第22話 マジャリア危機②

大陸暦1568年9月17日 マジャリア王国北部


 マジャリア王国は北西にブラウアドラー、北にコサキア、東にダキア、そして南と西にダルマチアと、複数の国々に囲まれた位置にある内陸国である。故に平均標高は500メートルを超えており、山がちな地形は多くの大国から敬遠されてきていた。


 だがマジャリアとてその国土を無下に扱ってきたわけではない。例えば山々の地下深くには様々な鉱脈が存在し、それらを掘り起こして周辺国に売り捌く事で外貨を稼いでいた。さらにその外貨で大国の技術を買い、自国産業の発展に還元させてきていた。


 特にセヴェリアの土魔法と工業製品は、田畑や工業地帯を整備するのに必要な平地の開発に欠かせなかった。セヴェリアはマジャリアの開拓した土地で生産された農作物と工業地帯で利用可能な状態に加工された金属を必要としており、マジャリアもセヴェリアが最大の顧客であった。その関係性は親密そのものと言えよう。


 そのマジャリア北部に旧帝国の軍閥が攻め込んできたのは、9月の中旬を過ぎた頃の事だった。国境付近の城塞にて、見張りの兵士が叫ぶ。


「魔人が攻めてきたぞぉぉぉぉぉ!!!」


「撃て、迎え撃て!」


 命令一過、城壁上部に配置されているバリスタが弓矢を放ち始める。弓矢には術式で爆発効果を付与しており、風魔法による加速と貫通力の強化も施しているため、T-41軽戦車程度なら貫通するだけの威力を有していた。


 が、魔人達は魔法防壁で大抵の弓矢を弾き、バリスタからの射撃も回避。そして壁面に辿り着くと、一斉に攻撃魔法を叩き込んだ。


 閃光が走り、石積みの城壁がガラガラと音を立てて崩れていく。そうして侵入ルートを構築した魔人達は、迎撃のために出張ってきたマジャリア兵達に向けて、攻撃魔法を叩き込んでいく。


「マジャリアの山猿ども、吹き飛べ!」


 両手から幾つもの火球を放ち、兵士達を吹き飛ばしていく。中には小銃やら拳銃で武装した者もおり、射程距離の差を活かして一方的に撃ち殺していく。


「くそ、魔人どもめ!」


「退くな、退いたら家族が皆殺しにされるぞ!マジャリアの騎士達よ、王冠に魂を捧げよ!」

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