僕は君の前で倒れるという醜態を晒す。

 この子に背を向け、歩き出そうとする。胸が締めつけられる気がして、このままここにいたら……


気がついたら僕は仰向けに倒れていた。意識が朦朧とする。何、も考えられない……


 結局僕はそのまま意識を失ってしまった。


 この子に醜態を晒してしまった、みたいだ。


 ※ ※ ※

 目が覚めると、僕は病院のベッドに横たわっていた。左腕には点滴が繋がれていて、自身が今おかれた状況が一瞬で理解出来た。

ギリギリまでこうはなりたくなかったんだけどな……


 しばらくすると、さっきまでの格好をした後輩と医師が病室に入ってきた。医師の表情を見るに、良い話は絶対にされないと分かってしまう。

「……君の余命は長くない。それは君がもっとも理解しているはずだ。こうなった、ということはそういう段階になったという事だ」

「………はい」

「この子が君が倒れてからもずっと付き添ってくれていた。礼を言うといい」

医師は後輩の肩を優しく叩き、病室から出て行った。



「全て、聞きました」後輩が口を開く。

「そうか」

「だからあの時、病院にいたんですね。診てもらわなきゃ……」

「そうだ。迷惑をかけた。すまなかったな」

後輩はゆっくり首を横に振った。


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