第41話 収益化計画

 例の錬金術師君は少し変わり者だが、特に問題はないと判断して契約した。俺にハジかれる人っているのかな? よっぽどだぞ。

 ん? ああ、故郷送りだよ。だって運用できないもん。

 一応、街にレンタルの設備があるんだよ。そこで錬金術できるんだけど、レンタル代がバカにならない。

 しかも錬金するのにも魔石使うんだぜ? コストが重すぎるわ。

 まっ、故郷送りにした本当の理由はそこじゃないんだけどね。

 例の力を上げる種を錬金に使ってみたんだけど、種二つと一万クレ分の魔石で他の種に変わることがあると判明したんだよ。そこに至るまで、だいぶ金と種を犠牲にしてしまったけどな。

 魔石を増やせば確率が上がるかもしれないし、もしかすれば狙った種を作れるかもしれない。ただ、検証するにもコストが重すぎる。

 とりあえずコスト削減のために、故郷に錬金術用の設備を作ることにした。まあ一番の目的はコスト削減じゃなくて、密造だけどな。街で種なんか作ったら、どこから外部に情報が漏れるかわからん。

 彼には悪いが、当分は田舎に監禁だな。外部との接触を完全に断つ。


「あの子、なんで買い手がつかなかったのかしら? 可愛い顔してるのに」


 誰も彼もが、ロトリーさんみたいに性欲で物を考えるわけじゃないんですよ。


「設備保有してるパーティなんてそうそういないでしょうし、そもそも種の変換なんて想像の外でしょ」


 っていうか種の存在を知ってるパーティがどれだけいるのかって話だよ。


「とにかく、召喚士さんが役に立ちそうですね」

「え? ああ、錬金用の魔石ね」


 魔石を街まで運搬するのも一苦労だし、現地で取れるのは大きいだろう。まあ、現時点じゃ少量しか取れないけど。

 ……あの二人のレベルを上げたら、効率上がるかな? 種で鍛えて、ダンジョンでレベルを上げるか?


「美しさを上げる種ってないのかしら?」

「種は知りませんが……ポーションか何かでそういうのがあったような」


 適当に本を読み流してた時に得た情報だから、定かではないけどな。


「手に入れましょうよ! 薬師を仲間にしましょう!」


 簡単に言ってくれるよな、この人は。薬師なんて冒険者にならないんだから、派遣登録してるわけないじゃん。いや、それを言ったら錬金術師もそうなんだけど。


「はは、それ以上美しくなってどうするんですか」

「お上手ね。でも美への探求に終わりはないのよ?」


 そういうことは、酒場で大口開けて居眠りするのをやめてから言ってほしい。色気ゼロだぞ? それどころかマイナスだよ。


「はは、シャグランさんも男性ですもんね。色気がある大人の女性のほうが好みですよね。いえ、いいんですよ。私なんてシュリムさんの次に貧相ですし……」


 え、今のでヘラるの? どう見てもお世辞じゃん。皮肉よりもお世辞じゃん。

 っていうか普段から貴女のことも褒めてるじゃないですか。むしろ貴女が一番褒められてるよ?


「フレネーゾ? 今のアタシそこそこ強いのよ?」


 乗るな乗るな、勝てないから。勝てたとしても乗るな。


「それよりフェーブルさんはどうしたんです? 朝から見てませんが」

「ああ、アイツなら低レベル冒険者限定の武道大会を荒らしに行ってるわよ」


 あー、今の我々ならそういう稼ぎ方もできるのか。可哀想だなぁ、他の冒険者。こんなのいわゆるチートじゃん。読み物によく出てくる最強の転生者じゃん。まあ、あんなの出来の悪いおとぎ話だけど。


「武道大会で閃いたんだけど、最近加入した召喚士の子いるじゃない?」


 加入したというか離脱したというか……。名前で呼ばれない時点で、仲間と言えない気がするんだけど。


「モンスターの闘技場とかどう? 上手くいけば中々の収益になるわよ」


 シュリムさんって中々センスあるよな。こういう発想力があるからこそ、多属性の魔法が使えるのかもしれない。


「どうやって戦わせるんです? アイツら、基本的に人間しか襲わないでしょう」


 本人の前で言う勇気はないけどあの人、召喚士っていうより、もはやモンスター発生トラップだよな。人類の敵側だよ。俺らが有効活用してるってだけの話で。


「レベルを上げたらなんとかなるんじゃないの? 召喚って、言ってしまえば魔法だし、なんとでもなるわよ」


 いいなぁ、魔法使い。いや、俺も使えるっちゃ使えるんだけどさ。

 こうして考えると、攻撃魔法しか使えない人ってわりと肩身狭いよな。成長しても威力上がるだけで、なんというか夢がないんだよな。


「薬とか魔法で混乱させるのはどうですか? モンスター同士で殴り合いますよ」


 逆にチェロットさんは、こういうのに関してはセンスないよな。意見を出してくれるだけありがたいんだけど、アホしかいないパーティだったら破滅に導きそう。


「闘技場を破壊したり、観客を襲ったりする未来が見えるんですけど」

「えっと、弱いモンスターだけ出して、あとは警備を雇って……」

「スライムとかゴブリンの殴り合いなんて誰が見たいんですか。しかも混乱してまともに戦えないヤツらの」


 それならいっそ、人間とモンスターで戦わせたほうが面白そうだよ。倫理的にアウトな気がするけど。


「テイマーでも雇ったらいいんじゃない?」


 さすがシュリムさん。聞いたかチェロットさん? これが商売だぞ。


「都合よくテイマーが見つかるかどうかはさておいて、村長と相談してもよさそうですね。さすがシュリムさんです」

「こんな適当なアイデアで褒められてもねぇ」


 ドヤ顔で言われてもなぁ。本当に可愛いな、この人。

 撫でまわしたいけど、フレネーゾさんが怖いからやめておこう。今も鋭い視線を向けてきてるし。判定厳しっ!


「儲け話はその辺にして、フェーブルさんの試合を見に行きませんか?」


 会話についていけないからなのか、それとも他の子が褒められるのが悔しいからなのか、どっちかは知らないが話を打ち切ろうとする。ささやかな抵抗が可愛い。


「あの人平気で急所攻撃するから、あんまり見たくないんですよね」


 モンスター相手ならいいんだけど、人間相手だと見てられん。俺の場合は、例のドSパーティのトラウマがあるから尚更な。


「大会なら優秀な僧侶が手当してくれるから大丈夫ですよ」


 いや、そういう問題じゃないんだよ。すぐに治してもらえるとしても、痛いものは痛いじゃん。


「とにかく、こんな皮算用してる暇があったら試合の一つでも見て研鑽を……」

「シャグランさん、おはようございます。お話中にすみませんが、テイマーの冒険者さんがフリーでして……」


 皮が来たよ! すげえタイミングで!

 ……盗聴されてないよな?

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