第9話 ルイの正体
今日はついにカエデたちの仕事場に行く日。
なのだが。
「すまん。ほんとに少しだけ仕事が入ったんだ。すぐ合流する」
といって、ルイは仕事に行ってしまった。
今日開けとけって言ってたのに…
そう考えていると窓の外にツキが立っているのがみえた。きたきた!
部屋を出てツキの方へ走る。
「ツキー!4日ぶりだな」
「おう、レオ。おい?ルイってやつが来るんじゃなかったのか?」
「あー…それな」
俺は事情を説明した。
「そうか。すぐ帰って来るなら、俺がもう一度ここに来る。それでいいだろ」
「ほんと助かる」
優しいやつで良かった。後でルイとお礼を言おう。
トラブルはあったが、俺達は店に向かって歩き始める。
「あれ。お前額にそんな傷あったっけ?」
「ん?あーこれか?これはなぁ。あのー酔っ払っちまってよぉ。壁にぶつかって切れちまったんだ」
かなり大きな切り傷のようだった。
ナイフに切られたようにきれいな直線。
本当に壁にぶつかっただけでできるのか?
「それが本当だとしたら酒癖わるすぎるな」
「そうだろ?」
酒癖でこんなになるなら俺も気をつけるか。
お金がないから飲めないけど。
今度はすぐに路地裏の道までついた。もう帰りも合わせて3度目だからな。道は覚えた。
これからは一人で来れるようにしないとな。
そして迷路のような細い道をくぐり、店に到着する。
「連れてきたぞ」
ガシャン。ドアが閉まる。
またおもそうな音。やっぱ鉄か?
俺は前のようにカウンターに座る。
「レオ。友達はどうした?断られちまったか?」
「いや、少し仕事が入ったそうだ。すぐ戻るらしいからな。もう一回行ってくる」
そう言ってツキはもう一度店を出た。
カエデと二人になった店内を見回す。
「そういえばアイシャさんは今日いないのか?」
前にも距離を感じて近づきづらい感じはあったが、これからお世話になるかもしれないし、仲良くなりたい。
今のうちに話しておきたいんだが…
「あー今日はあたりを見回ってんだ。なんだ。気があるのか?」
カエデがニヤつく。
ムカつく…だが否定はしない。
「最近物騒だから、ちょっと調べてもらってるんだ」
「そうなのか?」
チラシはチラチラ確認しているが初耳だった。
普通に一人で歩いてたぞ。
「知らないのか。なんでも立て続けに人が消されてるらしい。
普段なら見かけることはないが疾走する人が多すぎて目撃談もある」
「それアイシャさん危なくないか?」
「いや大丈夫。護身用は覚えてるから。あー見えても無抵抗なツキを投げ飛ばすくらいの力はあるんだぞ」
カエデは自慢げに言う。
おっかない。
あの見た目でそんなに力があるのか。
これは怒らせないようにしないと投げ飛ばされちまうな。
「この街の人はみんな強いんだなー剣振り回してきたり、尾行に気づけたり…見た目に反してすげぇ力を持ってたり…」
「はは…………尾行に気づける?」
カエデの顔が暗くなる。
またまずいことでも言ったのか…
「そうなんだよ。まえにルイの仕事を探ろうと後を付けてたら気づかれてなー。『鍛えれば誰でもできる』なんて言ってたぞ」
「…おいそのルイってやつ…もしかして…」
ガシャン!
俺のすぐ横に何かが飛んでくる。
それは…ツキだった。
「!?ツキ!大丈夫か!」
慌てて駆け寄る。
何があったんだ。巨体なはずのツキが飛んできた。
体には多数の殴られた跡に切り傷。額と…同じような。
とにかく治療だ。
「カエデ!治療できるものはあるか!」
カエデを見るとツキを見ておらず、入口のドアをじっと見ていた。
ツキが飛んできた方向だ。
俺もすかさず目線をやる。そこには衝撃的な光景があった。
「…え。ルイ…?」
手にはナイフを持っている。
そのナイフにはツキの血もついていた。
「何してんだよ!ルイ!」
俺は叫ぶ。まだ状況がよく理解できていない。
どうしてルイがツキに攻撃してんだ…?
「……お前こそ何をしてるんだ。どうしてこいつ等と一緒にいる」
「こいつら…?カエデたちのことか?」
ルイの声は今まで聞いたことがないほど暗い。
そして殺気が入り混じっている。
「レオ。お前はこいつの正体を知っていたのか」
カエデが問いかける。
「知らない…正体ってなんだよ」
「…こいつは…王直属の暗殺部隊だ」
店には殺気が充満していた。
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