第13話 第6部 狩猟シーズン編 6
ここまでのあらすじ
結局、加奈は雑魚の女悪鬼を殺す事は出来ず、現場の痕跡を消すためにやって来た岩井テレサの処理班に雑魚女悪鬼は保護された。
雑魚女悪鬼は岩井テレサの施設に収容され、精神のケアを受けて社会復帰を目指す事になった。
珍しいケースではあるが全く無い事でもないらしい。
加奈は雑魚女悪鬼の言葉に自分の人生が重なり、雑魚女悪鬼がただの討伐対象でなく被害者としての『人間』として見たのであろう。
そして、見事に合体して攻撃してきたつがいの悪鬼。
あんなに見事に合体した奴は初めて見たと明石も喜朗おじも四郎も口を揃えて言った。
今後もっと奇妙な奴が現れないとも限らないから油断しない様にと彩斗達に言った。
つがいの悪鬼は被害者からかなり財産を奪って蓄財に励んだらしくその資産もかなりあったそうで処理班の作業も時間が掛かっていた。
彩斗達は処理班のバスで作業が終わるのを待っていた。
以下本文
処理班の若い女性がバスに入って来た。
「ワイバーンの皆さんお疲れ様です。
今回の報酬です。
分配はお任せしますよ。
リーダーの方はこの書類にサインをしてください。」
そう言って処理班の女性が分厚い封筒と書類を出した。
俺がサインする間、封筒の中身を覗いたジンコが目を見開いて真鈴に囁いている。
「ちょっと真鈴お金貰えるの?
しかもこんな大金…凄すぎる…」
「何よジンコ。私達が無給ボランティアでもやってると思うの?
この報酬が有るから生活を維持出来る人や悪鬼も、悪鬼討伐を続けられるのよ。
正当に計算された報酬だから遠慮なく貰えば良いのよ。
どれどれ、幾ら位入って…ひっ!」
ジンコから封筒を受け取って中身を覗いた真鈴が目を丸くした。
その気持ちが俺には凄く判った。
俺は書類の金額を見て処理班の女性に尋ねた。
「あの、この金額間違い無いですか?」
「ええ、529万2600円に間違いありません。
それではあなた達を解放します。
お疲れさまでした。」
バスから出て行った女性の後ろ姿を見送りながら俺達はあっけにとられた。
「廃ボーリング場の時の何倍もよ…」
「奴らも結構な現金や装飾品をため込んでいたからな…」
「処理班の経費もあの時より大して掛からんだろうし…。」
「まぁ、沢山お金を頂くのは良い事だな…。」
「みんな、経費も掛かってるんだからね、ボルボとランドクルーザーの修理費用とか深海オートのレッカー代とかそう言うのを差し引かないと…。」
「俺の幸恵ちゃんもおしゃかになったしな…新しいのを手に入れないと…。」
「景行、幸恵ちゃんとは…誰だ?」
「あのショットガンだよ。
幸恵ちゃんと名前がついてるんだ。
可愛くて頼りになる存在だったのにな…。」
「…。」
「…。」
「…。」
なるほど、戦う悪鬼は武器に名前を付けるのが流行っているらしい。
その後、俺達は経費を抜いた金額を山分けしてホクホク顔でそれぞれの家に帰り、普段の生活に、すなわち日常生活を送りながら体を鍛え、はなちゃんに頼んで質の悪い悪鬼を探り出し、下調べをした後で討伐に向かう、と言う生活に戻った。
狩猟シーズンだった。
6月はあっと言う間に過ぎ、7月が駆け足で通り過ぎて行き、8月の終わり頃に死霊屋敷の補強要塞化工事が終わった。
死霊屋敷の工事が終わるまでに俺達は11回悪鬼の討伐を行い、俺は7月に、真鈴は8月の初めにはすでに10匹以上の悪鬼を単独で倒していた。
俺達人間メンバーは色々と手ほどきを受けて使う武器にバリエーションも増やし、俺達人間メンバーでフォーメーションを組んでそこそこ強敵の悪鬼の始末も出来るようになった。
その間、圭子さんの超遠距離精密射撃で命を助けられた事も有ったし、真鈴のボルボで悪鬼の追跡を振り切りながら追ってくる悪鬼を引き潰した事も有った。
ジンコも7月に初めて単独で悪鬼を倒し。それからスコアを順調に上げている。
加奈や四郎達も悪鬼との戦いを重ねて経験値を上げていた。
ワイバーンは確実にそして急速に強くなっていた。
勿論その間に俺達はかなり怪我をした。
人間メンバーの骨折や切り傷裂傷などなど、幸いに命に別条が有ったり深刻な後遺症が残ったりしばらく入院したりなどの重大事が起こらなくて良かったが体には傷跡が残った。
そして、俺の顔、左頬から顎にかけてかなりの傷が残った。
鋭い爪を持つ狼人タイプの悪鬼に奇襲を受けて出来た傷だ。
流石にこの時は人間の医者に掛かったが、俺は非常に運が良かったと四郎や明石が言っていた。
あと少しでも俺の反射神経が鈍ければ顎もろとも顔が無残に切り裂かれていっただろうと言われたのだ。
顎も根こそぎ取れて無くなっていたと言われた。
本当に運が良かった。
まだ完全に顔の傷は癒えていないが痛みはとっくに消え去った。
四郎の棺に入っていた傷薬が医者も驚くような速さで傷を癒した。
これを製薬会社とかに売れば大金持になれるかも知れない。
そして四郎達に男前になったとからかわれている。
もしかしてそうなのかも知れない。
工事が終わった死霊屋敷に俺と四郎、真鈴とはなちゃんの生活拠点を移すかどうか話題に上るようになった。
まぁ、ワイバーンは順調だと言って良いだろうな。
え?なに?気になる事が有るって?
それは…それはまさか俺の…俺の…回数か…
あのな…
残念でした~!
彼女出来たんだよな~!
ひゃひゃひゃひゃ!
もう誰も俺の事を2回と4分の1野郎なんて言わさねえぜ!
なんぴとたりとも言わさねえぜ!
もう俺は9回と4分の1野郎に昇格なんだぜ~!
うひゃひゃひゃひゃ!
え?相手は誰だって?
どうせ、どこかの風俗の女性だろうって?
ちっがうよ~!バ~カ~!
俺の相手聞きたいか?
俺の彼女は誰か聞きたいか?
…
…聞いても良いよ?
いや、聞いてよ?
聞けよ~!
お願い、聞いてください。
…
お願いします!
土下座?
しますします!
これで良いですか?
ありがとう!
ありがとう皆!
俺の回数を上げてくれてセックスの何たるかを教えてくれて人を愛する事を教えてくれたのは…
『みーちゃん』の…
バッカじゃねえの!
お前らバッカじゃねえの!
馬鹿だ馬鹿だお前ら!
『みーちゃん』のママじゃねえよ!
幾らなんでも年上すぎるだろうがよ!
ちょっと違う趣味の世界になるだろうがよ!
俺はまだ32歳だぞ!
ユキちゃんの方だよ!
ユキちゃんは顔に傷を受けた俺の事を心配してくれて、四郎はリリーとラブラブな事も知ったしね。
俺がある日、死ぬ気で告ったら頷いてくれたんだよ!
そこで何年振りかでキスをしたよ!
ああそうだよ!
ちゃんとキスしたのは10年以上前だよ!
最後にセックスした風俗の鯨おばちゃんからはやんわりキスを止められたよ!
俺の顔を鷲掴みにされてキスを断られたよ!
誰だ!「鯨女顔面鷲掴みキス拒否され野郎」なんて言った奴はぁ!
そして数日後に俺はユキちゃんを死霊屋敷に招待してメイクラブしたよ!
その前の晩に四郎から色々とレッスンを受けたよ!
女の子を気持ち良くするための色々な事をね!
ばか!俺はそう言う趣味はねえよ!
ただ経験豊富な男からテクニックを聞いただけだよ!
練習用のマネキンまで手に入れてな!
恥を忍んで実際に手取り足取りで教えてもらったよ!
ばかめ!舌はこう使うのだぁ!と四郎から指で掴んだ俺の舌を引っこ抜かれそうになったりしてな!とか、どうしてこんな簡単な体勢が取れないのだ!馬鹿め!とか両足と背骨をへし折られそうなほどひん曲げられたりしてな!
でも、悪鬼の凄いエッチテクニックの真似なんかできないし色々忘れたし何度かへまをしてユキちゃんから「あなた初めてなの?」とか言われてくすくす笑われたけど、なんとか想いを最後まで遂げたよ!
終った後でユキちゃんの態度は冷たくならなかったよ!
苦笑いを浮かべながら彩斗はこれからゆっくり上手になれば良いと思うわって俺を胸に抱いて朝まで一緒に寝たよ!
うぉおおおお!リア充万歳!
優しい女の子万歳!
ユキちゃん万歳!
と言う訳で俺達の生活拠点を死霊屋敷に移す事がユキちゃんとの遠距離?恋愛になるかも知れないと俺が悩んでいた時に、そして次なる質の悪い悪鬼の討伐の計画を『ひだまり』にメンバーが集まり相談していた時に岩井テレサの組織から連絡が入った。
それは、第1騎兵カスカベルが何者かの集団の襲撃を受けてその半数が死亡して壊滅状態になったと言う事だった。
罠に掛けられたらしい。
第6部 狩猟シーズン編 終了
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます