第19話 地球に生きる少年少女
本日3話目です
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《side 青空を見た少年》
以前ロボットで地上に出ているところをイリーナ達に発見され、今では他の地球人達と一緒にイリーナ達が用意した島で生活している少年は、この島に来てから1年ほどが経つ今日もまた、休憩時間に空を見上げていた。
今日の空模様は、雲が天の半分ほどを覆う晴れ模様。
雲の隙間から顔を出す太陽が今日も眩しい。
そんな少年に声をかけるものがいた。
「おーい、シンゴ!」
声をかけながら駆け寄ってきたのは、シンゴより1つだけ年上の少女アイサ。
声をかけられた少年ことシンゴは、立ち上がってからポンポンと服をはたきながらアイサの方を振り返る。
「どうしたのアイサ。あの人達がまた新しいこと教えてくれるって?」
シンゴが尋ねたのは、宇宙人であるイリーナ達が定期的に開催している講習会のようなものである。
例えば、何もない状態からの火の起こし方であるとか、あるいは植物からの繊維の取り出し方であるとか。
他にも石を砕いて石器にしたり、焚き火をしたり。
そんな初歩的なサバイバル、文明をやり直すための第0歩をイリーナ達はシンゴ達地球人に段階をおって教えていた。
「ううん、シンゴがなにしてるのかなーって。見に来ただけ」
「なんだ。じゃあまだゆっくりしてて大丈夫なの?」
「良いんじゃないかな? 次教えるのはまた数日後だって言ってたし」
そう言われて、一度立ち上がったシンゴは再び先ほどと同じ場所に座る。
が、流石に人のいる前で天を見上げようという気にはならず、しょうがないので眼前に広がる青く広大な海の方を眺めることにした。
そんなシンゴの隣に、アイサがそっと座る。
「また空眺めてたの?」
「うん」
「私は海の方が綺麗だなーって思うけど」
「でも海は危険だって教えられただろ? それに俺は、ただ青い海よりも、どこまでも吸い込まれそうな青空が好きなんだ」
そう語るシンゴの表情を横目で見たアイサは、その夢見る少年の如くキラキラとした瞳を見て正面へと向き直る。
その頬には、わずかに赤い色が指していた。
「それは私も思うけどね。空がどこまであるんだろう、って」
「この空の続く地の果てまで、行ってみたい」
「地球は丸いから1周してここに戻ってきちゃうよ」
「ぷっ、あはははは」
「もう、ちょっとシンゴ何?」
天然で少しずれた事をいうアイサに思わずシンゴは笑う。
それにちょっとムスッとしていたアイサだが、すぐにシンゴに釣られて笑い始めた。
今回集められた地球人の生き残りの中でも数少ない子供同士であるアイサとシンゴは、自然とこうして時間を共に過ごすようになっていた。
2人以外にも若い子たちはいるが、その子達はその子達でグループを作っているし、両親と同じ集団にいたりする。
家族がいない子供は、アイサとシンゴの2人だけだったのだ。
そのため2人は自然に一緒にいるようになっていた。
「それよりさ、シンゴ。また森に行かない?」
「またあ? 昨日もそれで迷子になりかけただろ?」
「今日こそは行ける気がする!」
そんな事をなんの根拠もなく笑顔で言うアイサに、シンゴは思わず釣られて笑ってしまう。
アイサとシンゴの2人は、集められた地球人の中でも特に活動的であり、2人は草原の中で動くのに慣れる前から、イリーナ達のドローンに森に行ってみる事を説明してから森へと入っていっていた。
そして当然のことながら、草原よりも更に歩くのは難しい森に2人は足を取られ、疲労で動けなくなった。
結局全員分監視していたというイリーナ達によって救出されたが、2人はその後も飽き足らずに幾度も森に挑戦している。
そしてその度に迷子になったり、諦めて帰ったりしている。
「それに、今日こそはあのウサギに触るからね」
「まだ狙ってたのか、ミミナガウサギ。カカポで十分じゃないか?」
「嫌だ! カカポは可愛いけど、他の動物も触りたいもん」
ミミナガウサギにカカポ。
この島の森にイリーナたちが放っている動物の一種である。
ミミナガウサギは文字通り耳が長いウサギで、カカポの方はずんぐりむっくりとして、飛ぶことが出来ない鳥だ。
それらと同種の生物が荒廃する前の地球にいたのかどうか2人は知らないが、今実際に森の中で発見することが出来ている、というのが重要だ。
ちなみに生物との接触は順序だてて行えるように、イリーナたちが島の中でもある程度動物の生息域を区切っているので、2人が今のところ遭遇できる大きな動物はその2種類とたまに木の上を飛んでいる鳥ぐらいである。
「仕方ないなあ。じゃあ行こっか」
「うん!」
仕方ない、と言いながらも、シンゴの表情はむしろ自分も乗り気であるという事を示していた。
それにアイサは気づかないまま、シンゴの手を引っ張って走り始める。
ちなみに2人は今裸足だが、これはイリーナ達からの指示だ。
『靴とか結構高級品と言うか作るの手間だからね。できるだけ裸足に慣れた方が良いよ』
と言われて、2人は思い切って靴を脱ぎ、裸足で森を歩いているのである。
最初の頃は足の裏がボロボロになったりもしたが、そのたびに、イリーナ達が治療をしてくれたため2人は裸足で歩くことを諦めず、結果今では森の中でも地面が危なくない場所を選べば裸足で歩ける程になっていた。
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