第4話 素晴らしい世界

「お前はここで殺してやろう。」


男はそう言って近づいてきた。


「!?おい待てどうゆうことだ」

「かわいそうになぁ…お前が出しゃばったからいけないんだぞ」


何だこいつ。話が通じない。

だが剣を抜いたときに少女の髪から手を離した。

少女は怖いからかその場から動かない。

結果オーライ…か?


それにしてもこいつは何なんだ。普通質問しただけで殺しにかかるかよ?

そんな考え事をしていると男は切りかかってきた。


「あぶねっ」


そう言って着地する。

剣を見たのも向けられたのも初めてだったが体は無意識に動いた。

昔から運動神経は良かったんだよな。

飛んで避けた俺を見つめながら男が提案する。


「あーただ殺すのはつまらないなー……そうだ。

いまここで土下座して許しを請えば許してやる。」


どうゆう神経してんだ。今殺しにかかったよな?

するわけねぇ。それに…


「あんな可愛い女の子を泣かせるやつに下げる頭は持ち合わせてねぇ。」

「……………おまえ…本当に正気か?この俺様を怒らせるなんてよぉ…」


男はゆらゆらと体を揺らし始めた。いつ殺しにかかってきても不思議じゃないほど表情は深刻だ。

先ほどとは違い目に異様に怖さを感じる。

これが殺気ってやつか。


かなりやばい雰囲気を出しているが、とゆうか少し恐怖を覚えるが、こんなクソ野郎一人のせないで何が英雄だって話だわな。

展開が早すぎる気がするがやってやる…


「これで死ねやぁ!」


俺は拳を構えた。

すると…


「まて!」


聞き覚えのある声。そいつは俺の前に立ち、俺に向かって振り下ろされた剣を止める。

このこえは…


「ルイ?なんでここに、」

「なんでここに、じゃねぇだろ!何やってんだ!」


振り向いて飛んできたのは罵倒だった。

状況がわからないから当然かも知れないがここは心配をする流れだと思っていた。なんか悲しい。

男は怒りの表情でルイの前に立つ。


「おい。そいつは俺の獲物だ。よこせ」

俺を見て睨みつける。

「すまん。今日は俺の顔に免じてこいつのことは許してくれないか?」


ルイは何かを相手に見せる。

ちょうど自分からは背中で見えない。だがその瞬間男に怒りの表情は消えた。よく見えないが少し恐怖を感じているようにも見える。


「チッしょうがねぇな、」


俺達を諦め、どこかに去っていった。

すぐに去っていったな。何だったんだ。

危険から逃れた俺は迷わず少女の前に走り、座り込んだ。

ボロボロの服。怯えた目。傷だらけの肌。

何があったのか聞かなければ気がすまない。


「なぁ、おま…

「ありがとうお兄ちゃん!じゃあもう大丈夫だから!ばいばい!」


俺の言葉を遮るように叫んで少女は走って逃げていってしまった。追いかけようとしたが何故か俺から逃げているような少女を見ていたら足が動かなかった。

ルイは俺の様子を無表情に見ているだけだった。いつもと変わらないルイの顔もなんだか少し怖く見えた。


「お前あの子供を助けようとしていたのか。」

ルイは真剣な顔をした。

「そうだ。あの男が女の子の髪を掴んでいじめていた。だから助けようとした。」


事実を述べる。反対にルイの表情がことの深刻さを理解させてくる。何がいけなかったんだ。俺は当然のことをしただけなのに。


「ふざけるなレオ。お前メルガピアを知っているのか?」

「どうゆうことだ?」


質問するとルイは説明を始める。


「メルガピアは人間界の中心。そして世界で一番発展した街だと言われている。

だが、それと同時に闇が深い街だ。奴隷が街の路地裏にうろつき、好き勝手に扱われている。

他にもメルガピアは裏でドス黒いことを平気でしている。こんなのは日常だ。

市民は平和のためでは仕方がないと目を瞑っている。」


俺は驚きを隠せなかった。

俺が小さい頃から読んできた本にはメルガピアは素晴らしい街だって書いてあった。

才能ある者が、英雄が、集まる街だって。


「なんだよ…それ…こんなの変だ。」


……おれの中で何かが崩れ落ちる音がした。




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