第24話





 「……なるほど。大体のところは分かった、ご協力に感謝する」

 一方その頃。生徒会室でおおよその聞き取りが終わって、至極冷静に感謝をのべているジャスティンがいた。左目にした片眼鏡の位置を直しつつ、まだ緊張が抜けきらない客人にして功労者――いうまでもなくエレノアなわけだが、とにかくそちらを見やって続ける。

 「それにしてもずいぶんと博識だが、そんな知識をどこで?」

 「け、経験則です! わたしの周辺って従兄と世話役のメイドさん以外、あまり視える人がいないので!!」

 「なるほど、それは苦労を……不躾に申し訳ない」

 疑われないように間髪入れずそれっぽい理由を伝えると、即座に理解を示されてしまった。正直、律儀な人だなぁと良心が痛む。だがしかし、居合わせた八割が初対面というこの空間で、前世云々なんて話をはっきり口に出す勇気はない。ごめんなさい、この埋め合わせは何かで必ず……!

 「はい、お茶どうぞ」

 「あ、ありがとうございます!」

 「いえいえ、どーいたしまして。まあロビンには全然負けるけどな」

 良心の呵責に耐えていると、横手からすっとカップが差し出された。戻ってきてすぐにお茶の準備を整えてくれた、先ほどジャスティンからはケイと呼ばれていた男子生徒だ。垂れ目で愛嬌のある、黄玉の目を細めて楽しそうに言ってくる。

 「キャロル嬢が具合悪くて養生に行く、って聞いたときは心配したけど、良い友達が出来たみたいで良かった。会長も何気に妹大好きだからなー、突発事態とはいえ本人の顔見て確認できたのはツイてたんじゃない? 怪我の功名ってやつ?」

 「おい、その言い方はどうなんだ。少なくとも今朝の時点であいつは本気で怖がってたんだが」

 「命の危機、ってわけじゃなかっただろ」

 「それはまあそうだが」

 「第一、もし万が一にも物理的に命を狙われたとして、会長が本気出して吹っ飛ばせない相手って国内にいないでしょ」

 「……そうなんですか?」

 「うん、そうだよ? そもそも変身術自体がめちゃくちゃ難しくて、うちで三年間みっちり勉強してても、手のひらに乗るくらいの大きさのものを変身させるのが精いっぱいなんだよ。それが小型とはいえドラゴンなわけだから」

 「へええええ」

 分かりやすく説明してもらって、あのお兄さんてすごいんだ、と改めて感心する。見た目と言動はどちらかというとヘタレ気味だったのに、なんだか不思議というか。

 今朝がた初めて会ったキャロルの兄に思いを馳せていると、ここでケイが軽く手を打った。それを合図に話題を切り替えた、書記の腕章を身に着けている青年はテキパキと話を進めていく。

 「で、だ。報告書書くときに絶対聞かれるから、みんなで意見合わせときたいんだが――あの大量の憑き物、一体どこから入って来たと思う? エレノア嬢的にはどう?」



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