第32話
何とか宥めて話を聞き出したところによれば、レティシアは名高いロックハート公爵家の長女。今年で十七になる彼女はエドワードと歳が近く、ついでに家格も十分釣り合うとあって、昔から婚約者候補筆頭と目されてきたのだという。そしてそのプレッシャーは、来月に当人が成人を迎えるという今、最高潮に達していた。
でもエドワードは誰からも好かれるし、誰にでも優しいしで、全く選ばれる自信がなく。不安でたまらなかったそんなとき、とある筋から教わった『ものすごい的中率を誇る占い』に手を出してしまった、らしい。
「誰から聞いたんですか? それ」
「エルダーベリ伯爵のご子息です。とても親切な方で、以前からいろいろ相談に乗っていただいていて……」
「……ふ~~ん?」
とても親切、というワードに引っ掛かりを覚えて、首を傾げて反対側を見る。やはりとてつもなく微妙な顔をしている、副会長以下の男性陣がいた。
(怪しいですよね? それ)
(うん、ものすごく)
あっさり目で会話が成立する。でも関係者の前でそんなことは言えないので、別の質問をすることにした。
「あのう、ロビンさん。エルダーベリってなんか聞き覚えがあるんだけど、もしかして」
「はい、エルダーウッド侯爵家の分家筋に当たります。ご子息のアダム様は、エドワード様の従叔父という間柄でいらっしゃいますね」
「じゅうしゅくふ……あ、いとこ叔父のことか。おじいさんおばあさんの世代が兄弟姉妹なんですね」
「ご名答です。エドワード様の母方のご親戚でして」
二人っきりじゃなくなったせいか、また丁寧な口調に戻っていて、ほんのちょっぴり残念というか寂しい気分になった。今はひとまず横に置いておこう、そうしよう。
「周辺の事情はよく分かった。それで、その占いというのは?」
「はい。アダム様のお話では、簡易な結界を張った中に精霊を召喚して、気にかかっていることの先行きを訊ねる、というものでして……これをするときは魔力を多く使うので、出来れば三、四人ほど同志を集めたほうが精度が上がる、と」
きな臭いな、と思ったのはエレノアだけじゃなかったようで、直接質問したジャスティンが真っ先に顔をしかめた。ケイも同様だ。ロビンだけはほぼ表情を動かしていないが、口元にぐっと力が入ったのが分かった。そりゃそうだ、ここまでの経緯を考えれば、どう考えたってまともな占いではない。
と思ったら、実際にやってとんでもない目に遭った方も意見は同じだったらしい。さっきみたいに突然、わっと両手で顔を覆って半泣きの声で白状し始める。
「でも! いくら藁をも掴む思いだったとはいえ、信頼している方に勧められたとはいえ、アレは決して手を出してはいけないものでした!! 贄を用意して互いの血をインクに混ぜるなんて、占いというより降霊術の形式ですもの……!!」
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