第14話 再びレベルアップ
まえがき
申し訳ありません。見え消しが反映しないと思わなかったので、スキルのテキス
トを一部修正しました。
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言ってしまった。
思わず勢いで、後先考えずに口から出てしまった。
冷静に考えれば酷く自分勝手な言い草だ。ボクの方で結論を先延ばしにしていた癖に、他の人に取られそうになったから慌てて手の平を返したみたいに思われても仕方のない発言だった。
焦って蒼ちゃんを見ると彼女は口を押さえて目を見開いていた。
「あおいちゃん……?」
「ほ、本当なの?」
彼女は絞り出すような声でボクを見つめる。
「ホントだよ……けど、ごめん。事務所に入ろうって時に今さらだよね」
「……」
「でも本心なんだ。あれからボクずっと考えて、考え抜いて……決めたんだ」
ボクは蒼ちゃんに向かって宣言した。
「子どもの頃の約束のように君を守りたいと思ってる――」
蒼ちゃんは真っ直ぐボクを見つめていた。
その瞳の綺麗さにボクはどぎまぎして視線を泳がせる。
「……正直、守り切れるか自信はないんだけどね、ははは」
ほろり。
「えっ?」
蒼ちゃんの瞳から不意に涙がこぼれる。
「え、あおいちゃん……?」
「ごめん、大丈夫、大丈夫だから」
「でも……」
蒼ちゃんは涙を拭いながら笑顔を見せる。
「ありがとう。つくも君の気持ち、受け取ったよ」
「うん」
「だから『一緒に異界迷宮の探宮者を目指そう』ね!」
蒼ちゃんの満面の笑みにボクも笑顔を返す。
「一緒に頑張ろう」
蒼ちゃんと心が通じ合った……そんな感じがした。
その時だ。
【『シロフェスネヴュラ』はレベル3に成長しました。HP・MP・SPが上昇します】
突然、頭の中に
◇
え、何なんだ、今の?
レベルアップのアナウンスみたいだけど、何故今この場面で?
確かに青春的な意味で経験値を得たの間違いないけど、おかしくないか?
「どうしたの? つくも君」
突然、会話を途切らせ、心有らずの状態になったボクに蒼ちゃんが心配そうに寄り添う。
「……い、いや、何でもない。興奮しすぎて我を忘れただけだから」
「なら良いんだけど……」
慌てて誤魔化したが、蒼ちゃんは不安そうな表情で続ける。
「まさか
「は?」
そういや今日は4月1日だったっけ。
「無い無い、絶対にそんなことない。こんな大切なことであおいちゃんに嘘なんて吐かないよ」
「良かった……そうだよね。ごめん、変なこと言って」
「いいよ、こんな日に呼び出したボクが悪いんだし」
蒼ちゃんが今回のことで相当不安に感じていたことがよくわかった。いや、今でさえボクの急な心変わりに疑心暗鬼になっているのかもしれない。
だからボクは彼女を安心させるように優しく言った。
「とにかく探宮者になると決めたからさ。この間、行けなかった迷宮街に今度行こうよ」
「うん、そうだね。それがいいね」
ボクの提案に蒼ちゃんはやっと元気になって、大きく頷いた。
「ずいぶん、嬉しそうだね」
「だって、つくも君と一緒に迷宮街へ行けるんだよ。嬉しいに決まってるよ」
さっき涙を見せたのが幻だったかのように、蒼ちゃんはニコニコ顔でボクを見つめる。
何、この可愛い生物。可愛すぎてボクどうしていいかわからないぞ。
「迷宮装備は私に任せて。つくもちゃんの可愛さを存分に生かせるコーディネート考えるからね!」
「……ハイ、オ願イシマス」
蒼ちゃんのやる気はMAXだった。
◇◆◇◆◇◆◇
やる気満々になった蒼ちゃんと別れて帰宅したボクは早々に自室に籠った。
レベルアップの状態を確認するためだ。
「でも、まさかあんなのでレベルアップするなんてね」
確かに現実と異界迷宮の境界が曖昧になっているボクだ。現実世界でも異界迷宮のように経験値が稼げるのは当然と言えば当然なのかもしれない。
「っていうことは、もしかして現実でもスキルが使えるってことなのかな?」
おっと、それを検証する前に、レベルアップ後のスキルを確認しなきゃ。
どれどれ……『魔王の邪眼』は、さすがにまだレベルアップしてないか。
さて、問題はこっちだ。
【スキル『魔王の
お、やっぱり魔王の固有スキルが解放されている。
【魔王の天稟(L3から常時発動):非属性魔法(空間魔法)、全属$#法($・神#✕法除く)スキルを習得。また、目にしたことのある任意のスキル(魔法は除く)をSPを消費して一定期間、使用可能となる。複数スキルの同時使用は不可。また、使用出来るスキルの数やレベルは魔王のレベルにより変化する】
えっ? テキストの一部が変な記号に変換されている。何だ、これ?
今度のも何かのバグだろうか?
そもそも、魔王ってクラスのわりには魔法スキルが一つもないってのは、ずっとおかしいと思ってはいたんだ。たぶん本当なら、このスキルで魔法に開眼する仕様だったのだと思う。なのにテキストの属性魔法の部分が消されているってことは、ボクは火魔法とか水魔法とかが使えないってことを意味してるのか? とりあえず非属性魔法だけは使えるみたいだけど、これじゃ魔王というレアクラスの真価が発揮できないも同然だぞ。
いったい何でこんなことに……まあ、ゲームじゃないから運営に文句つける訳にもいかないけれど。
それと、後半の『目にしたスキルを使用できる』というのも、別の意味でチートスキルだ。これさえあれば、いろんなスキルを目にしただけで習得したの同じになってしまう。効果の度合や覚えて置けるスキル数は魔王レベルによるみたいなので、どこまで有効なスキルかは、まだわからないけど、ぶっ壊れ級のスキルと思って間違いないだろう。複数使用も不可なのが唯一の救いか。
ここまで万能スキルだと他のプレーヤーとパーティー組む必要がほとんど無くなってしまう。まさに、ぼっちプレイヤーをやれと言わんばかりのスキルだ。
しかし、『魔王の風采』のスキルがあって本当に良かった。隠蔽しないと確実に大騒ぎになるところだった。後でステータス画面を偽装しないと……。
「ってことで……」
ボクは手を広げて詠唱する。
「【
目の前に白く切り取られた空間が現れた。これは唯一使える非属性魔法の空間魔法の1レベル魔法で、異次元に物体を収納できる魔法だ。ラノベによく出てくるアイテムボックスみたいなものと言っていい。
「やっぱり現実でもスキルが使えるんだ……」
ボクは自分の部屋に浮かぶ四角い異次元空間を見つめて呆然とした。
◇
なんとなく今までの流れで、ひょっとして現実世界でもスキルが使えるんじゃないかと薄々気付いていたけど、やはり本当に使えるとなると、かなりの衝撃だ。
試しに【魔王の風采】を使用してみたら、当たり前のように髪と瞳の色を変化させることができた。これで、いちいち髪を染めたりカラコン入れなくてもいいから大助かりだ……って、そんなこと言ってる場合じゃない。
【魔王の邪眼】も普通に使用できたので、やはりボクにとって異界迷宮と現実世界の境界が無いらしいことが、はっきりした。
と言うことは異世界仕様になっているボクの身体能力は、まさにオリンピック選手も真っ青なレベルに違いない。十分気を付けて生活しないと、何かの拍子でバレてしまう可能性がある。そうなったら大騒ぎになることは間違いないし、ボクの平穏な高校生活は一瞬で終わってしまうだろう。
さらに、政府機関に拉致され研究対象になったり、人体実験を強要されるかもしれない。考えただけで恐ろしくなる。それだけは絶対に避けなきゃ……。
こりゃあ、普通の高校生活の難易度がまた一段と高くなった気がしてならない。なにしろ、元男子ってだけじゃなく、人外だってバレないようにしなくちゃならないのだから。
う~っ、頭痛い。蒼ちゃんに相談した方が……いや待て待て、異界迷宮に単独で探宮したと言ったら、こっぴどく怒られそうだ。怒った蒼ちゃんは、とっても怖いからなぁ……ま、怒った顔も可愛いけど。
とにかく、しばらくはボク独りの秘密として様子を見ることにしよう。
さて、魔王のスキルも大体わかってきたので、いろいろ考えた結果ステータス画面で欺瞞する
ボクは方針を固めるとベッドにごろりと横になる。MPやSPをたくさん消費した訳では無かったけど、酷く疲れた気がして身体を休めることにしたのだ。
そして、ボクは夕方になって、妹のさくらに起こされるまで不覚にも寝てしまい、今日の特訓をさぼる羽目になってしまった。
~~~~
あとがき
いつもお読みいただきありがとうございます。
ストックが、ほぼ尽きているので、更新頻度が落ちるかもしれません。
申し訳ありません。
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