なぜ名前を教えてくれないのか。
同じ日の夕方、再びあの子に遭遇してしまった。場所は家の近所のコンビニ。今日のお風呂上がりに食べようと思ってアイスを吟味していた時だった。
「アイス、今日も買いますか?」
後ろから声が響いた。顔を上げ、声のした方を向く。アイスを選んでいた時に感じたウキウキがすーっと引いていくのを感じた。オーマイガー、これはデジャブかよ……
声の主やっぱり朝も会った毎度毎度の女の子だった。横に来てアイスケースを覗き込んでいる。
やっぱりこの子は、かわいい。
つい視線を逸らして「ぎ、吟味中」と口にする。そんなことより君の名前は?早く聞きたい。通報と興味のために。
「やっぱりここに来ますよね。そんなにこの場所が好きならバイトしちゃえばいいのに」
「う、ん?確かに。考えておこうかな」後日調べてわかったことだけど、あいにくここはバイトの募集はしてないようだった。
「先輩がいるなら毎日来ますから、ここ。」
「あ、あぁ。そう」
なぜか呆気に取られてしまった。気をしっかりもて僕よ。で、この女の子は一体なんなんだ?
「この子はなんなんだ?って顔、相変わらずしてますね。先輩」
「ああ。また図星か」そんなにわかりやすいか?僕は。
「私はただの後輩ですよ」
「そうなのか。……じゃなくて、君の名は?」やっと聞けた。
「名前、名前は……」
「答えてもらわないと困る。こちらにも事情があるのだよ」
「な、ま、まぁ今日は教える気がないから帰ります。ではまたです!」
そう言ってばいばい、と手を振って後輩は離れていった。
「そんなに名前言うのが嫌だとはな」
名前さえわかれば、先生に通報できるのに。
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