第11話 突然の宇宙人
《side 地球の少年》
そのドローンが現れたのは突然だった。
探索用のロボットを使って地上に出て、初めての青空をモニター越し見上げた少年。
その少年の操るロボットの横に、突如上空からドローンが飛来したのだ。
そして意味のわからない言語で何事か言ったかと思えば、今度は『話してる言語は英語か』だの『ここは地球なのか』だのわけのわからないことばかり聞いてきた。
そして今度は自分は宇宙人だとか言い出してみたりしている。
更に次は、自分にではなく地球の全ての生存者に語りかけるような話を始める。
そこでようやく困惑していた少年は、再起動して、いつものメンバーで話しているチャットの方にコメントを打ち込んだ。
『これ、どういうこと?』
『本当のことなの?』
『それとも悪質ないたずら?』
だが、そのコメントに反応は無かった。
少年のロボットからケーブルを通して中継される映像を見ていた彼らは、皆一様に、全周波数帯で発信され始めた放送に気を取られていたのだ。
そこでようやく少年も、宇宙人を名乗る何者かの演説に耳を傾けた。
『まず現状の説明ですが、私達の技術によって、放射能汚染、放射性物質、及びヘドロなどの全ての汚染は浄化されました』
確かに、少年のロボットが備えているはずの放射線検知器、いわゆるガイガーカウンターは一切放射線の反応を示していなかった。
『というのも、私達の惑星エルフィア、そして私の種族であるシュマーレ族には『荒廃惑星再生者』という仕事がありまして。文字通り『荒廃した惑星を再生する仕事』です。今回は、この仕事として、この星にやってきました』
その信じがたい話を忘れないように、一言一句を聞き漏らさないように集中しながら、少年はロボットの記録装置をオンにした。
この話は忘れてはならないと決定したからだ。
『そして、まずはこの惑星、地球の汚染を除去・浄化したわけです』
ただですね。
と、そこで宇宙人の女性、声質から少年が女性だと思っただけで本当にどうかは定かではないが、女性は話を進める。
『この『荒廃惑星再生プログラム』は、本来生命体が存在しない、あるいは存在したとしても、その後の発展が不可能な程に星が汚染されている場合に発動されるものです。わかりやすく言うと、知的生命体、人間である皆さんが存在していない前提のプログラム、になっているんですね』
「なんだ……それ」
人間の存在が無い前提でのプログラム、という言葉に少年は思わずポツリと呟く。
それでは、まるで人間の居場所が無いような──。
『ですので、再生後の惑星の生態系はこちらで用意したものを導入する予定でした。調査した結果では、この惑星の植物を含めた生命体はもはやほぼ全てが消滅してしまったようなので、このまま待っても不毛の大地なままには変わり有りませんので』
しかし、宇宙人を名乗る何者かの言葉は、少年の予想と反して人間に配慮した内容で続いた。
『問題点をあげるとするならば、こちらで用意した生態系なので、地球の皆さんが知る生態系とは違う部分が多々ある可能性がある点です。そこで、皆さんにお尋ねしたいのです。地球人の皆様に、決定権を委ねます。このまま不毛の大地とともに死んでいくのか、あるいは、私達による生態系の提供を受けて入れて、これまでとは大きく変わる地球で生き抜いて行くのか。どちらかを選んでいただきたいのです』
そう言った後に、宇宙人を名乗った人物は少し間を置く。
その間に少年は、確実に希望に繋がる方を選び取ろうと決心していた。
諦めていたところに光が差したとき、人はそれが罠かもしれないなどと考えることなく掴んでしまうものなのだ。
『今すぐの返答は求めません。しかし1週間以内。それ以内で決定をお願いします。そして各々決定をされたら、どの周波数でも構いませんので意思表示をお願いします。こちらはどのような電波でも拾うことが出来ますので。ただ、言語はこの言語でお願いします。解析が済んでいるのがこの言語だけですので、他の言語では受け取ることが出来ません』
その言葉に、少年は隣のドローンに向けてすぐに返答を返した。
「イエスだ! 俺はどんなものだろうと、可能性があるならばそれを掴みに行く!」
少年のその宣言を聞いていたのか聞いていなかったのか。
わからないが、カメラを少年の方に向けたドローンは1つ宙返りをうつと、高く空へと向かって跳び上がっていった。
その姿を画面越しに見送った少年は、すぐにロボットのコントローラーとヘッドマウントディスプレイを外して端末に向き合う。
『俺はイエスって宣言したぞ』
少年の言葉に反応するように、チャットに人が戻ってくる。
『まあ、これ以上希望のない星にいるよりは、な』
『というか宇宙人とかホントの奇跡だろ助かるの』
『放射能汚染が無くなったんなら、別に宇宙人の力借りなくてもやっていけるんじゃないの?』
『断ったときにどうするか言ってなかったのが怖いな』
『地球に存在したかもしれん植物の種とか生き残ってた動物とかも全部放射線でおかしくなってるからな。今更放射線取り除いたところで死の星に代わりはない。それなら宇宙人の生態系を受け入れた方がまし』
『俺等の食ってる飯に種とか入ってない?』
『無い。というか種の能力がない』
チャットでは活発に議論が行われる。
少年は、これまで囚われていた先の見えない暗闇に、突然光が灯ったような感覚を得て、チャットでの会話に参加していくのだった。
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