第7話 今度はストーカーになりました。

「それにしてもレオ。お前この国のことも全然知らねぇのにどうやって生活してきてんだ?」


話を黙って聞いていたツキが質問してくる。


「あぁ。それはルイってやつが助けてくれたんだよ。優しいやつでなー。見ず知らずの俺を助けてくれたんだよ」

「へぇーそんないいやつがいたのか」


カエデが感心する。


「いやほんとに!故郷から出て道も全くわからなくてよぉーお金も仕事も知識もないし、恩人過ぎて頭が上がらねぇんだ。だけど…」

「「…?」」

「今少し喧嘩しちまって」

「なるほどな。どうせお前変に首突っ込んだろ」


あって間もないのに言い当てられた。

そんなに俺ってわかりやすいか?


「…そうなんだけど、俺もカッてなっちまってお前これでいいのかって怒鳴っちまったんだよ。

そしたらあいつも色々考え込んでいたらしくて怒っちまってな。お前に何がわかるんだって。

考えれば何も知らない俺なんかが知ったような口を聞いちまって怒るのも当然だよな」


場の空気が少し暗くなる。


「いいや。お前は正しいよ。お前の友達…ルイってやつも。そいつも何か考えてたってことは国のためにできることを考えて悩んでたってことだ。

優しいやつだよ」


カエデは優しい口調でいった。

なんだか初めて俺の話をわかってくれていたような気がして嬉しかった。


「じゃあそいつも今度連れてきてくれよ。

悩み事も聞きたいしな」

「ありがとう」


ルイもここに連れてきたら本音が聞けるかもしれない。4日後が楽しみだな。


「じゃあ今日はもう暗くなり始めるしそろそろ帰ったほうがいい。ツキに送ってもらえ」


時間が立つのが早いな。もうすっかり夕方だ。


「わかった。じゃあまた4日後」


俺はツキに送ってもらって宿屋に帰ってきた。

少し気まずかったが、今日の話をルイに聞かせようと部屋を除いた。するとルイはちょうど仕事から帰ってきたところだった。


「お、お帰りルイ」


恐る恐る声を掛ける。


「ああ。今帰った。それと今日はすまなかった」


予想していなかった反応に少し驚く。

もう最悪口を利いてもらえないんじゃないかって内心焦っていた。


「いや俺こそ何も知らないのに知ったような口を利いて済まなかった」

「いや。大丈夫」


これで仲直り。

意外とあっさりしていたが、もとの関係に戻れそうで良かった。

あっそれと仕事の話もしないとな。


「それとルイ、俺いい仕事見つけたんだよ」

「…お前がか?…良かったな」


なんで不思議そうにするんだよ。


「でも、少し話をしていいやつだってことがわかったんだが、どうも仕事内容が良すぎるんだよ」


本当にカエデもツキも、あの後から出てきたアイシャって人はわからないけどいい奴だったんだよな。

あの仕事はいいことばかりなんだが、


「あんま客が来ないからって2日に一回4時間でいいらしいし、給料は普通の仕事ぐらいに高い。それと店の場所が路地裏の奥」

「…怪しいな」


わかる。めっちゃ怪しいよな。


「それで考える時間をくれて4日後にこれとルイを迎えに来てくれるらしい。もう一回あって答えを聞かせてくれだってさ」

「俺もか?」

「ああ。俺一人じゃよくわからないし、ついてきてくれると助かるよ」


ルイの悩み事の詳細も聞きたいしな。

ちょっと騙すみたいになっていなくもないが、嘘はいっていないからセーフだろう…


「わかった。俺も行く」

「うしっ決まりな!」


事情も話したし、仲直りもしたし、あとは4日待つだけ!

楽しみだな。


次の日。

ルイは「今日も仕事があるから」と言って早々に部屋を出ていった。いつも同じ服装で代わり映えがない。


「俺は暇だなぁ…」


そういえば、ルイってなんの仕事をしているんだ?

いつも仕事の話はしないし…どうせあと3日は暇だしな。ふふふ…

…少しつけてみよう。

そう悪い考えをした俺は急いで身支度をし、ルイの後をつけた。


「おっ、いたいた」

やっとルイに追いつき、人影に隠れながら様子を観察する。ルイはだいたい同じ方向に歩いて行くのを宿屋の窓から何回か見たので追いつくのは簡単だった。

ゆっくり歩いていくルイは傍にあったパン屋に入る。

あそこが仕事場か?

しばらくすると紙袋を持って出てきた。

どうやら違うみたいだ。すぐにパンを食べているし、朝ご飯か。…美味しそうだな。

あれっ今度は路地裏に入ったぞ。

さてはあいつもカエデみたいな店で働いてんのか?

俺はルイが路地裏に入った少しした後に入る。

…?一本道の路地裏だ。そしてすぐに行き止まり。

ルイの姿は…ない。


「どこに行ったんだ?」


そうつぶやくと背筋が凍るように冷たくなった。

間違いない…これは受けたことがある。

殺気だ。


「後ろっ…!」


殺気に気づき、後ろを振り向いた一瞬、俺のこめかみに一本のナイフが突きつけられる。


「ちょっ…!待て!」

「…レオ?」


上から降ってきたレオはどうやら気づいてくれたみたいだ。


「………なにしてんだ」

「あっ」


やばい。ばれた。

これはもう…謝るか。


「ほんとにごめんなさい。つい出来心でルイの仕事が気になってしまい」

「……おまえ。尾行されてたら警戒するだろ。どうして誤解を招くことをするんだよ。…バカなのか?」


ルイは不機嫌そうに言う。

…またバカだ。

こういう言葉が出てくるときはだいたい俺がやらかしたときだ。素直に反省はしてる。それにしても尾行してるのわかったってすごいな。それにナイフを寸止めできたことも。


「もしかしてお前って能力?みたいの持ってるのか?」

「…!…持ってない」


今完全に動揺したよな。

嘘が下手なのか?わかりやすい。


「じゃあ『尾行に気づくことができる能力』か!」

「そんなわけ無いだろ。これは鍛えれば誰でもできる」


今度はきっぱりと即答される。

本でしか見たことないけど能力ってのは神に与えられてるらしいからな。もっとすごい感じなんだろう。

…俺は神なんて信じてないから才能って勝手に思っているけれど。


「とりあえず、今すぐ帰れ」

「えっ。仕事みたいなぁーなんて…」

「帰れ」

「はい」


ルイはとても怒っているようだ。


















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