君が人気ものだと初めて知った。

 コンビニを出て歩くこと20分ほどで僕の通う学校に着いた。着いて早々目の前に広がる光景に少し苦笑いを浮かべてしまった。

 昇降口付近に人だかりができていて、なかなか中に入れそうにないからだ。軽く50人以上はいるだろうか。黄色い声や口笛なんかが聞こえる。

もしかしたらこの学校にアイドルでもきたのかもしれない。なんて考えても見たけど、違った。


 朝会ったあの後輩ちゃんが、長身のイケメンに告白されていた。

「やっぱりその、かっこいい僕が隣にいるだけで〇〇ちゃんはもっと輝いて見えると思うのさ!」などと口説かれている。声でかいな。この人。

自分に自信があるのは、いいことだけどさ。

 人だかりをなんとか避けて下駄箱を開ける。上履き的なサンダルを出して、靴を入れて下駄箱をしめる。こうも大変だと感じるのは一生ないだろうな。


 人の間をすり抜けて、この人だかりを脱出しようと動く。その途中、後輩ちゃんの言葉を聞くことができた。

彼女が喋りだした瞬間、みんな口を閉じたのには少し驚いた。


「ごめんなさい。他に好きな人がいるので」

「そ、それは誰だ!?」イケメンがまた大きな声で尋ねる。周りも当然また騒がしくなる。


「多分、みんな誰も知らない。儚くて美しいあの人を」

その後輩の言葉を聞いたと同時に、僕は囲みを抜けることができた。場はまた静寂に支配されている。


あぁ、あのイケメンが後輩ちゃんの名前を言っていた気がするけど、よく聞き取れなかった。


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