第3話 ファンタジーならなんか凄い存在が欲しいなって
《side イリーナ》
早速ナノマシンを放ってからすぐ、思いついたことがあったイリーナはマリーを呼び出した。
2人が惑星改造のための会議を行う際に使用する会議室にイリーナが先に入っていると、後からマリーがその手にプレートを持って入ってきた。
「申し訳有りません、リーナ。料理がちょうど良い所でしたので」
そう謝りながら机の上に食事を並べていくマリーにイリーナは首をブンブンと横に振って応える。
ちなみにリーナというのはイリーナが提案した自分自身の愛称だ。
「そんな! こっちこそいつもいろいろ任せちゃってごめんねマリー。今回も料理中に呼び出しちゃったみたいだし」
「それが私の役目ですから。それに料理というのも楽しいものですよ」
「ありがとう。今日も美味しいごはんいただきます」
「はい、召し上がってください」
マリーが今日作ってきた料理はハンバーガーと付け合せのポテトフライにサラダ。
バイオロイドであるマリーも食事をすることが出来るので、2人分を机の上に並べ終えてからマリーはイリーナの対面に座る。
「それで、思いついた良いことってなんですか?」
「うん、それなんだけどね。これを見てほしいんだけど」
そう言ってイリーナは、机型ディスプレイの画面を操作して、自分の考えをまとめた複数のイラストを表示する。
そこには、精霊やドラゴン、巨人など様々なキャラクターのイラストと、それぞれに色違いの複数のパターンが描かれていた。
そしてその下にぐるぐると線で囲われた大きな字で『自然を司る存在!』とビックリマークつきで書かれている。
「自然を司る存在、ですか」
「うん、そう。思ったんだけど、自然のバランスって余程うまく取らないと勝手に崩れちゃうでしょ?」
「それはそうですが……その結果が落ち着いた先がその星にとっては理想的な状態なのでは?」
「それはそうなんだけどね」
マリーの言葉に頷きながらも、イリーナは複数のメモをディスプレイに表示させる。
そこには色々と考えたイリーナが書き散らした跡があった。
「いろいろ考えたんだけど、折角のファンタジーだし自然のバランスを勝手に取ってくれるような存在を生み出しても良いんじゃないかなと思ったんだよね」
「……例えば、気温が上がりすぎたエリアがあれば冷やしたり、逆に冷えすぎているエリアを温めてくれるような生物、ということですか?」
マリーの少し考えてからの回答に、イリーナは大きく頷く。
「そうそう! 私達がやるとかナノマシンがやるんじゃなくて、ファンタジー的存在として、世界観の根幹に置いておきたいの。五属性の精霊とか、そういう力を持ったドラゴンか巨人とか、知的生命体の叡智を越えた自然の具現化、っていうの?」
「言いたいことはなんとなくわかりました。ですが、あまり大きな力を持たせてしまえばそれはそれでバランスが崩れるのでは?」
懸念を示すマリーにイリーナはチッチッチともたいぶって指を振る。
「自然なんてどこ動かしたらどこにどう影響が出るかわかんなくなるものでしょ? 私達のところだと技術力でどうにかしちゃってるけどさ」
「そうですね。だからこそ危険なのでは?」
「逆でしょ。だからこそ、あらかじめそれに対応するためのシステムまで組んでおく。これが正解じゃない?」
イリーナが言っているのは、つまりこれからこの星を再生するにあたり、1つ1つの異常に2人がいちいち指示を出して対応をするのではなく、異常があればそれに対応してくれるようなシステムとしてファンタジー的な存在を作りたい、という話だ。
例えば世界のバランスを保つ五大精霊であるとか、各々勝手な動きをしつつもバランスが崩れれば修正に来るドラゴンであるとか、ナノマシンを操ることで巨大な力を持って各地を統べる巨人であるとか。
そういう存在が、ファンタジー的にもこの星の再生的にも便利だとイリーナは言っているのだ。
そしてそれを聞いてマリーもイリーナの意志を理解した。
「なるほど、確かに先にシステムを組んでおくのが大事なのは理解しました。それに、リーナのサポートが私の仕事ですからね。リーナが言うなら、その方針で考えてみましょう」
「ありがと、マリー。それでね、どの方向性が良いかなって考えてみたんだけど」
そう言ってイリーナはまたいくつものメモをディスプレイに表示する。
そこには、巨大なモンスターが属性ごとに簡単なイラストで書かれていたり、文章で補足説明が入ったりしている。
「知的生命体って、どうしてだか私達と同じ二足歩行で手が生えた姿になるのは知ってるよね?」
「はい。生命科学の三大不思議の1つとされています」
「そう考えると、ここに生まれる生命体も2本ずつの手足が一番可能性近そうじゃない? そこに巨人となると人と迎合しちゃいそうだし──」
マリーの方に顔を向けずに考え続けるリーナに、軽くため息を吐いたマリーは声をかける。
「リーナ」
「何?」
「まずは、食べてからにしませんか? せっかくのご飯が冷めてしまいますよ」
そう言われたリーナはようやく顔をあげて、趣味に熱中してしまっていたことに照れくさそうに笑った。
「うん、そうだね。ありがとうマリー」
「いえいえ」
イリーナが暴走し、マリーが補完しときに抑制する。
それが2人の関係性として定まりつつあった。
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