完全犯罪
5.完全犯罪
新木田はいつものバーに居た、しかし今回の相手は二階ではなく、二階のライバルである箱根だった、箱根はXカンパニーで二階の同期であり、新木田とは同い年になる。
今回はその箱根とインサイダー取引の件で話すため、バーに訪れた。
「お待たせしました、新木田さん」
「こんばんは、箱根さん、この間はお世話になりました」
「いえいえ、私の方も世話になりました、あなたが二階のことを密告してくれたおかげで我が社はどうにか助かりました」
日本トランジスタ社が部品の発表をした当日、新木田は箱根と面会し、二階がインサイダー取引を下請け企業と手を組んで行っていることを告げていた。
そして箱根はそのことを通報、近藤達は調査を進めたところ、二階自身もこのインサイダー取引を行っていたとして逮捕された。
部長である二階が捕まり、Xカンパニーは一度株価をかなり下げたものの、謝罪会見にて今回は二階の独断であり、Xカンパニーは何も関わっていないことを発表すると、株価は前より少し下がったが、ほとんど元に戻った。
「箱根さん、あれからどうなりました?」
「あの後二階が部長を失脚し、私が部長の座につきました、決して蹴落とすつもりで通報したわけではないのですが、棚からぼたもちというやつです」
新木田は箱根が二階とライバル関係であり、部長の座を狙っているということで密告したので、蹴落とすつもりでやっていることを知っていたため、腹黒い人だなと思った。
「それは複雑ですね、それでは箱根さんが今後下請け企業を担当するということですか?」
「ええ、そういうことになります」
ここまでは新木田の予想通りだった、二階に話を持ちかけられてから、新木田は策を考えていた。
二階の話に乗れば、今後二階に弱みを可能性があったので、新木田は策には乗らず、逆に密告することにした。
密告すればXカンパニーの株価は下がるがあの会社のことだ、すぐに対処するはず、その上二階の独断であったことが分かれば会社自体の株価はすぐに元通りになる、そう考えた新木田は株価が暴落したタイミングで株をたくさん購入し、戻ったタイミングで売却した。
インサイダー取引のことは二階は誰にも話してはいない、そして箱根に恩を売ることができて一石二鳥となった。
「箱根さん、二階のことは残念でしたが、これからも弊社は御社と取引をしていきたいと思っています」
「もちろんです、今回の件でお世話になったわけですし、これからもよろしくお願いします」
箱根がそう言うと、新木田は微笑みながら答えた。
「ええ、こちらこそよろしくお願いします」
新木田は心の中でドス黒い悪魔の笑みを浮かべていた。
犯罪投資家 @laptop
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます