2年間で、人がさほど変われるとは考えにくいのですが、経験できる事柄は山ほどあると思っております。私は大学を卒業してからの2年間で、この山のようにある経験を、人よりも少し多く抱え込んだと言えるでしょうか。
一旦は正社員として一人暮らしを経て、「死」をも考えた「とまと」でしたが、さまざまな方の支えの中、生還いたしました。その後はニートのようなフリーターとなり、姉の元で居候しながら小遣い稼ぎをいたしました。そんな中、私生活が変化するかもしれない予兆が出現したのです。
ちらつく姉の結婚でございます。
以前少しお話しさせていただいた、Hくんが姉にプロポーズをしたというお話しでございます。お正月の帰省でHくんを両親に紹介した姉ですが、まだ結婚までの道のりは長いようでございます。
それでも、一緒に暮らさせていただいている身の私「とまと」、気が気ではいられないのも事実でございます。
「バイトを辞める」
「一人暮らしをする」
「故郷に帰る」
そんな言葉が脳内を行ったり来たり…
そんなこんなな状況が引き金となって、少しずつ故郷に帰りたいという思いが強まってまいりました。
しかし、バイトの方々には後ろ髪を引かれる思いでした。たくさんの温かな思い出が、私のここでの生活を彩ってくれているのです。ここを辞めたら、こんなにも頼りにされ、絆を深めてくれる人などいないのではないかと思えるほどに、皆さんがとても温かかった。
それでも、私の今後のことを考えると、辞めるという方向性は変わらないように感じてしまったのです。後悔するかもしれないと思いながらも、より厳しい方向へと自分を押し込めていくのは、以前から変わっていないのかもしれません。
また逃げるのかと嫌気さえ抱きました。これまで、変わり続けることが苦痛なのではないかと自分では思っておりました。ですが、ここでは変わらないことが私にとっての苦痛であるのかもしれないと思えてなりませんでした。
これもまた、私のただの妄想に過ぎないのかもしれません。失礼いたしました。
仕事を辞める前にすることは大体が、次の職場探しでしょう。
「次の方向を決める」
これは、私が最も不得意とする事柄でしょう。ですが、残念ながら、この決断と選択は人生の中で何度も何度も、休むことなく繰り返されることでございます。選択肢を作り、その名から最適と思えるものを選び抜き、最適だと言い聞かせて決断をする。このサイクルは何度対峙しても慣れませんし、不安で、どこか人任せにしてしまいたいという思いでいっぱいでございます。ですがタイムリミットもまたあるのです。明日は必ずきてしまうものなのですから。
いつの間にか私は故郷の地に降り立っておりました。辞めるという決断をしてからは、新幹線の如く時間が流れ去って遠のいていくようでした。
LINEの画面を覗き込めば、人と簡単に繋がることのできる社会ですが、人との心の距離はやはり対面している時でしか縮まることはないと思っております。どんなに抗っても毎日会っていたあの頃と比べると、遠く離れてしまった後では、あの時以上に繋がることはないでしょう。寂しいようで、冷たいようではございますが、これが現実でございます。しかしながら、この繋がりを強めることができなくとも、繋いでいることはできるはずでございます。そしてその「繋いでいること」に、私は意味があると思っております。
私は繋いでいたい。
そうただただ願うばかりでございます。
さあ、話は戻りまして、私が実家から通うこととなる再就職の場所と言いますのは、またまた同系列の会社の他店舗でございます。業務内容がほとんど変わらず、始めやすいと思ったのです。
ですが、ここでも私の社会不適合の性が顔を出すのです。社会を知らないだけなのか、それとも会社自体、店舗自体の運営に問題があるのか、それはもう私には判断できかねますが、それでも私の不平不満はどこにいても、何をしても、やむことはないのかもしれませんね。
この会社では、私は孤独でございます。職場に居場所はございません。救いは、両親と電話をくれる彼でございます。この双方は、私の心を壊すことなく温めてくれるのです。職場に居場所がなくても、私が立っている訳は、これでございます。
私はここでもまた、救われているのです。
こんなにも甘えてしまっては、天罰が降りそうで怖いのですが…
「辞めたい病」健在でございました。私の中で、この新しい職場で働くことは、早くも苦しいことになっていました。辞める癖がついているのも確かです。長続きのしない私なのです。一人にも耐える事ができません。私は弱い。それだけは変えられぬ事実なのだと痛感いたします。そんな私に甘い言葉をかけて追い打ちをかける両親。両親もまた、職を転々とするような自由な人なのです。自分の弱さに呆れながらも、打ち勝つことのできない私、一ヶ月ほどで辞めるという決断をしてしまいました。
変わることのできない自分自身に、諦めさえ抱いてしまいます。それでも、次の職を探すことは必須の事項でございます。
辞めることにも飽きてきました。自分でも辞めてしまうことに苦しさがあるのです。
自分を嫌いになってしまう。これ以上は嫌いになりたくはないのです。
また、戻ってしまうのが怖いのです。
戻ってしまうと感じるから怖いのか、
変わっていないと思うから怖いのか、
どちらにせよ、
どちらでも怖いのです。
もう同じ気持ちになりたくはないのです。
私「とまと」、自分ことを認めることのできる強さを少しでも持っていたいと思うのです。
次の就職先を探しながら、私はまた無職のとまとに戻っていました。彼は無職に舞い戻った私をあまり好まないでしょう。彼は意外にも常識的で少し堅くもあったのです。それでも、私を受け入れてくれました。彼には感謝しかありません。彼のためにも早く見つけたい。もう辞めなくてもいい場所を。
彼とお付き合いを始めてから、一年が過ぎました。関係が変わることも、想いが変わることもさほどありません。彼とはとても安定するのです。彼の気持ちが変わっているのかどうかなど分かりません。少しでも私のことを好いてくれるのなら、大事にしてくれるのなら、などと、私が烏滸がましいことは口が裂けても言えません。ですが、言わなくとも、彼は私のことを大事にしてくれているとは感じことができる。それだけで満足でございます。幸せでございます。
次、いつ彼に会えるかは知りません。ですがその日を待ちながら、自身を高めることにいたします。
さて、新しい職場は案外すぐに見つかりました。次の職はと言いますと、「先生」でございます。
「とまと」、先生になります。
塾のような学校のような、そんな場所での先生でございます。高校生を相手に、勉強を教えたり、一緒に日々を充実させたり、心のケアをしたりとなんとなくフワンとした業務ですが、それでも、教えることが好きな私にとっては、案外楽しい業務でございます。
職場に雰囲気はさほど良くはありませんし、待遇も口が裂けてもいいとは言えません。ですが、高校生のあの若さや純粋さは、少なからず元気をもらえます。
少しは続けることの出来そうなのは、「とまと」にとっては喜ばしいことでございます。
泣き言の多い「とまと」でございます。これから、不平不満も多くなっていくのでしょう。「辞めたい」と弱音を吐くのでしょう。
それでも、少しでも長く自分を保てるように踏ん張ってみたい。今はただそう思うのです。
彼は褒めてくれるでしょうか。
家族は褒めてくれるでしょうか。
生徒は頼ってくれるでしょうか。
同僚は頼ってくれるでしょうか。
また自分を好きになれるでしょうか。
少しの期待と
少しの不安を
この胸に抱いて、今日も私は生きています。
どうかこれを読んでくださっているあなたにも、生きてほしい。
生きることは辛いこと、それでも生きているからこそ感じることのできる感情がある。私の頭はおめでたいのです。それもそれでありですよ⁈
なんとなく、しんみりとしてしまいました。
私「とまと」これからも頑張って参ります。
好きな物書きも、もっと本腰を入れていきたいと思っているのです。
好きなドライブも、もっと日常的にしていきたいと思っているのです。
好きな自分を取り戻すために、気合を入れていきたいと思っているのです。
余談でございますが、
最近の「とまと」、お恥ずかしながら、質量が増加しております。
これは大変なことでございます。
欲張りではございますが、健康的に、無理なく、減量に励みたいのでございます。
長続きしない怠惰な「とまと」にもできそうな減量法を模索中でございます。
一旦手当たり次第に試してみるのも手でございますが、効率的にいきたいのも本音でございます。
気難しい要望。
これ以上の質量の増加を抑えつつ、研究していく次第でございます。
失礼致しました。余談でございました。
脈絡のない話を長々と失礼致しました。私事でございました。
「とまと」の独り言 白菫 @shirosumire944
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。「とまと」の独り言の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます