第4話 改造の方針
その後、2人は話し合いを行った結果いくつかの事を決めた。
まず、イリーナが構築すると決めたシステムは、ナノマシンによる浄化の完了前に投入されることになるので、いつでも回収できるようにイリーナ達の命令に絶対服従にしておくこと。
そして今回いきなりやってもうまくいくかどうかなんてことはわからないので、まずは浄化が完了し、微生物の散布が終わる数年後を目安に一度試しでシステムとなる存在を組んでみること。
これはあくまで実験なので、結果如何に関わらず浄化完了後には一旦撤去して、再度投入する際にはより洗練すること。
また実験である以上成果をあげる必要があるため、世界観構築は一旦度外視して今考えられる限りで必要となる全ての要素を出来る限りそのシステムに組み込むこと。
これらの基本方針が、まずは2人の間で取り決められた。
「まあほんとは、世界観とか決めてしまってから投下したかったけど、ね」
「実験をするならこのタイミングがベストですからね」
本当は、どんな存在を自然の、惑星の維持機構として組み込むか、しっかり構築していく世界観と相談してから決めたかった。
それこそ、五大精霊みたいに精霊という存在にするならばその下につく各属性の精霊の存在は必要になるし、ドラゴンなどのモンスター系にするならばどんな姿にするか、どんな特徴を持たせる必要があるのか、など決めたいことは山のようにある。
しかし、それを実際に惑星を再生する際に活用するためにも、今回の実験というのは欠かせない。
そう考えたイリーナは、再生する惑星に作る予定の世界観構築が未完成のまま世界の維持機構となる存在を導入する事を決定した。
そんなわけで、イリーナ達は早速いくつもの案を出し合い、実験として投入していくことにする存在を決めていく。
「まず今のこの星の環境だと、大気汚染をどうにかしたいよね」
「そうですね、地表が見えないほどの粉塵は絶対に大きな問題になりますから」
まず2人が考えるのは、大気の浄化だ。
特にここは、ゴミを浄化して綺麗にするのではなく粉塵を除去する必要があるため、なナノマシンでも働きづらい部類の場所になる。
そのため、特にここに抜擢される存在はこれからの惑星再生においても大きな意味を持つ、と言って良い。
「やっぱり鳥みたいな感じの方が良いと思う。超高高度を飛びながら粉塵ごと大気を取り込んで、濾過して吐き出す感じで」
「賛成です。飛行能力が無いと話になりませんからね」
なお、会話の中でマリーがイリーナに賛同したとしても、それは確実に最適解だということを示しているわけではない。
マリーは完璧に何でも出来るAIではなく、主人をサポートし、共に惑星再生を成し遂げるための相棒として作られた。
このあたりには、シュマーレ族の人工知能に対する職やすることを奪われる恐怖が関係している。
完璧な人工知能が作れるようになった時、人はいらない存在になってしまうのではないか。
そうシュマーレ族は考えたからこそ、部分的に完璧ではない人工知能を作ったのだ。
そのため、ときに主と同じような見落としをしたり、発想が少しだけ足りなかったりすることは十分に有り得る。
だからこそ、2人はまずは実験を行おうと考えたのである。
「そうなると大きさか数だよねー」
「そうですね。惑星の大気圏はかなり広いようですから」
結局これについては、アレやこれやと話し合った結果、大型の鳥ようなモンスターを、自然維持のための存在として多数放つことに決まった。
まず粉塵による大気汚染をどうにかせねば、というのが2人の考えだ。
「じゃあこれはこれで早速生成しちゃって。特に急ぎになると思うしね」
「はい、早速有機体の生成を開始します。酸素への毒耐性を高め、低窒素環境下でも活動可能な個体を生成します」
イリーナの決定を受けてマリーが早速荒廃惑星再生用の宇宙船に備え付けられたバイオタンクを使って、モンスターの生成を始める。
「次はどれを考えよっか」
「今の環境で自然の事を考える余裕はありません。となると大地の構造に影響を与える存在が必要ですね。特にクレーターなどが多数あるため、あまり健全な地表面の状態とは言い難い状態です」
「うーん……難しいなあ」
マリーの言葉にイリーナは考え込む。
理想の地形を作り出してくれるような存在を作ることは出来る。
それこそ巨人に鍬でも持たせて地面をならさせれば解決する話だ。
だがそれをして本当に惑星を再生したと言えるのだろうか。
いや、再生したとは言えるだろうが、イリーナの考えでは、この前文明の破壊痕もまた、次の文明が見つけ調査するものとして残しておきたい。
前世のイリーナは厄介な世界観オタクかつ考察オタクだったので、そんな事を考えてしまうのだ。
「……取り敢えず地表面の整備は一旦おいておこう」
「何故ですか? この地形を見る限り急いだ方が良いと思いますが」
「うーん、それについてはこの星の特徴にならないかなと思って。ほら、この星に作る生態系がクレーターごとに異なる生態系を構築したりするかもしれないでしょ? ならそれは自然に任せた方が良いかなって」
「……確かに、それもそうですね。私達の母星のように完全に管理された惑星を作りたいわけではありませんからね」
「そういうこと」
その後も数日、数週間と時間をかけて、2人の話し合いは続いた。
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