第11話 助けに

「この国に仇なす者は抹殺する。大人しくその首を差し出すことをおすすめしよう」


ルイはそう言って胸にバッチを付ける。

バッチに光が反射し、きれいに光る。

花のようなシルエット。漆黒の色。

高価に作られていてもルイの目から察するに、思い入れのないものだということは理解できる。


「あれは暗殺部隊隊長クラスを表すバッチだ。王都に住んでるやつならこれに逆らえない」

「…おいルイが暗殺部隊だとしても俺達が襲われる理由は何だよ?」

「…ぐっ。お前と話している暇は…無いようだ。

早く逃げろ」


ツキが立ち上がり、俺を後ろに下げる。


「ツキ。こいつは強敵だ。お前も下がってろ」

「カエデ。今は誰もてめぇを守れないんだぞ」


強敵を前にし、口論を始める。

カエデは聞く耳を持たず、カウンターの下から武器を取り出す。小さな短剣が一本。

ツキはそれを止めようとする。


「どうやら首を差し出す気は無いようだ」

「こい。遊んでやる」


ルイがカエデに向かって走り込む。

ルイはカエデに攻撃を繰り出す。

カエデはそれを防ごうとする。

ツキはカエデの前に立ち塞がる。

各々が目的の違う行動を実行する。

そこに異物がまじりこむ。


「…!?」


突如後ろから刀を振り下ろされる。

迅速な判断でルイは横に回避をする。


「チッ…」

「…カエデこの人は誰?」


ルイは異物に視線を向ける。

見回りから帰ってきたアイシャさんだ。


「敵だ。殺していいぞ」


アイシャさんはカエデに確認し、ルイに視線を向ける。両者の視線が合い、殺気が入り交じる。


「流石に分が悪いな…また殺しにくる。今度は暗殺でな」


ルイは素早く店から脱出した。


「「「「………」」」」


店にはうって変わり、沈黙が続く。

今の短時間でいろんなことが起こりすぎた。

平凡な店で働いているはずの三人は冷静な判断と対応でこの場を切り抜けた。

ルイは『国に仇なす者』と発言した。

とうのルイは暗殺部隊に所属していた。


「レオ。お前はここにかくまう。いつあいつが来るかわからないからな」

「ついてこい部屋を案内する」


俺は黙ってツキについていく。

案内された部屋のベットに座り、考え込む。


…ルイがなにか隠してたことは知ってた。

一度仕事が気になってつけたことはあったが、別に言いたくないのなら問い詰めないようにしようと思っていた。

あいつは優しいやつだって思っていたから。

でも、その隠していたことがあんなことだった。

ツキから聞いた話が本当なら国に反逆を起こした人物を消していたんだ。

あいつは俺がこの状況に納得していないことくらい知っていたはず。にも関わらず、殺しを続けていたなんて…許せない。


歯を食いしばる。

俺は部屋から出てカエデたちのもとへ向かう。


「カエデ。協力してくれ」

「…お前はやらなくていい。ここで隠れてろ」

「ちげぇよ。俺はルイを助ける」


カエデが不思議そうな顔をする。


「俺はルイを暗殺部隊から引き抜く!」

「「はぁ!?」」


カエデとツキが声を合わせて驚く。

アイシャさんはこちらを睨みつける。


「あいつはきっと理由があってあそこにいるんだ。

カエデ。お前が言ったことだ。あいつはこの国のために考えて、悩んでる」

「そこじゃないだろ!考えがずれてる。あいつは今俺達を殺しにくるって宣言した。覚悟を持ってる。話にもならないだろ!」


俺は腰に手を当て、自信アリげに言う。


「いや。なるね」

「だからなんでだよっ!」

「…俺は英雄になるすごい人間だからだ!」


三人が沈黙する。


半目でこちらを呆れたように見た。

今度は納得してくれたようだ。


「それで協力してほしいことなんだけど、ルイに合わせてくれるところまででいいんだ。どうにかできないか?」


この要求が難しいってことが自分でもわかってる。でも俺は一人じゃ何もできないから周りの人に頼むしかない。


「そんなこと一般人の俺達にできるわけ無いだろ」

「いやお前ら一般人じゃないだろ。ルイも国に仇なす反逆者ーとか言ってたよな?」


ツキとカエデは目をそらす。

やっぱこいつ等も俺になんか隠してんだな。


「カエデ。レオは敵…?」


アイシャさんが刀を構えながらカエデに問いかける。


「いやいや!!!待ってくれ!他の奴らに言うことはしないから!」

「信じられない。ここで口封じするべき」


やばいやばい確かに信用できないよな。

友達暗殺部隊だったし、連れてきちゃったし。

でもここで殺されるとルイを助けらんねぇ!

HELPカエデ!

俺はカエデに助けてと視線で訴える。

カエデはため息を付いてしょうがねぇなと言わんばかりにアイシャの前に立つ。


「まてアイシャ。レオを今殺すのは得策じゃない」

「…わかった」


アイシャさんはそう言って刀をしまう。

助かった!


「レオ。俺達はたしかに一般人じゃない。ここで言いふらされても困る。だから協力してあげよう」

「できんのか?」

「できる。だが、この借りはいつか返してもらうぞ?」


カエデはからかうようにニヤつく。

なんだか前はムカついていたのにいまは頼りになる顔だな。


「じゃあ頼んだ」


俺は店を後にし、一人で街なかに出た。


向かった先はゴルドさんがいる特訓場だ。


「ゴルドさん!」

「おお。レオか!どうした?特訓か?」

「はい。俺にトラップを教えてください。」


俺の対話するための作戦。それはとらっぷにはめることだ。

前に戦術を学べる本で見たことがあったからな。


戦闘は強さだけで決まるだけではない。

情報や戦術、発想、状況、運にも左右される。

実際に使われた戦術には、敵をおびき寄せ、罠にはめることで戦力差を覆した例もある。

また、幸運にも雨が振り、能力を駆使して勝利したものもいた。

最初に覚えるべきは『トラップ』だと言えるだろう。

『トラップ』のメリットは簡単なものであればすぐに仕掛けられるという点。

デメリットと言うのならばもしはめるのに失敗すればなにか防ぐ手段を持っていない限り反撃を受けることだろう。


このときの俺はトラップカッケーくらいにしか思っていなくてここまでしか読んでいなかったな。


「ほう。トラップか何かで使うのか?」

「…はい。ルイに使います」


ゴルドさんはルイの恩人だと聞いている。

ルイのことについては秘密にしないほうがいいだろう。


「そうか。ついにバレちまったか」


ゴルドさんはうつむき、悲しそうに言った。


「オメェはルイを殺すのか?」

「いいえ。俺はルイを助けに行きます」

「…あいつはいい友達を持ったな。どうかルイを助けてやってくれ。頼んだぞ」


ゴルドさんは俺にすぐに覚えられる簡単なトラップを教えてくれた。

俺は覚えたトラップを持っていき、カエデたちのもとに戻る。


































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