第13話 現状報告

後日。お礼を言いにカエデの店に行くと留守だった。中に手紙が残されていたので読んでみると、


『レオへ。

無事ルイは助けられたか?

実を言うとお前が心配でな。途中からアイシャが尾行してたんだ。そしたらトラップとか使って勝ったって聞いて驚いたよ。

でもそれとは別でルイを助けられたにせよ、助けられなかったにせよ俺達の居場所がバレてしまう可能性があるんでとんずらさせてもらう。

またいつか合う日まで元気に生きてロー。

そん時に借りは返してもらう。楽しみにしてるよ。

             カエデ』


手紙を見て呆然とした。今までの行動から只者ではないとわかっていたものの、まさかいなくなるとは思っていなかった。それにこのきやすさ…


「…帰るか」


俺は衝撃を受けながら店を出た。


——————————


「ただいまー」


宿に帰るとルイが部屋に座っていた。


「お帰り。…こっちに座れ話すことがある。」

「お…おぅ」


昨日の一件からルイは暗殺部隊から抜けたものの、今までの生活と何ら変わりない様子に少し戸惑う。

前までも知るまで暗殺部隊とは関わってこなかったから当然のことだ。と言われたらそう思う。


「あの店にいた3人組と何をしていたんだ」

「いや…普通に仕事の話だけど。ルイにも言った奴らだよ」

「いや…あいつ等の正体知っているのか」


ルイが頭をかく。耳についた十字のピアスが揺れる。


「あいつ等は一級犯罪者。反乱を企てようとする少数精鋭のいわば反乱分子だ。」

「はぁぁぁー!!!??」


この大陸には犯罪者と呼ばれる者がいる。

犯罪者は階級に分けられ、下から五級から一級に認定され、国を滅ぼしかねないと判断されたものには超級が該当する。

一級となれば超級がいない現在、国が最優先で処刑する対象だ。


「はっ…えぇえええ!!」


驚きを隠しきれず、立ち上がって叫ぶ。

ルイは呆れと怒りの顔をしている。


「やっぱ気づいてなかったのか…だが、まだ驚くことはあるぞ」

「なっ…なんだよ…」

「俺も今、一級犯罪者だ。」

「うそだろおおぉぉぉ!!!」


もう言い表せないくらい驚いている。先程の手紙と相まって驚き疲れ始めている。


「俺はもともと暗殺部隊の小隊長だ。諜報やスパイもしていたし、国の内部情報も知ってる。そんな俺が抜けたんだ当然だろ…知らずに俺を引き抜いたんだぞ、お前」

「小隊長ってそんな偉いのー…?」


やっとことの重大さに気づき、恐る恐る質問する。


「そうだな。この国には部隊が何個かあって、

主な裏の仕事を取り仕切ってたのが暗殺部隊。部隊の構成は一般隊員、小隊長が三人、中隊長兼暗殺部隊の責任者が一人、そして命令を下すのが王とその補佐。部隊の中なら二番目に偉い立場だな」

「それってかなりまずいよな!?」

「そうだな今頃大騒ぎだろう。俺の脱退の手助けをしたとしてお前も3級犯罪者位にはなるんじゃないか?」

「まじかぁ…」


一周回って落ち着きを取り戻し、椅子に座り直す。


「それにしても…カエデたちってそんな大物だったんだな。隠れ家みたいなことに店があったり、ルイの情報といい、ちょっと変だとは思ったけど流石にそこまでじゃないって思ってたぜ…」

「お前の思考回路おかしいだろ。なるほどそうか。お前があそこに待ち伏せできたのはアイツラのおかげか。流石に一級は違うな…これからいい関係築かないとな」


何かに引っかかるような発言だった。


「いい関係…?仲良くしてた俺が言うのも何だがあいつ等は犯罪者だぞ?」

「何いってんだ。俺らはもうこの国からの抹殺対象だぞ。犯罪者は犯罪者同士やっていかないとやってられない。まだ状況理解してないのか?」

「えっ…あっ…」


俺はルイの言葉を聞いて失神した。


—————————

「レオ驚いてるかなー」


王都を出たカエデたちは次の街に向けて歩いていた。道の途中でカエデとツキが会話をしている。

アイシャさんも後ろからついてきていた。


「驚いてるだろうな。色んな意味で。今頃ルイに正体バラされてんだろうな」

「………」(アイシャ)

「レオには悪い子としたなー絶対あの『無情の悪魔』を引き抜く意味わかってないだろ」

「『無情の悪魔』か…まさかレオがあんな奴らの世話になってるとは…」


『無情の悪魔』とはルイにつけられた名前で特に暗殺部隊で殺しの仕事を多く受け持っていたルイは感情がない化け物だと噂され、最終的にこの名前がついた。

といってもこの名前が使われているのは犯罪者の者たちだけだ。


「なにはともあれこれで晴れて二人共犯罪者の一員だな!戦力が増えた。嬉しいことだ」

「ホント同情するぜ。お前の計画に巻き込まれちまったあいつらにはよ」

「まぁ、そのためにレオに借りを作ったんだしな」


カエデは暗い笑顔を浮かべる。


「二人にはこれから役に立ってもらう。これからが楽しみだな!」


三人はまたどこかの街に向かっていった。








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