第40話 受け皿
ほとんど半強制的に契約することになった召喚士さんだが、まあ性格は特に問題なし。ついでにいうと容姿も中々。
え? 今どうしてるって?
本契約して、村に移住させたよ? だって全然使えないんだもん。
召喚できるモンスターが弱いとかそういう次元ならまだいいんだけどさ、ただのモンスターなんだよ。敵を召喚するだけなんだよ。
スライム、バット、ゴブリン、ラマネットの四体からランダムに召喚するだけ。ちなみに出てくるモンスターの数もランダム。検証回数は少ないけど、今のところ一匹から三匹。確率は多分均等かな?
とりあえずウィークさんの特訓と金稼ぎに付き合ってもらってる。村の中にモンスターを出現させるのはいかがなものかって感じするけど、雑魚モンスターだから大丈夫だろう。
……あの人がレベル上がったらどうなるんだろう。エテファンとかも出るようになるのかな? 出てくる数も増えるのかな? っていうか、出せるモンスターを選べるようにならないのかな?
ある日急にとんでもないモンスターを出して、村が全壊とかしないよな?
「上手く運用すれば稼げそうなんだけどねぇ」
「シュリムさんならどうします? 俺は人工ダンジョンを作って人を呼び込もうかと思うんですけど」
「却下。ギルドもないのに誰が来るのよ? ドロップ品の換金のためだけに街に行かなきゃいけないなんて、非効率すぎるわ」
それはそうなんだけど、そんなに悪い案じゃなくない? そんな真っ向から否定しなくてもいいじゃん。
「ゴブリン固定で十体くらい出せるなら、種稼ぎに使えるんですけどねぇ」
「他の種を落とすモンスターを召喚できるようになるまで、待つしかないわよ。そんな日が来るかどうかは知らないけど」
ままならんなぁ。本当に惜しい子だ。上手く活かせば化けそうなのに。
「っていうか、本契約はやりすぎじゃないの? 適当に三ヶ月ぐらい使ってからギルドに返せば、スジを通せるでしょ」
「……ああいう行くあてのない人を受け入れていかないと、村の人口増えないだろうなって」
最低な考え方かもしれんけど、ぶっちゃけ顔と性格だけで契約したよ。美少女を移住させまくれば、自然と若者が増えるかなって。
「だったらあの子と合いそうな男の冒険者捕まえて結婚させましょうよ。将来的に人口増えるし、アンタの似非ハーレムが拡大する心配もなくなるわ」
俺よりも最低な考えじゃない? それ。あと、その心配は必要ないと思うよ。俺に惚れる要素ゼロだもん。初期メンバーは一緒に底辺地獄を潜り抜けたからまだわかるけど、あの子って数回初心者ダンジョンに潜ってさようならだもん。本契約しておきながら冒険に連れて行かないんだもん。
それにしても結婚相手かぁ。
「今更ですけど、なんていうかすみませんね」
「何がよ? ハーレム築いてること?」
「築いた覚えはありませんが違います」
『違わないわよ』というツッコミが聞こえた気がするけど、空耳だということにしておこう。疲れが溜まってるから、そういうこともあるさ、うん。
「俺の故郷の発展のために働かせて、本当に申し訳ないです。本当なら皆さんにもっと大金を分配できるはずなのに」
故郷に金を仕送りした後に分配だぜ? 勿論俺の取り分を一番少なめにしてるが、それでも不服だろ。俺だったら文句の一つや二つ言うだろう。
「アンタに出会わなきゃ契約者が現れず、今頃強制労働よ」
「そうですよ。私なんて一生、謎のバフもどきしか使えない僧侶モドキでしたよ」
それは元の運命が酷すぎるだけで、現状を容認する理由にはならないと思う。
でもここで食い下がっても、水掛け論だよな。本当に良い仲間を持ったよ。
「ほら、くだらないこと言ってないでさっさと寝るわよ。明日も早いんだから」
シュリムさんはサッパリしてるな、やっぱり。さっきからちょくちょくあくびしてたし、本当に眠たいだけかもしれないけど。
俺も寝るか。功績が認められて前よりマシな部屋を与えてもらったから、部屋に戻るのを躊躇う理由もないし。
「シャグランさん、また良い冒険者さんがいるんですけどぉ」
「あの、前回から一ヶ月も経ってないんですけど」
完全に味を占めてやがるぞ、この姉ちゃん。そうやって谷間見せたらなんでも言うこと聞くと思うなよ? こっちは一年ぐらい美少女達と一緒にいるから、今更そんな安い色仕掛けが効くかよ。第一、何が『また良い冒険者が』だよ。よく言えたな。
「まあまあ、そう言わず。ね?」
そうやって手を握れば言うことを聞くと思ってんのか? あんまり思い出したくないけど、俺はドSパーティの美女達と凄いことを……。
「なんと錬金術師です!」
いや、そんな衝撃の事実みたいな言い方されましてもね、ピンとこないんですよ。
一応聞いてみるか、二つほど。
「それは、何ができる職業なんですか?」
変わり種ばっかり寄こしてきおってからに。比較対象がいないから騙せるとでも、思ってるのか? どうせくだらない職業だよ。長く冒険者やってるけど、会ったことないもん。
完全に俺を受け皿だと思ってるよな。買い手のつかない派遣を買い取る業者だと思ってる節あるよな。強ち間違いじゃないんだけど。
「ドロップアイテムの合成ができます! これはレア職業ですよぉ」
そうやって顔を近づけたって、俺はなびかんぞ。ウィークさんなんて頬ずりしてくるんだからな。
「で、なんでそんな凄い人がフリーなんです?」
ここなんだよ。毎回ここで誤魔化してくるんだよ。ここが一番大事なのによ。
どうせ契約させられるから聞くだけ無駄な気もするけど、様式美ってヤツだな。どちらかと言えば、通過儀礼な気もするけど。
「ははは、何を疑っているのか知りませんが……」
言うに事欠いてなんてふてぶてしい前置きを……。突っ込むだけ無駄だから何も言わんけどさ。
「冒険者として付き合うより、顧客として付き合いたいって人が多いんですよ。言いづらいですが、彼の戦闘力はさほど高くありませんから」
ふむ……? なんというか、珍しくしっくりくる答えだな。
「要するに鍛冶屋とか薬師みたいなもんですか? 普通に商売してくれよって感じで契約してもらえないってことですか?」
別に彼らをパーティに入れる必要はないもんな。戦闘力があるなら話は別だけど。
鍛冶屋は上手く使えば現地で武器の修理とかできんのかな? いや、素材やら道具やら考慮したら、普通に予備の武器を持っていったほうが楽か?
「錬金術というのは大がかりな施設がないとできない代物なんですが、その子は十五歳にして最低限の設備だけで錬金術ができる天才です」
よくわからんけど、凄いな。大がかりな施設ってのがどんなもんかわからんし、最低限の設備ってのが最高にきな臭いけど。
その最低限の設備が俺らにとっては、大がかりな施設なんじゃないの? 今までの傾向からいって、信用できないな。
「まあ、男の子ですので、シャグランさんのお好みではないんでしょうけど」
十五歳の男かぁ……。男不足してるっていうか俺しかいないし、アリか? どうせ使い物にならないだろうけど、故郷に送ればいいや。土地も余ってるし。
「では前回と同じく、お話してから決めさせていただきます」
これも通過儀礼だ。よほど人間性に問題がない限り、採用するのは確定してるわけだし。っていうか、初対面って誰でも猫被るじゃん。だから面接なんて、ほとんど無意味なんだよな。
「ありがとうございます! あっ、念のため言っておきますけど……いわゆる男の娘ではありませんよ? 普通の男性でして……」
「俺をなんだと思ってるんですか……」
もしかして性獣だと思われてる? 別に好き好んで女性をかき集めてるわけじゃないからな? むしろ初めて派遣を雇う時『男の戦士がいいです』って言ったよな?
別にもういいけどな、周りからの評価なんて。
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